コロナ労災新通達(4/28)出たが、従来通達(新型インフル2009年5月)踏襲。一層の改善・周知を!
4月27日に全国安全センターが「新型コロナウイルス感染症と労働安全衛生および労災に関する緊急声明」を出した翌28日、厚生労働省は労働基準局保証課長通達基補発0428第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」を発出するとともに、その内容に沿って「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」も改定した。
まず第1に、「患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること」とされた。
これは私たちの要請(1)を受け入れる内容ではあるが、2009年5月の通達「新型インフルエンザに係る労災補償業務における留意点」と同じ取り扱いに戻っただけとも言える。
第2に、上記の医療従事者等以外の労働者について、「感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること」とされた。
これも、2009年5月の通達「新型インフルエンザに係る労災補償業務における留意点」とまったく同じ内容であるが、当時も今回も「明らかに認められる場合」の判断基準が示されていないのでわかりにくい。
Q&Aのほうに、「感染経路が判明し、感染が業務によるものである場合については、労災保険給付の対象となります」と書かれているのがこれにあたるのだろうと考えられる。
第3に、上記の医療従事者等以外の労働者であって「上記以外のもの」について、「調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること」とされ、次の2つの場合が示された。
① 複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
② 顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
これは、私たちの要請した(4)「『不特定多数や顧客応対業務など感染リスクのある職業群』について、積極的な反証のない限り、業務上疾病と認定すること」に対応するものとして、歓迎する。
Q&Aのほうで①について、「請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定」、「なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられ」としているが、請求抑制につながる予断を与えるので、この「なお書き」部分は削除を求める。労基署はまず請求を受け付け、「無駄に慎重な」調査をするべきではなく、幅広く認定していく姿勢で臨まなければならない。
Q&Aのほうで②について、「小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定」としているが、できるだけ幅広く認めるべきである。
加えて、「③公共交通機関を使って通勤していた場合」等を追加することができるし、すべきであると考える。
また、第2と第3の違いがわかりにくいことから、感染経路が判明している場合だけでなく、①②③等に該当する場合にも、「積極的な反証がない限り『内在するする危険が具体化』したものとして積極的に認定すること」と整理することも考えられる(私たちの要請事項の(5)の趣旨)。
さらに、テレワーク中の労働者についても業務上と認定される可能性があることも明示すべきである。
なお、以上は「国内の場合」であって、今回、「国外の場合」についても、2009年5月の通達「新型インフルエンザに係る労災補償業務における留意点」とまったく同じ内容になった。
最後に、「請求に対して支給・不支給の決定を行う際には、当分の間、事前に当課職業病認定対策室職業病認定業務第一係に協議すること」としているが、このことが迅速な認定を妨げることがあってはならない。
4月27日の全国安全センターの緊急要請事項のその他の内容も含めて、一層の対応の改善・周知を要望したい。
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古谷杉郎
全国労働安全衛生センター連絡会議 事務局長