感染の不安の中、懸命に/全労働労働組合機関紙2020/4/25より

厚生労働省の労働組合機関紙が2020年4月25日号一面でコロナ対応に忙殺される中、感染不安の中懸命に仕事をする労働者の声と職場の状況を伝えている。医療機関、公共部門、食料、輸送など生活に不可欠な労働の現場では多くの人ががんばっている。感染はもとより、過重労働、長時間労働を避けるための努力、工夫には、労働組合の一層の取り組みが欠かせない。
以下に「全労働」2020年4月25日号第1面の記事全文を紹介する。

新型コロナウイルス感染症への不安
命がけの職場から悲痛の声

全労働省労働組合『全労働』第2190号(2020.4.25)

多くの来所者が行き交う労働行政の窓口では、いつ自分が感染するか、また自分が感染源になって家族の健康を脅かさないかとの不安が広がっています。全労働はこの間、窓口に飛沫感染を防ぐための遮蔽措置を始めとする感染防止措置を講じるよう求め、厚労省は対応を進めています。一方、ハローワークや監督署の状況とそこで働く職員の思いを取材しました。的確なリスクアセスメントとともに、感染防止の徹底が急がれます。

ビニールカーテンの設置に随分安心

「新型コロナウイルス感染が心配で、毎日が命がけです」。安定所職員は、このように不安を口にします。
「感染が強く疑われ、保健所から自宅待機を求められているにもかかわらず、職業相談に来られた求職者がいました。私の家には病気の妻がいるので、感染していないか数日間不安でいっぱいでした」
繁忙期を迎えた安定所には、連日多くの求職者が来所しています。全労働はマスクや消毒液の確保など感染防止策を講じるよう省当局を追求し、窓口にビニールカーテンが設置できるようになりました。
「不安は残りますが、ビニールカーテンがあれば随分安心できます」
絶え間なく来所者対応をする総合受付に立つ非常勤職員は、胸をなでおろします。

事業主も不満を募らせる

雇用調整助成金の特例措置が講じられたことで、労働局や安定所には絶えず事業主が来所しています。首都圏の安定所では、この日も相談に訪れた事業主が順番を待っていました。
「電話してもつながらず、コロナが心配であるが、直接聞きに来るしかなかった」
来所した事業主は、相談体制が不十分であることに不満を口にします。
厚労省はコールセンターを180回線に増設しましたが、問い合わせに対応するには不十分です。また、厚労省が示しているQ&Aでは不明なことも多く、相談を受ける職員は回答に苦慮しています。
「疑義を本省にあげていますが、数日経っても回答が返ってこず、苦情の原因になっています。本省も大変な状況と聞いていますが、早く回答を示してほしいです」
日中は問い合わせ対応に追われ、審査業務をすることができません。緊急増員やシステムの増設など、一日も早い体制確保が求められます。

「コロナは怖いけど、職員に感謝」

雇用保険部門も繁忙期を迎えています。ある安定所の適用部門は、電子申請や郵送を勧奨しているため、来所者が減っています。しかし、郵送と電子申請では不備がある申請書も多いため、事務処理が進みません。その間にも申請書が次々と郵送されてくるため、1週間前に到着した書類に着手できていない状況です。さらに、電子申請の未処理件数は過去最高に達しています。
給付部門も繁忙を極めています。
「電話が鳴りやまず、来所を求めないことで後方処理の事務も増え、一方で受給資格決定の手続きに絶え間なく来所されます。追加給付ですか?、休日も出勤しないと事務処理が進まない現状なのに、追加給付の問い合わせが上乗せされたらとても対応できません」。雇用保険係長は、悲痛な声で訴えます。
「とにかく人を増やしてほしい」(前述の係長)
こうした状況の中、多くの受給者が待合フロアで窓口に呼ばれる順番を待っていました。その中の一人が次のように語ってくれました。
「コロナが恐いけど、生活があるので安定所に来ないといけない。こんな状況で頑張っていただいている職員の人たちに感謝しています」

監督署の特別組合員もコロナの不安を抱えて

監督署に勤める非常勤職員のAさんはこう語る。
押し寄せる相談者から罹患するのも時間の問題かと…。
高血圧でリスクが高いので、家族からは辞めろと言われている。ニュースを見ていると、出勤することを考えて胃が痛い。対面で近距離で最低30分くらい話をしなくてはならないのは怖い。厚労省は、人と近距離で話すのがとてもリスクが高いと分かっているはず。市の融資の相談窓口には、ビニールパーテーションがあるのに…。
署にはマスクもないので、私物のマスクを相談者に提供する。ダメと言われでも命が大事なので付けてもらう。
罹患者の公表によって子供がいじめの対象になるのではと不安。高齢の親の介護をしているが、感染リスクのため帰省もできない。

全労働省労働組合『全労働』第2190号(2020.4.25)