「母親(看護師)の勤務環境のせいで胎児に先天性疾病」は産業災害/ 大法院判決 2020年4月30日
妊娠した女性が、労働環境などによって先天的な疾病を持った子供を産んだ場合、業務上災害と見ることができるという大法院(日本での最高裁判所)の判決が出た。大法院は29日、看護師Aさんたち4人が勤労福祉公団に提起した『療養給付申請返戻処分取消し』訴訟の上告審で、原告敗訴とした原審を破棄して、事件をソウル高裁に差し戻した。
Aさんたち4人は済州道立の済州医療院に看護師として2002~2003年に入社後、2009年に妊娠して2010年に子供を出産したが、子供4人すべてが先天性心臓疾患を持っていた。済州医療院の看護師で2009年妊娠したのは15人で、この内6人が健康な子供を産み、残りの5人は流産した。
Aさんたちは妊娠初期に有害要素に暴露して胎児の心臓形成に障害が発生したとし、先天性心臓疾患児の出産が業務上災害に該当すると主張して、勤労福祉公団に療養給付を申請した。公団は「業務上災害とは、本人の負傷・疾病・障害・死亡などを意味する」として不承認とした。これにAさんたち4人は2014年2月に行政訴訟を提起した。
一審は看護師の業務による胎児の健康損傷を業務上災害と認定した。裁判所は「出産によって母体と胎児の人格が分離するという事情だけで、それ以前までは業務上災害だったものが、分離した後は業務上災害ではないものに変貌するとは見られない」とした。
しかし二審は「各出産児の先天性疾病は出産児の疾病に過ぎず、勤労者の原告本人の疾病ではない」として、一審の判断を逆転した。出産児と別途の人格体であるAさんなど原告には給付の受給権がないとも判断した。
しかし大法院は違う判断をした。裁判所は「産業災害補償保険法の解釈上、妊娠した女性勤労者に、その業務に起因して発生した『胎児の健康損傷』は、女性勤労者の労働能力に与える影響の程度と関係なく、勤労者の『業務上災害』に含まれると見るのが妥当だ」とした。
また、産業災害保険法の解釈上、母体と胎児は『本性上単一体』として扱うとした。裁判所は「出産によって母体と単一体であった胎児が分離したとしても、既に成立した療養給与の収拾関係が消滅するものではない」と判断した。
裁判所は「憲法第32条第4項の『女性労働の特別な保護』、憲法第36条第2項の『母性保護』の趣旨などを総合すれば、女性勤労者と胎児は妊娠と出産の過程で発生しうる業務上の有害要素から十分な保護を受けなければならない」と、判決の根拠を明らかにした。
大法院は「胎児の健康損傷または出産児の先天性疾患が、勤労者の業務上災害に含まれるかどうかに関する最初の判例」と、その判決の意義を明らかにした。
この日、民主社会のための弁護士会・労働委員会・女性人権委員会(以下、民弁)は論評で、「4人の看護師は平均300~500錠の薬品を粉砕する業務の過程で薬品を吸入したと推定される」とし、「この薬品はアメリカFDA妊婦投与安定性等級X等級(妊婦に投与禁止)が17種、D等級(胎児に対する危険性が増加するという証拠がある)が37種で、妊婦が服用した時には先天性心臓奇形の危険が増加するものだった」と説明した。
また「その他にも、汚物処理作業、床ずれ患者のドレッシングと消毒、ボックス運び、立ってする仕事、うずくまってする作業、不規則な業務が確認された」とし、「経営上の理由で常に看護師が不足しており、看護師1人当り40人余りの患者を担当しなければならなかった」とも話した。
民弁(民主社会のための弁護士会)は「大法院判決を歓迎し、更に国会と行政府が関連の法令を今回の判決の趣旨に符合するように、早く改正・適用しなければならない」と要求した。
https://www.vop.co.kr/A00001485257.html
2020年4月30日 民衆の声 キム・ミンジュ記者