3年前のクレーン惨事の教訓を忘れたサムソン重工業 、また下請け労働者が死亡 2020年9月1日/韓国の労災・安全衛生

サムソン重工業のホームページに掲示された塗装工程(ペインティング作業)紹介のイメージ。サムソン重工業の巨済造船所では27日、タンカーのタンクの塗装作業をしていた下請け労働者が爆発と推定される事故で命を失った。また他の1人は全身の52%に、2度の火傷をした。/サムソン重工業ホームページより

先月27日、サムソン重工業・巨済造船所のタンカー建造現場で爆発と推定される事故が起き、下請け業者の職員が死亡した。労組は6人の命を奪った2017年のクレーン惨事当時に指摘した問題が、全く解決されていないために起きた事故だと見ている。

金属労組の巨済統営古城下請け支会は「サムソン重工業の5万トン級のタンカーの浄水タンクで、爆発と推定される事故が発生し、1時間捜索した後、タンク内部の密閉空間でペインティング作業をしていた労働者が死体で発見された」と、31日に明らかにした。タンクの外部でペインティング作業をしていた労働者は、身体に火が点いたまま辛うじて事故現場から脱出して、病院に移送された。

サムソン重工業巨済造船所のタンカーで、爆発と推定される事故が起きた直後、全身に火傷を負った下請け労働者が応急室に移送される様子/金属労組巨済統営古城下請け支会提供

労働部統営支庁労災予防課の関係者は「労働者1人は死亡し、1人は全身の52%に、2度の火傷をして治療中」とし、「火災の原因が爆発であったかどうかは、鑑識結果が出なければ確実には判らない」と説明した。この日、国立科学捜査研究院と統営海洋警察署、労働部統営支庁は事故現場に鑑識を行った。

死亡事故の根本原因について労組は、爆発・火災事故が起り得る環境が全く改善されなかったせいだと見ている。「2017年のクレーン惨事当時、労働部の特別監督結果報告書で指摘された問題点に対する後続措置が、キチンとなされていなかった」ということだ。

労組が言う『クレーン惨事』は、2017年5月1日にサムソン重工業巨済造船所で、巨人クレーンとタワークレーンが衝突し、下請け労働者6人が亡くなり、25人が大怪我をした事件をいう。メーデーのこの日、造船所に出勤した労働者の大部分は下請け労働者だった。

2017年5月1日、巨済市のサムソン重工業内の船舶建造場で、タワークレーンと巨人クレーンが衝突し、折れた残骸物が地面に落ちている。この事故で下請け労働者6人が亡くなり、25人が重軽傷を負った。/慶南消防署提供

当時、労働部はサムソン重工業巨済造船所に対する特別監督を行い、866件の産業安全保健法違反事項を摘発したが、この中には爆発事故に関する内容が含まれていた。『密閉区域での爆発の危険のない換気ファン・照明灯・電気設備設置』『密閉区域の有機溶剤除去、引火性蒸気の排出換気設置』『密閉区域作業の開始の前・中に、酸素濃度を測定』『密閉空間と外部の見張り役との間に常時連絡設備を設置し緊急状況に対応』『密閉空間への関係者以外の立入禁止』などだ。労組は「当時、労働部は既に爆発事故の危険要素を把握して改善を要求していた。それでも爆発事故が発生したということは、特別監督に対する後続措置が行われていないことを傍証する」と主張した。

25日午前、光化門の世越号広場で行われた2018最悪の殺人企業選定式で、韓国労総などの参加者が殺人企業名簿を発表した後、犠牲者のために献花している。当時『最悪の殺人企業』にはタワークレーン事故で下請け労働者6人が亡くなったサムソン重工業が選ばれた。/イ・サンフン選任記者

労組はまた、サムソン重工業は他の造船会社と違う、危険性の高い塗料を使わせたと主張する。労組は「大宇造船は(今回の事故が起きた洗浄タンク関連の作業現場に)爆発・窒息の危険が少ない無溶剤の塗料を使ったが、サムソン重工業は有機溶剤の塗料を使った」とし、「有機溶剤の塗料は付着力を強める。すなわち労働者の安全より品質が優先とするサムソン重工業では、いつ爆発事故が起きてもおかしくない構造」と明らかにした。

また、死亡事故直後に『作業中止』がされた領域も問題だ。労組は密閉空間作業の全体あるいは密閉空間でのペインティング作業全体を中止するべきだとするが、労働部は事故が起きた作業場のスプレー作業に対してにだけ、中止命令を出した。現行の産業安全保健法は『事故が発生した作業と同じ作業』に限って、中止命令が出せるとしている。労組は「労働部が同じ作業の意味を縮小解釈し、塗装作業中でも、スプレー作業に対してのみ中止命令を出した」と主張した。

労組は「当初、文在寅大統領は重大災害の発生時には、全作業場の作業を中断し、原因糾明、再発防止策を用意すると約束した。」「ところが、2018年に産業安全保健法を改悪して、『事故発生作業と同じ作業』にだけ、作業中止がされるように縮小し、今では、同一作業の意味まで縮小して解釈するような結果に繋がっている」と話した。

2020年9月1日 京鄕新聞 ソン・ユンギョン記者

http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=202009011623001&code=940702