石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について/2005年7月27日基労補発第0727001号(「石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について」の一部改正について/2005年9月28日基労補発第0928001号による改正済)

平成17年7月27日
基労補発第0727001号

都道府県労働局労働基準部長 殿

厚生労働省労働基準局
労災補償部補償課長

石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について(2005.07.27)

石綿による疾病の業務上外に係る調査については、昭和53年10月27日付け事務連絡第41号別紙「石綿による疾病の業務起因性判断のための調査実施要領」(以下「実施要領」という。)によることとされているところであるが、今般、特に石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等を図るため、下記により、石綿ばく露作業従事歴の事実認定の迅速化、請求書の受付に係る事務処理の明確化を図ることとしたので、的確な対応に遺憾なきを期されたい。

1 転々労働者等に係る石綿ばく露作業従事歴の事実認定の方法について

(1) 趣旨

石綿による疾病については潜伏期間が特に長いといったような特徴があり、そのため労災保険の請求時においては既に事業場が廃止されている等の事情から、石綿ばく露の事実については同僚労働者等に確認する等の方法で認定する事例も少なからず見られるところである。

しかしながら、中には同僚労働者等も既に死亡している等、このような方法のみでは事実認定が極めて困難な事例もあり、また、調査に多大な時間を要している実態もあることから、石綿ばく露歴の事実認定が極めて困難な場合における特例的な事実認定(以下「転々労働者等の事実認定」という。)の方法を示すこととしたものである。

したがって、被災者が石綿ばく露作業に従事した事業場を特定するよう努めるとともに、特定できた場合には当該事業場に係る調査を行うべきことは当然であり、また、事業場が廃止されている場合等であっても、原則として事業主・同僚労働者等から当該労働者の石綿ばく露状況の確認に努めた上で、それが不明な場合に限って、転々労働者等の事実認定を行うものとすること。

なお、転々労働者等の事実認定は、認定基準に定める各要件を緩和する趣旨ではないこと。

(2) 転々労働者等の事実認定の対象

転々労働者等の事実認定は、原則として次のア又はイの事案であって、事業主・同僚労働者等から当該労働者の石綿ばく露状況の確認が困難なものについて行うこと。

ア 被災者が石綿ばく露作業に係る事業場を転々としている場合
イ 退職後相当期間経過している事案であって、被災者の所属していた事業場が廃止された場合

(3) 転々労働者等の事実認定の具体的方法

ア 石綿ばく露作業に係る調査と事実認定

(ア) 請求人の以下の①から⑦までのいずれかの作業に従事していたとする主張及びそれを裏付ける資料に基づき、以下の①から⑦までのいずれかの作業に被災者が特定期間従事していたと判断できる場合には、石綿ばく露のおそれがないことが明白な場合を除き、被災者が石綿ばく露作業に当該期間従事していたと事実認定して差し支えないこと。

したがって、請求人から可能な限り作業の内容を聞き取り、石綿ばく露のおそれのないことが明白ではないことを確認しておくこと。

① 耐火建築物に係る鉄骨への吹きつけ作業
② 断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業
③ スレート板等難燃性の建築材料の加工作業
④ 建築物の解体作業
⑤ 鉄骨製の船舶又は車両の補修又は解体作業
⑥ タルク、バーミキュライト及び繊維状ブルサイト等の取扱いの作業
⑦ ①から⑥の作業が行われている場所における作業

(イ) この場合の裏付けは、石綿ばく露作業を含む事業を行う事業主に使用されている期間が認められ、かつ、その期間と事業内容が請求人の主張する内容との間に整合性が客観的に認められることを要するものであること。

(ウ) このようにして事実認定した当該期間が認定基準に示す石綿ばく露作業に係る期間に比して同様又は長期にわたっている場合には、その石綿ばく露作業従事期間に係る認定要件を満たすものとして取り扱われるものであること。

(エ) なお、上記の①から⑦までの作業は、認定基準で示した作業のうち、戦後から最近に至るまでの間、スレート板や断熱材等に石綿が含まれていた実態を踏まえて、石綿ばく露の蓋然性の高い作業を示したものであること。

イ 請求人の主張を裏付ける資料

請求人の主張の裏付けの資料としては、例えば、厚生年金保険等の被保険者記録照会回答票(以下「回答票」という。別添1参照)を活用することが考えられるが、回答票は請求人からの書面(別添2「同意書」)による同意を得た上で労働基準監督署長が社会保険業務センターに依頼して入手すること(書式は別添3参照)。また、死亡している者に係る回答票については、遺族(補償)給付等に係る請求人からの別添4の書式による依頼書を提出させ、死亡している者と請求人との身分関係を証明することができる書類(労災保険給付請求書に添付されていた戸籍謄本、抄本等)の写しとともに依頼すること。(書式は別添5参照)。

なお、回答票が入手できない場合や回答票の内容では裏付けの資料とならない場合には、可能な限りこれに代わるべき資料を収集すること。

ウ 石綿による健康障害に関する調査票への記載

上記イにより確認できた場合には、実施要領の「1.事業概要中の石綿製品の名称、石綿の取扱い量」、「2.石綿取扱い作業及び作業環境測定」、「3.請求に係る労働者の職歴等のうち、過去の事業場名」及び「5.同種労働者の健康状況」については、その名称等を「不明」と記載すれば足りるものである。

2 労災保険給付請求書の受付等について

(1) 趣旨

石綿による疾病の労災保険給付を行う場合には、最終石綿ばく露事業場に係る労災保険関係により行うこととしているところであるが、石綿取扱い作業等に従事した時点から請求までの期間が長期にわたること等から、最終石綿ばく露事業場が判然としない事例も多く、そのために請求書の受付の段階から事務処理の混乱をきたすことがある。

このため、石綿による疾病に係る請求書の受付等について特例の処理を示すこととしたものである。

(2) 請求書の提出を受けた監督署における事務処理

石綿による疾病に係る請求書については、その提出を受けた監督署が所轄監督署であるか否かを問うことなく、一旦、当該監督署が受付を行うこととする。

その上で、当該請求書の提出を受けた監督署が所轄監督署を特定するための調査を行い、他の監督署が所轄監督署であることが明らかになった場合は請求書を当該他の監督署に回送し、当該請求人には所轄監督署に回送した旨連絡すること。

(別添1~5)