職業がんをなくそう通信 4/福井集会アンケートから・結節性多発性動脈炎と化学物質・FRP職場組合結成など

2017年11月20日
職業がんをなくす患者と家族の会https://ocupcanc.grupo.jp/

第6回職業がんをなくそう集会 in 東京のお知らせ

東京集会の場所と日程が以下のように決まりました。
 場所:港区立勤労福祉会館
 日時:2018年 2月 18日(日)10 時~16時
記念講演の講師、職場報告などは現在調整をしているところですが、今回も専門家による記念講演で基本的な学習をし、その後職場の実態報告や活動報告などで日本における化学物質取り扱いの状況をさらけ出し、予防活動へ繋げる取り組みをしていきたいと考えています。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

【第5回福井集会の参加者アンケートより抜粋】

記念講演 「産業化学物質と発がん性分類」/
山野優子教授(昭和大学医学部公衆衛生学)

  • どのようにして発がん性分類が行われるのか、その難しさがよくわかりました。大変な作業だと思いました。現実の後追いにならざるを得ないとしても地道で必要なお仕事と存じました。現場の必死な質問も出て本当の実態を明らかにするために労働者と研究者が協力してこそ学術的にも意味があると実感しました。質疑のやり取りはとてもエキサイティングでした。
  • 発がん分類表は証拠の確からしさで分類されていることがよくわかりました。グループ 1 ~ 2B までは取り扱いに当たっては差をつけるべきではないと感じました。
  • 研究者や規制に関わる委員等へ「実態」を正確に届ける必要性を強く感じました。勿論労働者の教育、意識向上が不可欠でそれが進めば企業の「ゴマカシ」を防ぐことができると思いました。
  • 産衛学会も大変努力していることが分かりました。一方で大量の化学物質に対応が追い付かないことも分かりました。全ての化学物質は毒だという認識を経営トップから作業者一人ひとりまで共通化しばく露を防ぐ取り組みを先んじてやらなければならないと思いました。
  • 産衛学会の実情やIARCとの関係など初めて知ることが多く勉強になりました。わかりやすい話し方でした。またお聞きしたいです。

基調報告 1「三星化学でなぜ膀胱がんが多発したのか」/化学一般関西地本三星化学工業支部書記長 田中康博氏

  • 経営トップの視野の狭さ、人権感覚の欠如には本当に憤りをおぼえます。また当然の対策を「経営を圧迫」するからと軽視してしまう労働者にも切ないものがあります。そんな中で闘い続け、じりじりと改善を続け諦めなかった組合員の志に改めて感動しました。どうして頑張れたのでしょうか?また安全対策が取られなかった頃、家族の方にも発症はなかったのでしょうか?
  • あらためて三星化学の実態がはっきりしました。今後も更に発症する可能性が大きいと思います。私もライフワークとして支援活動をしていきたいと思います。
  • 会社は全く反省していない。きちんと反省させ責任を認めさせないといけない。労組の努力で現場はかなり改善が進み作業員の意識も変わりつつあるので今後に期待しています。

基調報告 2 職業がんと闘うOT の会 事務局より報告

  • OT 製造のリアルな状況、無造作に作業を続けることの危険性がよくわかりました。また知らないままに労働者を放置することの罪深さをつくづくと知りました。
  • オルトトルイジンを扱う工場が他にもある以上膀胱がんは発症するだろうし、この取り組みの広がりが他に扱う人の絆になればいいと思います。
  • 三星化学支部の取り組みがいろんな支部へ波及している。自分の支部でも考えるべきだと思った。
  • 「なくす会」の活動が今まで見えていませんでした。広がりが見れて良かったです。
  • 労組のカラーでこうも取り組みが違うのかと参考になりました。

全体集会

  • 各参加者の話が聞けて良かったです。今後も職場の実態を報告してもらいたいと思います。
  • 貴重なお話が聞け、福井まで来た甲斐がありました。
  • がんになる恐れのある職場で安全衛生面もしっかりしていないのに働かないといけないなんて・・。すぐにでも改善して安全な環境で働けるようになって欲しい。
  • 作業者の教育と認識も重要だと多くの方が同じように思われたことが確認できました。

結節性多発性動脈炎患者と化学物質の関係は

三重県で長時間労働で賃金が安くかつ職場環境が酷く複数の労働者が体調を崩しているとの相談を受け労働組合を結成して職場環境の改善に努めてきた事業場で昨年40 代の労働者が亡くなりました。職場の労働者は「あの方は一番作業歴も長くばく露も多い」「あれだけ酷い環境で働いていたのだから業務との関係がないとは思えない」「彼が体調を崩し亡くなったのは労災だと思う」などと口々にしたことを受け、ご遺族とアポを取り労災申請の準備を進めています。

この間、ご遺族と共に大学病院と市民病院へと足を運びカルテ開示請求を行い、専門家への相談に入りました。市民病院での聞き取りでは亡くなったあとの剖検で「結節性多発動脈炎」という診断名であること、直接の死因が小腸内の出血であることなどを初めて教えていただきました。当該労働者が働いていた職場環境と取り扱っていた化学物質をお伝えしたところ、大学病院では丁寧にお話ができましたが、市民病院では「職業との関連報告
はありません」とばかりを繰り返し私たちが持参した資料にも目を通そうとしませんでした。健康で入社し酷い労働環境で働いた労働者が体調を崩し40代で亡くなったのですから職場との関連はまず最初に疑って欲しいと訴えました。

当該労働者は、サンドブラストに用いる砂じん、ブチルセルソルブ、ジクロロメタン、1-ブロモプロパン、MEK、IPA、硫酸、苛性ソーダ、フッ素系顔料など様々な化学物資にばく露し体調を崩して入退院を繰り返すようになり、自宅療養中に倒れ救急搬送されるも急死されました。

砂じん、粉じん、有機溶剤、顔料などへの複合ばく露により体調を悪化させたのは彼だけではなく、職場の労働者の複数の方に発生しています。
この事案については「職業がん」とは違いますが、不適切な労働衛生管理から生じた疾病・職業病ではないかという視点から支援をしていきたいと考えています。

労働相談における化学物質ばく露と環境問題

大阪市のFRP製品を製造する工場で働く労働者から労働組合を作りたいと相談があり、化学一般でその準備を進め11月27日に結成大会を終え、翌日会社に結成通知と団体交渉の申し入れを行いました。

賃金が安く社長のサジ加減で一方的に切り下げられたり、残業しても賃金明細が示されず、有給も認めないなと違法状態が続いています。職場環境も酷く、ガラス繊維やプラスチックのコーティング等の作業時にガス・ベーパーの拡散があり切断時の粉じんもばく露が相当あるとのことです。また、ガラス繊維を含んだ粉じんを回収処理を行わないまま河川側に排出するなど近隣環境への悪影響も懸念されています。

結成に当たっての準備として、化学物質の適切な取り扱いに関しても学習を進めてきました。現状のような職場環境で長く働けば必ず職業病を患うことになることを学び、労安法・環境関連法などを知り活用することで環境改善に繋げる活動についても学習してきました。
今後、労使交渉や安全衛生委員会の活用などを通じて職場環境改善に尽力して欲しいところです。

「なくそう労災職業病」 交流会に参加してきます

10月15日に実施した福井集会において関西労働者安全センター酒井氏より「なくそう労災職業病」交流会への参加の訴えがされました。映画「もうひとつの約束」の主人公ファン・サンギさんとイ・ジョンラン労務士を招き関西で交流会が開催されます。
◆12月1日(金)18時30分~ エルおおさか南館5Fホール
◆12月2日(日)14時~ 神戸市勤労会館308

「もうひとつの約束」 とは?

サムスン電子の半導体工場でその製造過程で有機溶剤のばく露があり、複数の労働者が急性骨髄性白血病やリンパ腫などを発症しました。会社は有害情報を労働者に知らせず被害が拡大し被害者5人が2007年労災申請を行い様々な困難を乗り越えて2014年労災認定が確定します。白血病を患い亡くなったファン・ユミさんの父ファン・サンギさんの裁判闘争に基づき制作されたのがこの映画「もうひとつの約束」です。2014年11月に大阪と東京で上映され大きな反響を呼びましたが、現在関西の労働組合を中心に神奈川・名古屋・京都・大分などでもDVDによる上映会が広がっています。

国際連帯をめざすパノリム

パノリムは労働災害の真相究明と補償を勝ち取ることを第一の目標に掲げ、労働組合を認めないサムスンで労働三権・健康権などの「労働基本権」を勝ち取り、新自由主義の問題を暴露し、アジアと電子産業労働者の国際連帯を築き上げるという崇高な目標を掲げて闘っています。
(「なくそう労災職業病」交流会チラシより)