職業がんをなくそう通信 5/なくそう労災職業病交流会・海外出張中に特定芳香族アミンばく露と膀胱がんなど

2017年12月21日
職業がんをなくす患者と家族の会https://ocupcanc.grupo.jp/

第6回職業がんをなくそう集会 in 東京のお知らせ

東京集会の場所は、港区勤労福祉会館の予約が取れなかったので渋谷区に変更になりました。

 第6回職業がんをなくそう集会 in 東京
 場所:渋谷区立勤労福祉会館 2階 第1 洋室
 日時:2018年 2月 18日(日)10 時~16時

記念講演の講師は前回福井集会で大変好評だった昭和大学山野優子教授にお願いすることとなりました。東京集会は参加者がガラッと変わりますので、前回同様発がん性分類について講演していただきます。また、2018 年 1 月 15・16 日は各団体に回らせていた
だき、現場からの報告のお願いと集会参加の要請をする予定です。よろしくお願いいたします。

「なくそう労災職業病」 交流会に参加してきました

12 月 1 日「なくそう労災職業病」交流会 in 大阪(18 時 30 分よりエルおおかさ南ホール)に参加しました。

集会が始まるとサムスン本社前の籠城テントが映し出され、化学物質による労災で愛娘を失ったファン・サンギさん、支援をされている社会保険労務士のイ・ジョンランさんが登場し、これまでの闘争を語られました。

ファンさん:「もうひとつの約束」が映画化され、大変うれしかった。サムスンはウソをついている。たくさんの人に見て欲しい。映画の影響でサムスンは謝罪をした。日本の方々にも見て貰えた。工場前で一人デモをしていてバスで囲まれ重役が通過する間目に留まらないように警備員に何重にも囲まれ足を蹴られたこともある。サムスンは筆頭財閥で就職できれば羨望の的であるが実際には労働組合も許さず監視、拉致、監禁もする。

2014 年 映画を見る人が予約で満席になりネットで拡散していった。それを機にサムスンの態度が変わった。一方で圧力がかかったのであろうか上映がキャンセルされたり人が見ない時間に上映するようになった。映画ではひとり頑張ったように撮られているが真実を暴くために闘った人はたくさんいる。娘が白血病を患い化学物質が原因ではないかと思い工場で訴えたら「有害な化学物質は扱ってない、放射性物質も扱っていない」と言われた。ウソを言われて凄く悔しかったが必ず証明してやると誓った。

娘が亡くなってから他の部署からも発病していることを知った。こんなひどい目にあったのは娘だけじゃないんだと確信して頑張って来れた。娘が病気になってから運動を始め新聞記者に記事を書いて欲しいと頼み新聞を配ったがサムスンが人目につかないように持って行ってしまった。記者がイさんを紹介してくれた。私を支援してくれる人が現れた時は本当に嬉しかった。

イさん:お父さんは通常愉快な方ですが、初めてお会いした時は娘さんのことを休みなく話し続けられました。女性二人が白血病で亡くなりサムスンは 500 万ウォン(50 万円)で片づけようとしたのを知り怒りがこみ上げました。

映画後の経過:2011 年に労災認定されたが 3 人は不支給でその後 3 年法廷闘争を経て労災認定の判決に繋がる。現在 94 人が労災申請し24人が認定されている(うち 20 名がサムスン)。労災認定された後もサムスンは形だけの謝罪をするばかりで姿勢は変わらず「認定された24 人は個人の疾病だ」と言っている。2014 年サムスンが交渉拒否しパノリムとの和解が進まなかったため調停委員会が設置されたがサムスンはこれも拒否し自分で補償委員会なるものを設置した。パノリムはテント籠城を開始し今に至っている(籠城 790 日)。


⇒関西労働者安全センター機関誌「関西労災職業病」に11月30日からの交流が紹介されています。
韓国半導体工場の職業病問題、 解決にはほど遠い/ 遺族と活動家が来日、支援の輪を広げよう 「関西労災職業病」2017年11・12月号

2016 年制作の映画「ゴム靴の花」を会場で鑑賞。
サムスンは解決すると言いながら対話の姿勢を見せていない。その後 76 足のゴム靴に花を植えて籠城テントを飾っている。通行人が「この花は何ですか?」販売しているのかと値段を尋ねる人もいるがサムスンや半導体業界で働いて死亡されパノリムに申告された方の数が 76名なのでそれを表現していますと話すと皆びっくりされる。

現在籠城テントには学生が支援に来てくれたり市民がリレートークなどをしてくれる。ヨーロッパでは学生の時に会社側労働者側になって交渉を学び、社会に出た時人権を尊重するようになるが、韓国・日本では労働者や労働組合は悪者扱いされている。市民との共同体の闘いが力を発揮する。

会場発言では一緒に参加した石橋さん(石橋事件原告)が、夫が大阪の化学会社で働き職業性膀胱がんになりその後口腔がんを患い亡くなったこと、同じ職場の労働者に膀胱がんだけではなく様々ながんが発生していたこと、口腔がんの労災認定で行政訴訟をするも敗訴したことなどを訴えました。

私からは三星化学工業で多発した職業性膀胱がんについての概要を報告しました。
化学物質に対する杜撰な衛生管理のまま生産を続ける会社と毒性を知らされないままばく露を受け、かけがえのない命や健康を奪われてしまう労働者という構図は、アスベスト被害、胆管がん、膀胱がんをはじめとする職業病に共通して流れています。共同の輪を広げ拡散していくことがいかに重要であるかを再認識した交流会でした。今回胆管がん患者との交流もできて生のお話を色々と聞けたことも大変貴重な経験になりました。

パノリムとは?

半 導 体 労 働 者 の 健 康 と 人 権 を 守 る 会。 連 帯(Solidarity)、被害者支援 (Help)、実践 (Action)、研究 (Research)、広報 (Propaganda) を通じて、アジアと
電子産業労働者の国際連帯を築き上げるという崇高な 目標を掲げて闘っています。

石橋事件とは?

1965 年染顔料製造会社に入社し芳香族アミン他様々な化学物質のばく露を受けた石橋良信氏が 89 年膀胱がんを発症し労災認定された ( 同年と 92 年に再発 )。更に2001 年口腔がんを発症し職場の労働者に様々な臓器がんが見られたことを理由に口腔がんの労災申請をするも 06 年不支給決定がされた(良信氏は 03 年死去)。

これを不服として遺志を継ぎ奥さんが原告となり行政訴訟を継続。16 年最高裁が上告不受理し敗訴が確定した。報告集「ガリンコⅡ」に詳細が残されている

海外出張中に特定芳香族アミンばく露と膀胱がん

海外出張中に染色した布の検査業務を行い、帰国後に膀胱がんを発症し労災申請していた方に労災の不支給決定がおりたことを本通信No.2(2017 年9 月1 日) でお伝えしました。今月は情報開示請求により入手できた調査結果復命書についての検討をしました。

生地の臭覚確認検査業務についてイラストを添えて作業の様子がわかる詳細な資料を提出していますが、請求人の申し立て事項に書かれておらずその点不備があります。また、当時の業務について会社の主張①出張頻度は年 2,3 回程度②作業については見学、通訳程度で 30 分程度といずれも会社の憶測の証言のみをそのまま採用しており、現場の実態とはかけ離れています。

化学物質の取り扱いについても直接請求人が取り扱うことはなかったとしていますが、臭覚確認検査において染料で湿った生地を取り扱い、指先や鼻先が黒く染まっていたことを全く考察していません。この臭覚確認検査についてさえ当時製品に残る臭気クレームがありその対策として実施していた確認検査であることも無視して会社は「(そのような検査は)指示していない」と主張しています。

海外出張中の作業について、会社が都合の悪いデータを示さないのであれば、被災者はどうやって物証を揃えることができるでしょう。増して発がんの場合は発症までに時間の経過があり事実関係の証拠は圧倒的に会社側に属しています。毒性を知らされずに作業を命じられ、本人が病気になったら会社は知らんふり。またもこの構図が出てきます。

「真面目に働いてがんになる。こんなことが許されていいのか」
三星化学工業労組の田中康博氏の言葉

皆さま、今年もお世話になりました。

化学物質をめぐっての様々な問題が行き来しています。今月は韓国の職業病遺族の方、国内職業がん患者の方々とお会いして、職業がんをなくす取り組みを益々強めなければならないと痛感しました。またそのための具体的な手法もパノリムが提唱していることと共通していることに興味と確信を持ちました。来年も頑張りますので、皆さまのご支援よろしくお願いいたします。
では、良いお年を。(昌)