左眼カッター刃突き刺し事故で退院強要、これも「労災隠し」:休業4日以上を回避しようと/東京

Kさん(男性・30代)は、防水工として東京都内の某公共施設の新築工事現場で働いていた。元請は大手ゼネコンのW社。下請けはT社だった。彼は、その下のP店の親方に雇われていた。

目地シールの作業中、液を吹き付けるガンのプラスチックノズルの先端をカッターで切断しようとしたとき、カッターの刃が折れて左眼に突き刺さってしまった。
大学病院で2回入院し、手術を受けた。治療費は、元請の労災保険を使った。
入院して3日目に見舞いに来たT社の監督から、「明日、退院してほしい」と言われた。失明するかどうかの瀬戸際だったため、冗談じゃない、と断った。

退院後は、T社から毎月20万円程度のお金が銀行口座に振り込まれるようになった。明細表には被災現場と支払代金が記載されていた。身に覚えのない特別加入労災の保険料と作業着代が差し引かれている。仕事ができる状態ではないのに、T社の請負職人として、被災現場で仕事を続けていることになっていた。

T社の監督が、「明日、退院してくれ」とむちゃなことを言ったわけは、事故を休業災害(4日以上)にしたくなかったからではないか(4日以上か未満かで、監督署に届け出る労働者死傷病報告の様式や提出期限が異なる)。会社の都合しか考えない対応に不信感が募った。
主治医からは、左眼の視力は元に戻らないと言われている。後遺障害が残ったときの補償問題を考えると不安になり、東京労働安全衛生センターに相談に来た。

あらためて休業補償給付の請求手続をとるため、Kさんは、W社とT社と交渉することにした。
労災保険を使っても休業災害(4日以上)としないことは、虚偽報告である。これも、「労災隠し」のひとつのパターンだろう。

東京労働安全衛生センター

安全センター情報2001年10月号