害虫駆除作業で有機リン剤中毒 東京:対策も特殊健診もなし
Fさん(27歳)は、2002年6月から害虫駆除の会社(職員数6名)に勤務し、現場作業員としてビルのオフィス、病院、学校などでゴキブリやシロアリなどの害虫駆除作業を行ってきた。
様々な殺虫剤を噴霧して作業するのが、昨年4月、有機リン剤であるフエニトロチオン(注:商品名スミチオンとして知られる)を含有する「ネオミサイル」という殺虫剤を動力噴霧器で噴霧して側溝やトイレを殺虫消毒した後しばらくして、頭痛、めまい、上肢のしびれ感(ビリビリする)、吐き気などの症状が出現した。防毒マスクを使用せず、かなりの量を吸入したようだ。
近所の医院を受診したが、殺虫剤との因果関係をはっきりさせてもらえず、北里大学などに電話で相談していたが、たまたま東京労働安全衛生センターのホームページを見て相談に来られた。すぐ亀戸ひまわり診療所を受診し、診察と検査の結果、有機リン剤中毒と診断され、労災申請をした。
有機リン剤中毒は、これまでは農村の農薬による中毒が多く、中には服薬自殺というケースもある。Fさんが使っていたフェニトロチオンの中毒症状は、副交感神経興奮症状として食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発汗などの症状、中枢神経症状として倦怠感、不安感、頭痛、めまいなど。重症になると、けいれん、錯乱、呼吸困難などの症状も出てくる。
Fさんは幸い軽症ですんだので、症状は出たものの、血液検査などには大きな異常は出ず、1か月くらいの通院で症状はほぼ軽快した。
Fさんの場合は急性の中毒だったが、長年にわたって曝露して慢性中毒になる場合もある。当然有機リン剤を取り扱う業務は、行政指導で特殊健康診断が義務づけられているが、この会社では行われていなかった。社長は、主治医に電話をしてきて、「中毒になるはずがない」などと言っていた。同業種で被災者が潜在していることも十分考えられる。
問合せは、東京労働安全衛生センターまで
安全センター情報2004年5月号