鉄道車両工場の石綿被害訴訟●日立笠戸事件、岐阜地裁で和解成立/山口

日立製作所笠戸工場(現笠戸事業所)で鉄道車両の製造作業に従事し、鉄道車両に使用されていたアスベストに曝露したことにより悪性胸膜中皮腫に羅患して亡くなった元従業員男性(享年75歳)の遺族が岐阜地方裁判所に提訴した損害賠償請求訴訟において、2025年11月26目、被告の日立製作所との間で和解が成立した。
亡くなった男性は、1961年3月から1979年8月までの約18年5か月間、笠戸工揚で欽道車両の艤装(配管の取付け)作業に従事した。笠戸工場で製造されていた旧国鉄車両や海外向け鉄道車両の構体の内側には、アスベストが吹き付けられていた。
男性は、車両内部での艤装作業の際に吹き付けアスベストから発生したアスベスト粉じんに曝露し、また、配管部品の製作時に使用した石綿布等のアスベスト製品から発生したアスベスト粉じんに曝露した。
男性は、2016年4月に悪性胸膜中皮腫の確定診断を受け、同年8月に業務上疾病として労災認定された。懸命の闘病を続けたが、2017年12月27日に亡くなられた。男性は、生前、アスベストユニオンに加入し、会社と団体交渉を行ったものの解決しなかった。男性の死後、2019年10月9日に、遺族が岐阜地裁に、損害賠償請求訴訟を提訴した。本訴訟は、アスベスト訴訟関西弁護団の依田浩、金奉植、渋谷有司弁護士らが担当した。
訴訟において被告の日立製作所は、男性のアスベスト曝露を否定する主張を展開した。また、原告が被告に開示を求めた、アスベストが使用されていた可能性のある鉄道車両の図面を適宜に提出することも行わなかった。
原告弁護団は、笠戸工場で男性と一緒に働いていた元従業員から聞き取りを行ったり、送付嘱託、調査嘱託に加えて文書提出命令の申し立てを行うことで、笠戸工場で働き、中皮腫や肺がん等に羅患し労災認定を受けた従業員33名に関する下松労働基準監督署の調査資料を入手し分析して工場内における労働者のアスベスト曝露状況を明らかにする粘り強い立証活動を進めた。
和解成立後、遺族(被災者長男)が、報道機関向けに以下のコメントを発表した。
「本日、生前の父がどうしても笠戸工場でのアスベスト曝露を認めてほしいと訴え続けていたことについて、このようなかたちで結果を出していただきました。長い時間がかかってしまいましたが、ようやく決着がつき墓前に報告することができます。ご協力いただいた皆様には心から感謝いたします。大変ありがとうございました。父が他界して、もうすぐ8年になります。
もし父が中皮腫に罹らなければきっといまでも元気でいてくれているのではないかと思うと、悲しみは8年前と変わらず私たち家族を苦しめ続けています。父は、多くの方が発症していることを知り、いつ自分が発症するかと恐れる日々、発症してからの苦痛の日々でした。父が肉体的にも精神的にも追い詰められていったことを忘れることはできません。
当時、父と一緒に働いていた皆様は、いまお元気であっても、いつ中皮腫を発症してもおかしくないと言えます。会社には、退職後の方を含め、可能性があるすべての方に注意喚起を行っていただくとともに、専門病院における健康診断の実施により早期発見を促していただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。」
あわせて、弁護団は、以下のコメントを発表した。
「関係団体のご支援、元同僚の方々のご協力等のおかげで、鉄道車両製造工場におけるアスベスト曝露の事案につき、本日和解に至りました。和解内容を公表することはできませんが、本件訴訟については一応の解決をみました。
日立製作所笠戸工場では、アスベスト健康被害により多数の労災認定者がおり、毎年新たな労災認定が続いています。今後も過去のアスベスト曝露による新たな被災者が発生することが予想されます。
被告企業においては、被災者救済の観点からの積極的な対応が望まれます。」
厚生労働省が2024年12月11日に発表した令和5年度石綿ばく露作業による労災認定等事業揚の公表によると、日立製作所笠戸工場(笠戸事業所)におけるアスベスト健康被害による労災認定は40件だった(中皮腫30件、肺がん9件、石綿肺1件)。
文・問合せ:(一社)名古屋労災職業病センター

安全センター情報2026年4月号