高年齢者の上肢障害が業務外●審査請求も棄却/東京

Yさん(当時78歳)は、1964年から都内のガス管の敷設工事会社で、道路の掘削、ガス管の敷設、配管作業に従事した。1972年から(株)Mに雇用され、ガス管の敷設、配管作業を続け、2023年3月に退職した。
工事現場ではビーガン(エンジン式コンクリートブレーカー)を使って路上を掘削したり、ランマを使って舗装する作業、20~30kgの鉄管やコンクリートガラや残土を入れた砂袋や砕石を持ち運ぶ作業をした。また、手ハンマーを使ってガス管のジョイントをつなぐ作業なども行った。いずれも、両手指、両手首に振動や負荷のかかる作業だった。
Yさんは65歳で定年退職になったが、M社での年金加入期間が短く、老齢年金の受給額も少なかったため、引き続き同社で働いていた。
70台半ばになると右手指に痛みが出てきて、仕事がつらくなってきた。それまでにも右手指、右手首に痛みを感じることはあったが、仕事に差し支えるようなことはなかった。
2021年3月、地元の整形外科クリニックを受診したところ「右拇指CM関節症、STT関節症」と診断され、通院するようになった。2023年11月には、主治医の勧めで総合病院に転医し、手術を受けた。仕事も続けることができなくなり、同年3月に退職した。77歳だった。
Yさんは、長年、振動工具や重量物を運搬する業務に従事し、右手指を酷使しため、発症したとして、2024年1月、新宿労働基準監督署に労災請求を行った。同労基署は同年8月、Yさんの労災を業務外と決定。昨年7月、審査請求も棄却された。
原処分庁の判断も審査官の決定も、Yさんが従事した業務が「上肢の反復動作の多い作業」及び「上肢等の特定に部位に負担のかかる状態で行う作業」と認めながら、65歳で定年退職して以降、上肢障害を発症するまでに従事した業務には、配管や土工のような作業はなかったとして、業務起因牲を答定したのである。認定基準の「上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したもの」及び「発症前に過重な業務に就労したこと」を満たさないとの判断だった。
たしかに定年後の業務では、工事現場のガードマンや運転、濃度管理などの仕事に固され、道路の掘削やツルハシ、ハンマーを持つ作業は少なくなったが、まったくなかったわけではない。くわえて、手術した医師は、Yさんの右拇指CM関節症は長年の仕事で右手指を酷使したことが原因と述べている。
Yさんのように高年齢者が長年厳しい労働に従事して手指、腕、腰、下肢等を痛めても、「加齢」「素因」のせいにされ、業務との関連がなかなか認められない。高年齢者の労働災害が増加し対応する必要があれば、高年齢者の特性を考慮した労災認定にも取り組むべきではないだろうか。

文・問合せ:NPO法人東京労働安全衛生センター

安全センター情報2026年4月号