新型コロナ感染症羅患後症状●労基署が自庁取消で労災認定、調査不足を謝罪/東京

都内にあるイベント会場の管理業務に従事していたAさんは、2024年2月、新型コロナに感染・発症した。発熱などの症状が治まった後も、咳・たん、息切れ、倦怠感、頭痛、味覚障害、背中や足の疼痛など重い症状が続き、主治医から新型コロナの罹患後症状との診断を受け、労災申請を行った。
Aさんの業務は、大型のイベント会場の管理運営。多い時には1日に1000人もの来場者があり、その誘導や問い合わせ対応などにあたっていた。また、業者との設営作業の事前打ち合わせ・当日立ち会い・催事開催中の会場点検などの業務もあった。
新型コロナ発症直前の1週間も、大型の催事が3日間入っており、彼女は、それらの催事の担当者として、設営業者や来場者の対応を行い、少なくとも「1日あたり60~100人」の問い合わせ対応等に従事した。
Aさんは、不特定多数の顧客の対応にあたる感染リスクの高い業務に従事しており、新型コロナの労災認定基準に当てはまる業務内容だった。しかし、労働基準監督署は、事業主からの不正確な報告書を根拠に、Aさんへの聞き取り調査をしないまま、Aさんが顧客対応した人数を「1日あたり6~10人」と10分の1に減らす事実認定をした。そして、「発症前7日間に、同僚に感染者がいない」という別の理由で不支給決定にしてしまった。非常に不可解な不支給決定だった。
昨年6月にAさんから相談を受け、当センターが審査請求の代理人となり、まず審査官に対して労基署への質問を提出した。具体的には、Aさんの業務実態を労基署がどう調査・検討したのかを詳しく質問する内容だった。
その質問を受けた労基署は、「再検討した結果、Aさんは不特定多数の顧客の対応にあたる感染リスクの高い業務を担当しており、労災認定基準に該当する」として、審査請求の途中で不支給決定を自ら取り消し、昨年10月に労災として認定した。
審査請求の途中で労基署が自庁取り消しをするのはかなりめずらしいことである。その後、労基署の副署長が、「担当者の調査不足があった。お詫びいたします」と、Aさんに直接謝罪した。このケースでは、Aさんへの聞き取りがないまま、新型コロナの労災調査のルール(実務要領)にも反するかたちで、不支給決定が出されていた。労基署の調査実務の基本が崩れてきているという強い懸念を持つ。
新型コロナについては、国が「第5類感染症」に扱いを変えて以降、軽く考える傾向が広がっている。しかし、いまも多くの感染・発症者が出ており、重い羅患後症状に苦しむ人も少なくない。新型コロナの問題は決して終わっていない。Aさんも罹患後症状での療養・休業が続いている。
今後も支援を続けていきたい。

文・問合せ:東京労働安全衛生センター

安全センター情報2026年4月号