建設業における有機溶剤中毒予防のためのガイドライン/必ずMSDSで危険有害性を確認
労働省は、1997年3月25日付けで.「建設業における有機溶剤中毒予防のためのガイドライン」(基発第197号)を策定した。有機溶剤中毒の発生件数は、近年減少傾向になく、業種別にみると、建設業が、例年全業種の半数近くを占めている。ガイドラインでは、建設業における有機溶剤または有機溶剤含有物(以下「有機溶剤等」という)を用いる作業の特徴として.以下の点をあげている。
- 作業の内容としては、壁面等の塗装、防水加工およびつや出しが多い。
- 作業の場所としては、急激な有機溶剤の気中濃度の上昇が起こりやすい地下室、浴室等通気が不十分な場所であることが多い。
- 作業に要する時間が短時間であったり、日々作業を行う場所が変わることが多い。
- 設備の密閉化あるいは局所排気装置の設置が行われていない場合が多い。
ガイドラインでは、有機溶剤中毒予防規則(有機則)が適用される有機溶剤等あるいは有機溶剤業務だけでなく、化学物質等安全データシート(MSDS)等により、有機溶剤中毒を起こすおそれがあると判断される場合には、対象とすることとしている。
建設業に多くみられるものとしては、トルエン、キシレン等を含有する塗料等があげられる。
有機溶剤等を含有する塗料等から水性の塗料等に代替することも勧めているが、水性の塗料等であっても、MSDS等により含まれる化学物質の危険有害性について把握し、判断することが必要であるとしている。
ガイドラインの骨子は、
- 労働衛生管理体制
- 作業管理
- 使用する有機溶剤等の危険有害性の周知徹底
- 呼吸用保護具の使用
- 作業環境管理
- 警報装置の使用
- 健康管理
- 労働衛生教育
の8項目である。
「労働衛生管理体制」では、まず、「有機溶剤作業主任者」(対象にならない場合でも、有機溶剤作業主任者技能講習修了者から「準ずる者」)を選任し、作業日時・内容・場所、労働者数、使用する有機溶剤等、換気方法・換気設備、保護具、警報装置、保管・廃棄処理の方法等を盛り込んだ「作業手順書」を作成することとしている。併せて、元方事業者は、関係請負人(塗装業者等)に作業手順書を提出させ、作業場所を巡視して.確認・指導を行うこととしている。
「作業管理」については、「作業開始前」、「作業中」、「作業終了後」に分けて、留意事項を示している。また、「呼吸用保護具の使用」についても、「作業前」と「作業中」に分けて、酸素濃度や防じんマスクの必要性の有無の確認、吸収缶への使用時間の記入などを求めている。
「使用する有機溶剤等の危険有害性の周知徹底」では、使用する有機溶剤等にMSDSが付されていない場合には、提供する事業者にこれを求めること、危険有害性や事故発生時の措置を定め、労働者に周知徹底するとともに、必要な情報を作業中に見やすい場所に掲示することを求めている。とくに、地下室、浴室等の狭あいな場所で作業を行う場合には、作業中継続的に有機溶剤の気中濃度を測定・監視を行うとともに、一定の濃度に達した場合に警報を発する装置の適切な設置および使用、労働者の退避と作業再開にあたっての留意事項などを指示している。
安全センター情報1997年6月号