まだまだの有機溶剤対策:定時制高校生などからの相談/東京

有機溶剤をめぐっては、小・零細の職場では、まだまだ環境管理が行われていない。労働者は換気装置のないところでマスクも使わず有機溶剤を扱っている。そんな職場から相談が寄せられている。

●金属加工の脱脂作業で体調こわす

東京都足立区のある職場では、自動旋盤した機械部品の脱脂作業にトリクレンを使用している。さすがに手袋は使っているようだが、排気設備がなく、もやが立ちこめるような状態の時もあるという。
環境測定も特殊健康診断も行われていない。
相談者は、貧血、倦怠感があり、医者にいったら夜勤を止められた。
職場の仲間たちと職場改善を進めたいが職人気質でむずかしい,ということである。とりあえず有機溶剤の健診を自分だけでも受けてみるとの話になった。

●定時制高校生徒の有機溶剤中毒

ひさびさに南葛高校定時制の生徒から相談があった。
15歳の高校生で、今年の5月から葛飾区にある印刷会社で働いている。各種シール(シルクスクリーン)のオフセット印刷で、多量の有機溶剤を使用する。7月頃から作業中に気持ちが悪くなって、吐き気がする、食欲不振、目が痛い、指先が震える、めまいなどの症状が出てきて、担任の先生に相談し、亀戸ひまわり診療所を受診した。
尿、血液検査で肝機能などは正常であったが、自覚症状から有機溶剤中毒が疑われた。作業状況を聞くと、インキにシクロヘキサノンという有機溶剤が含まれており、また、インキのついた印刷機を石油等の溶剤で洗浄するとのこと。職場に入ると、臭いが強烈、マスクもしていない状況である。
診断書を持って社長に相談したところ、「うちはシンナーの対策はやっている。君の体が合わないなら辞めてくれ」と言われ、担任の先生にも相談しいろいろ考えたあげく、退職する予定とのことである。労働組合はもちろんなく、取り組みが困難である。

東京東部労災職業病センター

安全センター情報1996年1月号