石綿確定診断等事業について-改正基補発0314第1号(基補発0327第2号令和2年3月27日)【石綿確定診断等事業関係通達】
基補発0327第2号
令和2年3月27日
改正基補発0314第1号
令和7年3月14日
都道府県労働局労働基準部長殿
厚生労働省労働基準局補償課長
石綿確定診断等事業について
標記事業の実施については、平成24年5月22日付け基労補発0522第1号「石綿確定診断等事業について」(以下「24年内かん」という。)により指示してきたところであるが、標記事業は、令和2年4月1日から独立行政法人労働者健康安全機構(以下「機構」という。)において実施することになったこと等に伴い、標記事業について下記のとおり所要の改正をしたので、その的確な運用に遺漏なきを期されたい。
本内かんの施行に伴い、24年内かんは廃止する。
記
目次
1 石綿確定診断等事業の目的
中皮腫等の石綿関連疾患に係る労災認定においては、各種の検査結果に基づく石綿関連疾患であることの確定診断や、胸膜プラークの有無、石綿小体の本数等の医学的な所見が不可欠である。そこで、これらの診断等を的確に実施し、迅速・適正な労災認定を図るため、高度な専門知識と豊富な経験を有する複数の専門家による石綿関連疾患の確定診断等を実施する(以下「石綿確定診断等事業」という。)ものである。
2 石綿確定診断等事業での実施事項
機構は、複数の医学専門家で構成される「石綿確定診断委員会」(以下「委員会」という。)を設置し、労働基準監督署長(以下「署長」という。)からの依頼等に基づき、委員会で以下の事項を実施する。ただし、下記(3)の石綿繊維の計測については、署長からの依頼のみならず、委員会が、石綿小体の計測の結果から必要であると判断した場合にも実施することができる。
(1) 石綿関連疾患についての確定診断
(2) 石綿関連疾患の認定に必要な医学的所見の有無の確認等
(3) 石綿小体及び石綿繊維の計測
3 石綿確定診断等の依頼対象
署長は、次に該当する場合は必ず、機構に対し確定診断等の依頼を行うこと。
(1) 確定診断等
ア 肺がん
(ア) 主治医等による「原発性」であるとする診断に関し、労災医員等による意見書(以下「医員意見書」という。)において疑義が示されたもの。
(イ) 主治医等による「第1型以上の石綿肺」又は「胸膜プラーク」の所見ありとする診断に関し、医員意見書において疑義が示されたもの。
(ウ) 主治医等による「胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められ、かつ、胸部CT画像により当該陰影が胸膜プラークとして確認されるもの」に該当するとする診断に関し、医員意見書において疑義が示されたもの。
(エ) 主治医等による「胸部CT画像で胸膜プラークを認め、左右いずれか一側の胸部CT画像上、胸膜プラークが最も広範囲に描出されたスライスで、その広がりが胸壁内側の1/4以上のもの」に該当するとする診断に関し、医員意見書において疑義が示されたもの。
イ 中皮腫
(ア) 主治医等による「中皮腫」であるとする診断に関し、医員意見書において疑義が示されたもの。
(イ) 主治医等による「第1型以上の石綿肺」の所見ありとする診断に関し、医員意見書において疑義が示されたもの。
(ウ) 主治医等において「胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜以外の部位の中皮腫」であると診断されたもの。
ウ 良性石綿胸水
主治医等において「良性石綿胸水」であると診断されたもの。
エ びまん性胸膜肥厚
(ア) 主治医等による「びまん性胸膜肥厚」であるとする診断に関し、医員意見書において疑義が示されたもの。
(イ) 主治医等による肥厚の広がりについての診断に関し、医員意見書において疑義が示されたもの。
(ウ) 主治医等による呼吸機能障害の程度についての診断に関し、医員意見書において疑義が示されたもの。
(2) 石綿小体の計測
肺がんの事案であって、第1型以上の石綿肺及び胸膜プラークのいずれの所見も認められず、かつ、石綿小体の計測が行われていないもの(肺組織が採取されているものに限る。)。
(3) 石綿繊維の計測
肺がんの事案であって、石綿小体の計測を行った結果、石綿小体数が乾燥肺重量1g当たり5,000本未満又は気管支肺胞洗浄液1ml中5本未満であるもの(平成24年9月20日付け基労補発0920第1号「石綿による疾病の業務上外の認定のための調査実施要領について」別添中の2(3)ア(エ)又は同日付基労補発0920第2号「石綿による業務上外の認定のための調査実施要領(特別遺族給付金関係)について」別添中の2(3)ア(オ)に基づき、本省に照会がなされたものに限る。)。
(4) その他
上記(1)及び(2)のほか、石綿による疾病の認定に関する医学的な事項について、迅速・適正な事務処理の観点から、本事業に依頼することが適当と判断するもの。
なお、この場合は事前に当課職業病認定対策室に依頼の可否を協議し、厚生労働省労働基準局補償課職業病認定対策室に協議済みであることを明確にした上で依頼すること。
4 石綿確定診断等の依頼に当たっての留意事項
(1) 石綿確定診断等の依頼は、別途指示する方法により行うこと。
なお、石綿確定診断等事業に係る意見書料等については、支払いを要しないこと
(2) 石綿確定診断等を依頼する際には依頼事項に関わらず、療養の経過がわかるもの、被災労働者が死亡している場合は死亡診断書等を添付すること。また、依頼事項ごとの添付を要する医学的資料等は次のとおりである。
なお、以下に示す医学的資料が入手できない場合には、入手できない資料の名称及びその理由を依頼書に記載した上で、依頼すること。
ア 肺がん
(ア) 上記3の(1)のアの(ア)に係るもの
① 主治医等が原発性であるとした意見書及び労災医員等の意見書
② 原発性の診断に係る画像(胸部エックス線、胸部CT等)及び画像診断報告書
③ 血液検査結果(腫瘍マーカーを含む)
④ 病理組織学的診断報告書(解剖報告書含む)
⑤ 病理組織診断、細胞診断、病理解剖時等に使用した標本(スライド標本及びパラフィンブロック)
(イ) 上記3の(1)のアの(イ)に係るもの
① 主治医等が「第1型以上の石綿肺」又は「胸膜プラーク」の所見ありとした意見書及び労災医員等の意見書
② 臨床経過の分かる画像(胸部エックス線、胸部CT等)及び画像診断報告書のすべて
また、胸腔鏡検査、手術、剖検等で胸膜プラークの所見が得られている場合は、当該検査時等における記録及び胸膜プラーク所見を示す画像(写真・動画等)
(ウ) 上記3の(1)のアの(ウ)及び(エ)に係るもの
① 主治医等が胸膜プラークの所見ありとした意見書及び労災医員等の意見書
② 主治医の判断の根拠となったものを含め、臨床経過の分かる画像(胸部エックス線、胸部CT等)及び画像診断報告書のすべて
また、胸腔鏡検査、手術、剖検等で胸膜プラークの所見が得られている場合は、当該検査時等における記録及び胸膜プラーク所見を示す画像(写真・動画等)
イ 中皮腫
(ア) 上記3の(1)のイの(ア)に係るもの(病理組織診断が行われている場合)
① 主治医等が中皮腫であるとした意見書及び労災医員等の意見書
② 中皮腫の診断に係る画像(胸部エックス線、CT等)及び画像診断報告書
③ 他疾患との鑑別根拠に係る医証のほか、病理組織学的診断報告書(解剖報告書含む)
④ スライド標本(上記③の報告書に記載のあるもの(免疫染色、未染色含む))
⑤ パラフィンブロック(上記④のスライド標本を作製したパラフィンブロック)
なお、確定診断委員会において提出されたスライド標本を鏡検した結果、確定診断ができない場合、委員会が免疫染色を追加で行うことがあるため、パラフィンブロックを免疫染色又はFISH法に使用する可能性があることについて事前に医療機関の了承を得た上でパラフィンブロックを提出すること。
⑥ 臨床経過に係る資料
(イ) 上記3の(1)のイの(ア)に係るもの(病理組織診断が行われておらず、細胞診断が行われている場合)
① 主治医等が中皮腫であるとした意見書及び労災医員等の意見書
② 中皮腫の診断に係る画像(胸部エックス線、CT等)及び画像診断報告書
③ 他疾患との鑑別根拠に係る医証のほか、細胞診断報告書
④ スライド標本(上記③の報告書に記載のあるもの(免疫染色、未染色含む))
⑤ セルブロックのスライド標本(免疫染色を含む)
⑥ 臨床経過に係る資料
(ウ) 上記3の(1)のイの(ア)に係るもの(病理組織診断及び細胞診断が行われていない場合)
① 主治医等が中皮腫であるとした意見書及び労災医員等の意見書
② 主治医等が中皮腫と診断した根拠となる医学的資料(胸部エックス線写真、CT画像、画像診断報告書、体腔液(胸水、腹水)細胞診、臨床検査結果(腫瘍マーカーを含む)等)
③ 臨床経過に係る資料
(エ) 上記3の(1)のイの(イ)に係るもの
① 主治医等が「第1型以上の石綿肺」の所見ありとした意見書及び労災医員等の意見書
② 臨床経過の分かる画像(胸部エックス線、CT等)及び画像診断報告書のすべて
(オ) 上記3の(1)のイの(ウ)に係るもの
① 主治医等が中皮腫であるとした意見書及び労災医員等の意見書
② 臨床経過の分かる画像(胸部エックス線、CT等)及び画像診断報告書のすべて
③ 胸水細胞診等の体腔液細胞診検査記録
④ 臨床検査結果(胸水等(CEA、CYFRA、ADA、ヒアルロン酸値等)、末梢血白血球数及び血小板数、血清CRP値等)
⑤ 臨床所見、臨床経過に係る資料
⑥ 他疾患との鑑別根拠に係る医証のほか、病理組織学的診断報告書(解剖報告書含む)
⑦ スライド標本(上記⑥の報告書に記載のあるもの(免疫染色、未染色含む))
⑧ パラフィンブロック(上記⑦のスライド標本を作製したパラフィンブロック)
なお、確定診断委員会において提出されたスライド標本を鏡検した結果、確定診断ができない場合、委員会が免疫染色を追加で行うことがあるため、パラフィンブロックを免疫染色又はFISH法に使用する可能性があることについて事前に医療機関の了承を得た上でパラフィンブロックを提出すること。
ウ 良性石綿胸水
① 主治医等が良性石綿胸水であるとした意見書
② 胸部エックス線写真(正面から撮影したものを必ず含めること。)、胸部CT画像及び画像診断報告書のすべて
③ 胸水の検査結果のすべて(性状、浸出液か漏出液かの鑑別のための検査を含む生化学的検査、細胞診を含む細胞学的検査、細菌学的検査(一般細菌検査、抗酸菌検査)、CEA、CYFRA、ADA、ヒアルロン酸値、胸水RF等)
④ 血液検査結果(T-protein(血清)、Albu-min(血清)、LDH(血清)、血清RF等)
⑤ 胸水貯留をきたす他の疾患の有無を示す医証(既往歴・現病歴、リウマチ因子等の検査結果等)
⑥ 胸腔鏡検査結果(医療機関で実施している場合)
エ びまん性胸膜肥厚
(ア) 上記3の(1)のエの(ア)に係るもの
① 主治医等がびまん性胸膜肥厚であるとした意見書及び労災医員等の意見書
② 臨床経過の分かる画像(胸部エックス線、胸部CT等)及び画像診断報告書のすべて
③ 臨床検査結果
④ 臨床所見及び臨床経過に係る資料
⑤ 他疾患との鑑別根拠等の医証
(イ) 上記3の(1)のエの(イ)に係るもの
臨床経過の分かる画像(胸部エックス線、胸部CT等)及び画像診断報告書のすべて
(ウ) 上記3の(1)のエの(ウ)に係るもの
呼吸機能検査結果(スパイロメトリー検査、フロー・ボリューム曲線検査、動脈血ガス測定検査等(チャート図の付いているもの))
オ 石綿小体の計測
① 医療機関から取り寄せた肺組織(ホルマリン固定組織又はパラフィン包埋組織)
なお、腫瘍部から採取された肺組織、肺実質組織ではない検体(胸膜、リンパ節等)、湿肺重量0.5g未満の非腫瘍部肺組織、気管支鏡検査や胸腔鏡下生検にて採取された微量の検体、未染の薄切標本やHE染色標本(スライド)、塗抹標本(細胞診)は、石綿小体計測が不可能であるため、これらの検体しか存在していない場合は、計測を依頼しないこと。
② 気管支肺胞洗浄液(最低10ml以上)(医療機関で実施している場合)
③ 有意に多い石綿小体を検出した肺組織切片標本(HE染色標本等)(医療機関で実施している場合)
カ 石綿繊維の計測
上記オの石綿小体の計測に用いた検体(溶液を含む)
(3) 提出した医学的資料のみでは判断できない場合には、機構から関係資料の追加提出の依頼がなされる場合があるので、適切に対応すること。
5 石綿確定診断等の結果
委員会における石綿確定診断等の検討結果については、「別紙1 石綿確定診断委員会意見書の送付について」により書留郵便にて機構から当該依頼した署長あて送付されること。
また、署から機構あてに送付した医学的資料についても書留郵便にて返却されること。
6 石綿確定診断等事業における機密保持
石綿確定診断等事業の実施に当たっては、機構において機密保持が担保されていること。
別紙1
○○年○○月○○日
○○労働基準監督署長 殿
独立行政法人労働者健康安全機構 理事長
石綿確定診断委員会意見書の送付について
標記について、○○年○○月○○日付けで貴職から依頼がなされた被災労働者○○ ○○に係る確定診断等について、別添のとおり意見書を送付いたします。
[※旧別紙1「石綿確定診断等依頼書」は削除されて後出の令和7年3月14日付け補償課職業病認定対策室長事務連絡「石綿確定診断等事業における石綿確定診断等の依頼に係る具体的方法等について」の別紙1「石綿確定診断等の依頼について」となり、旧別紙2が上記別紙1とされた。]
※下線部が、令和7年3月14日付け基補発0314第1号による改正部分である。
本通達全文PDF
安全センター情報2026年1・2月号

