患者と家族の会24番目の支部~中皮腫治療に当たる現地医師ら講演●沖縄
2025年1月25日に、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会24番目の支部となる「沖縄支部」が発足しました。当日は支部結成を記念して「沖縄支部結成記念セミナー 中皮腫・肺がんアスベスト疾患セミナー in 沖縄」を開催しました。会場には沖縄病院の大湾勤子院長もご参加くださり、激励をいただきました。神奈川支部から参加の神奈川支部世話人の前田里佳さんが司会を勤めてくださいました。
セミナーでは、沖縄県内で中皮腫の治療にあたっておられる代表的な病院である沖縄病院と琉球大学病院の先生方に講演いただきました。
沖縄病院呼吸器腫療科医長の久田友哉医師から「悪性胸膜中皮腫の沖縄県の現状と薬物治療 沖縄病院での治療を中心に」、沖縄病院外科・呼吸器外科手術部長/臨床研究部長の河崎英範医師から「中皮腫の外科的治療」、琉球大学病院第一内科講師の古堅誠医師が「肺がん治療の進展からみるこれからの中皮腫治療」についてご講演いただきました。
講演後は、東海支部の会員で腹膜中皮腫患者の平田勝久さんの進行のもと、上記の先生に加えて、沖縄支部の鹿川真弓さんと北関東支部の高久弥生さんも加わり、会場からも質疑を受けるかたちで座談会を開催しました。
沖縄県は全国的には患者数は決して多くありません。中皮腫患者の中には飛行機を利用して本州までセカンドオピニオンや治療に行かれる方もいます。しかし、長期にわたる薬物療法については沖縄県内でされる方がほとんどです。薬物療法にも副作用は必ず生じてきますので、その予防や対処に関して経験が豊富な先生方の存在は心強いものがあります。
座談会の中でも話題になったのですが、現在中皮腫患者を含むがん患者は一定の条件のもとで「がん遺伝子パネル検査」を受けることができます。中皮腫患者の中にもごく稀に、この検査によって治療薬の候補が浮かび上がることがあります(ただし、治療は「治験」や「患者申出療養」となるためにハードルがあがる)。遺伝子パネル検査はどこの病院でもできるというわけではありません。がんゲノム医療を受けられる施設は、厚生労働省によって指定されています。がんゲノム医療を牽引し臨床試験や治験を担う
「がんゲノム医療中核拠点病院」、がんゲノム医療中核拠点病院と連携し治療にあたる「がんゲノム医療連携病院」、中核拠点病院と連携病践の間に位置づけられ単独で治療方針の決定ができる「がんゲノム医療拠点病院」があります。
沖縄県には琉球大学病院と中部病院の2施設しかなく、それぞれ現時点では「がんゲノム医療連携病院」なので検査手続きを中核拠点病院である九州大学病院と連携しなくてはなりません。琉球大学病院でもこのような現場の改善に向けて取り組みをされているとのことですが、今後の大きな改善を期待すると同時に私たちが協力できることがあれば連携して取り組みを進めたいと考えています。
振り返ると、沖縄支部結成ができたことは2人の中皮腫患者さんの存在を抜きに語ることはできません。一人は腹膜中皮腫患者で2018年に他界された栗田英司さん。もう一人は胸膜中皮腫患者で2024年に他界された右田孝雄さんです。同年、栗田さんがブログを通じて知り合った鹿川さんとお会いする予定を立てていたのですが、栗田さんの逝去に伴い、実現しませんでした。その後、右田さんと私で鹿川さんとお会いさせていただきご縁をいただくことができました。その後も、右田さんがブログなどを通じて沖縄県内の患者さんやご家族との縁をもらい、2023年に右田さんと何人かの沖縄県内の患者さんやご家族同士が出会うことになりました。
昨年7月に沖縄県内で中皮腫啓発月間の取り組みのひとつとして沖縄セミナーを開催した際、上記のような経過の中でつながられた患者さんやご家族を含む、セミナーに参加された方々ともご縁をいただきました。沖縄県内の皆さんのつながりが一定程度できていたために支部を結成していただき、さらに、県内の患者さんやご家族の力になっていただきたいと考えました。そして、1月25日に支部を結成し、記念セミナーも開催する運びとなりました。
私の勝手な感覚で言えば、今回のセミナーでも沖縄病院と琉球大学病院の先生方にご協力いただいたことにも象徴されますが、沖縄県内は医療関係者の協力もあり、患者さんや患者団体に多くの医療機関がとても親身に接してくれます。なかなか言葉で表現しにくいのですが、様々な活動を一丸となって取り組んでいる印象があります。患者さんの数は決して多くはありませんが、風土?として横の連携をしっかり持ってくださっている点は、地元の患者さんやご家族にとっては大きな強みでもあります。
沖縄支部の発展を見守りつつ、今後も本部としてできる最大限の応援をしていきたいと思います。(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 事務局長 澤田慎一郎)
安全センター情報2025年5月号