労働安全衛生・労働施策総合推進法等改正へ~労働政策審議会建議と改正法案要綱

2025年1・2月号33~42頁の記事の続報である。

目次

労働基準法研究会報告書

労働基準法研究会は、前号で報告した第16回研究会で終了して、2025年1月8日に報告書が公表された。前号で紹介した部分については変更はない。今後の予定は示されていない。

労働施策総合推進法等改正案要綱

労働政策審議会の雇用環境・均等分科会は、前号で報告した2024年12月26日の第79回分科会で「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について(報告)」をまとめ、同日、労働政策審議会は「今女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について(建議)」として厚生労働大臣に建議した(このことが公表されたのは2025年1月24日)。
前号で紹介した報告案からの変更はない。
建議を踏まえて厚生労働省は1月24日に労働政策審議会に対して、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱」について諮問し、同日行われた雇用環境・均等分科会においては妥当と認められた。

労働安全衛生法令改正案要綱

労働政策審議会の安全衛生分科会は、前号で報告した2024年11月22日の第171回以降、2025年1月17日の第173回分科会で「今後の労働安全衛生対策について(報告)」をまとめ、同日、労働政策審議会は「今後の労働安全衛生対策について(建議)」として厚生労働大臣に建議した。

前号で紹介した報告案からの変更点は、以下のとおりである。

  • このような事業者の措置義務のうち、危険個所等への立入禁止等の措置について、個人事業者等に、事業者が講じる措置に応じて必要な事項を遵守することを罰則付きで義務付ける。(前号34頁左欄「個人事業者等自身による措置」の2項目前段に下線部を追加)
  • また、当該事業者の措置義務のうち、請負人に対する必要な措置の周知義務については、事業者は必要な措置が確実に伝わるように分かりやすく周知するとともに、周知した内容の徹底を図る。前号34頁左欄「個人事業者等自身による措置」の2項目目後段に下線部を追加)
  • 成分名以外の通知事項(物理的及び化学的性質、人体に及ぼす作用、貯蔵又は取扱い上の注意、流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置等)は、非開示を認めないこと。(前号37頁左欄「化学物質の危険性及び有害性情報の通知制度における営業秘密の保持」の同頁左欄末尾から右欄につながる項目に下線部を追加)
  • また、厚生労働大臣は、必要な指導等を行うことができるようにする。(前号39頁右欄「治療と仕事の両立支援対策の推進」の同頁右欄末尾から40頁左欄につながる項目に追加)
  • 建議を踏まえて厚生労働省は1月27日に労働政策審議会に対して、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案要綱」について諮問し、同日行われた安全衛生分科会において2つの法律案要綱とも妥当と認められた。

1月27日に労働政策審議会は、2つの法律案要綱(後掲)について妥当と答申した。法律案は今通常国会に提出される予定である。

労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案要綱

第一 労働安全衛生法の一部改正

一 個人事業者等に対する安全衛生対策

1 個人事業者の定義

事業を行う者で労働者を使用しないものを、個人事業者として法に位置づけること。

2 個人事業者等による措置

(一) 労働者以外の者で労働者と同一の場所において仕事の作業に従事するものは、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならないものとすること。
(二) 労働者以外の者で労働者と同一の場所において住事の作業に従事するものは、事業者が講ずる危険又は健康障害を防止するための措置に応じて、必要な事項を守らなければならないものとすること。
(三) 厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ譲渡し、貸与し、又は設置してはならない機械等について、事業者は、当該規格又は安全装置を具備しなければ労働者に使用させてはならないものとするとともに、労働者と同一の場所において仕事の作業を行う個人事業者(法人である場合は、その代表者又は役員)又は厚生労働省令で定める規模の事業の事業者(法人である場合は、その代表者又は役員)も使用してはならないものとすること。
(四) 労働者と同一の場所において仕事の作業を行う場合において、個人事業者(法人である場合は、その代表者又は役員)又は厚生労働省令で定める規模の事業の事業者(法人である場合は、その代表者又は役員)は、政令で定める機械等について、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行い、及びその結果を記録しておかなければならないものとすること。
(五) 個人事業者(法人である場合は、その代表者又は役員)又は厚生労働省令で定める規模の事業の事業者(法人である場合は、その代表者又は役員)は、労働者と同一の場所において危険又は有害な業務で厚生労働省令で定めるものに就くときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を受けなければならないものとすること。
(六) 個人事業者(法人である場合は、その代表者又は役員)又は厚生労働省令で定める規模の事業の事業者(法人である場合は、その代表者又は役員)は、労働者と同一の場所において危険又は有害な業務に就くときは、五に定めるもののほか、当該作業を行う場所における安全衛生の水準の向上を図るため、安全又は衛生のための教育を受けるように努めなければならないものとすること。

3 注文者等による措置

(一) 建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならないところ、当該配慮義務の対象が建設工事の注文者に限定されず、仕事を他人に請け負わせる者一般が対象になるものであることを明確化すること。
(二) 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に第30条第1項各号の事項を統括管理させなければならないところ、当該統括管理の対象を、その労働者である作業従事者(労働者、事業を行う者(法人である場合においては、その代表者及び役員)その他の者であって、事業を行う者が行う仕事の作業に従事するものをいう。以下閉じ。)(労働者のほか、労働者以外の当該特定元方事業者に係る作業従事者がある場合には、当該者を含む。)及び関係請負人に係る作業従事者が一の場所において作業を行うときに拡充すること。
(三) 建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所で行われることによって生ずる労働災害を防止するため、庖社安全衛生管理者を選任し、その者に第30条第1項各号の事項を担当する者に対する指導等を行わせなければならないところ、庖社安全衛生管理者による管理の対象を、その労働者である作業従事者(労働者のほか、労働者以外の当該元方事業者に係る作業従事者がある場合には、当該作業従事者を含む。)及び関係請負人に係る作業従事者が一の場所において作業を行うときに拡充すること。
(四) 建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事で、政令で定めるものを行う事業者は、爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられる場合における労働災害の発生を防止するため、労働者の救護に関し必要な機械等の備付け及び管理を行うこと等の措置を講じなければならないところ、当該措置の対象を、作業従事者の救護に関する措置がとられる場合に拡充すること。
(五) 元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならず、違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならないところ、当該指導及び当該指示の対象を、関係請負人に係る作業従事者に拡充すること。当該指示を受けた作業従事者は、当該指示に従わなければならないものとすること。
(六) 建設業に属する事業の元方事業者は、土砂等が崩壊するおそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所その他の厚生労働省令で定める場所において関係請負人の労働者が当該事業の仕事の作業を行うときは、当該関係請負人が講ずべき当該場所に係る危険を防止するための措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならないところ、当該措置の対象を、当該場所において関係請負人に係る作業従事者が当該事業の仕事の作業を行うときに拡充すること。
(七) 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、協議組織の設置及び運営を行うこと等の必要な措置を講じなければならないところ、当該措置の対象を、その労働者である作業従事者(労働者のほか、労働者以外の当該特定元方事業者に係る作業従事者がある場合には、当該者を含む。)及び関係請負人に係る作業従事者の作業が同一の場所において行われるときに拡充すること。
(八) 製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く。)の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業聞の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならないところ、当該措置の対象を、その労働者である作業従事者(労働者のほか、労働者以外の元方事業者に係る作業従事者がある場合には、当該者を含む。)及び関係請負人に係る作業従事者の作業が同一の場所において行われるときに拡充すること。
(九) 仕事を自ら行う事業者であって、当該仕事を行う場所を管理する者は、その管理している一の場所においてその労働者である作業従事者(労働者のほか、労働者以外の作業場所管理事業者に係る作業従事者がある場合には、当該者を含む。)及びその請負人に係る作業従事者が作業を行うときであって厚生労働省令で定める業務に係る作業を行うときは、当該作業による労働災害を防止するため、作業聞の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならないものとすること。
(十) 特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物、設備又は原材料(以下「建設物等」という。)を、当該仕事を行う場所においてその請負人の労働者に使用させるときは、当該建設物等について、当該労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならないところ、当該措置の対象を、建設物等を当該仕事を行う場所においてその請負人に係る作業従事者(労働者及び労働者と同一の場所において仕事の作業に従事する労働者以外の作業従事者に限る。)に使用させるときに拡充すること。
(十一)建設業に属する事業の仕事を行う二以上の事業者の労働者が一の場所において機械で厚生労働省令で定めるものに係る作業(以下「特定作業」という。)を行う場合において、特定作業に係る仕事を自ら行う発注者又は当該仕事の全部を請け負った者で、当該場所において当該仕事の一部を請け負わせているものは、厚生労働省令で定めるところにより、当該場所において特定作業に従事するすべての労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならないところ、当該措置の対象を、二以上の事業者又は個人事業者に係る作業従事者(労働者及び労働者と同一の場所において仕事の作業に従事する労働者以外の作業従事者に限る。)が一の場所において特定作業を行う場合に拡充すること。
(十二) 注文者は、その請負人に対し、当該仕事に関し、その指示に従って当該請負人の労働者を労働させたならば、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反することとなる指示をしてはならないところ、当該違法な指示の禁止の対象を、当該請負人に係る作業従事者が作業する場合に拡充すること。
(十三)(七)から(十)までにより講ぜられる措置に応じて、請負人又は作業従事者は必要な措置を講じなければならないものとすること。
(十四) 機械等で、政令で定めるものを他の事業者に貸与する者で、厚生労働省令で定めるものは、当該機械等の貸与を受けた事業者の事業場における当該機械等による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならないところ、当該措置の対象を、個人事業者に貸与する場合に拡充すること。
(十五) 建築物で、政令で定めるものを他の事業者に貸与する者は、当該建築物の貸与を受けた事業者の事業に係る当該建築物による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならないところ、当該措置の対象を個人事業者に貸与する場合(当該建築物の全部を一の個人事業者に貸与する場合又は二以上の個人事業者のみに貸与する場合を除く。)に拡充すること。

4 労働基準監督署等への申告

(一) 作業従事者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができるものとすること。
(二) 事業者等は、(一)の申告をしたことを理由として、作業従事者に係る事業を行う者に対し、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならないものとすること。

5 災害状況の調査

(一) 厚生労働大臣は、労働災害の防止に資する施策を推進するため、業務に起因して作業従事者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡した災害の発生状況に係る情報その他の必要な事項について調査を行うことができるものとすること。
(二) 厚生労働大臣は、(一)の調査のために必要なときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業を行う者及び作業従事者に対し、必要な事項を報告させることができるものとすること。

二 小規模事業場に対する心理的な負担の程度を把握するための検査等の適用

50人未満の労働者を使用する事業場に対する心理的な負担の程度を把握するための検査等の適用を当分の間努力義務とする特例を廃止すること。

三 化学物質による健康障害防止対策

1 危険性及び有害性情報の通知制度の履行確保

(一) 労働者に危険又は健康障害を生ずるおそれのある物等(以下「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者(以下「譲渡者等」という。)が第57条の2第1項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をした場合には、所要の罰則を科すものとすること。
(二) 譲渡者等は、第57条の2第1項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知しなければならないものとすること。

2 危険性及び有害性情報の通知制度における営業秘密の保持

(一) 譲渡者等は、通知対象物の成分の情報が営業秘密情報である場合には、その旨を相手方にあらかじめ明示した上で、当該通知対象物の成分の化学名における成分の構造又は構成要素を表す文字の一部を省略した又は置き換えた化学名又は厚生労働省令で定める事項を示す名称(以下「代替化学名等」という。)を定め、これを通知することをもって第57条の2第1項又は第2項の規定による成分の通知に代えることができるものとすること。代替化学名等の通知の対象となる具体的な物質については、労働者に危険又は健康障害を生ずるおそれの程度を勘案して厚生労働省令で定めるものとすること。
(二) 代替化学名等を設定した譲渡者等は、(一)の代替化学名等の通知をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該通知に係る通知対象物の成分、通知した代替化学名等その他の厚生労働省令で定める事項を記録しなければならないものとすること。
(三) 代替化学名等を設定した譲渡者等は、通知対象物による健康障害が生じ、又は生じるおそれがある場合において、医師の診断、治療その他の厚生労働省令で定める事由のために必要があるときは、当該医師の求めに応じて、厚生労働省令で定めるところにより、当該通知対象物の成分の情報を当該医師に提供しなければならないものとすること。
(四) 厚生労働大臣は、(一)の代替化学名等の通知の適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を公表し、必要な指導等ができるものとすること。
(五) 労働基準監督署長等は、必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、譲渡者等に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができるものとすること。
(六) 代替化学名等を設定した譲渡者等は、(二)により作成した書類を保存しなければならないものとすると。

3 作業環境測定の対象拡大

(一) 個人ばく露測定を作業環境測定として位置づけること。
(二) 事業者は、第22条の健康障害を防止するため必要な措置、又は、第65条の2第1項の作業環境測定の結果の評価に基づく労働者の健康を保持するための必要な措置を講ずるに当たり、必要と認められるときは、厚生労働省令で定めるところにより、作業環境測定を行わなければならないものとすること。
(三) 事業者は、政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等の調査を行うに当たり、必要に応じて、作業環境測定を行うことができるものとすること。
(四) (二)及び(三)の作業環境測定は、作業環境測定基準に従って行わなければならないものとすること。

四 機械等による労働災害防止対策

1 特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の見直し

(一) 特定機械等の製造許可の申請は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の登録を受けた者(「以下「登録設計審査等機関」という。)が行った特定機械等の設計が構造に係る基準に適合しているかどうかの審査(以下「設計審査」という。)の結果を記載した書類を添付して行わなければならないものとすること。
(二) 登録設計審査等機関は、製造時等検査及び設計審査を行うものとして登録を行うものとすること。当該登録は、厚生労働省令で定める特定機械等及び地域の区分ごとに業務を区分して行うものとすること。
(三) 登録設計審査等機関の登録要件として、現行の登録製造時等検査機関の登録要件に加えて設計審査に係る登録要件も満たさなければならないものとする(具体的には、設計審査に関して一定の知識経験を有する設計審査の実施者(以下「審査員」という。)が一定数以上であること及び審査員のうち一定の知識経験を有する者が審査員を指揮するとともに設計審査の業務を管理するものとする。)こと。ただし、設計審査のみが必要とされる特定機械等においては、製造時等検査に係る登録要件を満たす必要はないこと。また、登録要件に適合しなくなった場合等に、厚生労働大臣が適合命令、改善命令、登録の取消又は業務の停止を命ずることができるものとすること。
(四) 厚生労働省令で定める特別特定機械等に限り登録製造時等検査機闘が製造時等検査を行う仕組みを改め、製造時等検査が必要な全ての特定機械等の製造時等検査を登録設計審査等機闘が行うものとすること。
(五) 登録設計審査等機関による設計審査等を、厚生労働大臣が定める方法で行うものとすること。性能検査、個別検定及び型式検定についても同様とすること。

2 特定自主検査及び技能講習の不正防止対策の強化

(一) ボイラーその他の機械等に係る特定自主検査は、厚生労働大臣の定める基準に従って行わなければならないものとすること。検査業者は、特定自主検査を行うときは、当該基準に従ってこれを行わなければならないものとし、当該基準に違反した場合には厚生労働大臣又は都道府県労働局長が改善命令等を行えるようにすること。
(二) 都道府県労働局長は、技能講習修了証又はこれと紛らわしい書面を不正に交付した者に対し、当該技能講習修了証又はこれと紛らわしい書面の回収を図ることその他必要な措置を講ずることを命ずることができるものとすること。都道府県労働局長は、当該命令に従わない者について、登録を取り消すことができるものとするとともに、登録を取り消したときは、十年を超えない範囲内で、当該処分を受けた者が登録を受けることができない期間を指定することができるものとすること。

3 型式検定対象機械等、技能講習対象業務等の見直し

(一) 型式検定対象機械等として、第42条の特定機械等の安全装置又は保護具であって、規格等を具備しなければ重大な労働災害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものを追加すること。
(二) 技能講習のうち車両系機械運転技能講習を一元化し、車両系建設機械その他の政令で定める機械の運転を対象としたうえで、講師や設備等の登録要件を定めること。
(三) 登録設計審査等機関、登録性能検査機関及び登録個別検定機闘が検査で用いる機械器具等について、技術の進歩に伴う名称の整理等を行うこと。

五 高年齢者の労働災害防止対策

1 事業者は、高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるように努めなければならないものとすること。

2 厚生労働大臣は、1の措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとすること。

3 厚生労働大臣は、2の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができるものとすること。

六 その他所要の改正を行うこと。

第二 作業環境測定法の一部改正

一 作業環境測定士等による個人ばく露測定の実施

1 作業環境測定のうち、作業環境における労働者の有害な因子へのぱく露の程度を把握するために行うものを「個人ばく露測定」と定義すること。

2 事業者は、第一の三の3の(二)又は(三)により指定作業場について作業環境測定を行うときは、厚生労働省令で定めるところにより、その使用する作業環境測定士にこれを実施させ、又は厚生労働省令で定めるところにより、作業環境測定機関にこれを委託しなければならないものとすること。

3 業環境測定士は、第一の三の3の(二)又は(三)により作業環境測定を実施するときは、作業環境測定基準に従ってこれを実施しなければならないものとすること。

4 作業環境測定機関は、他人の求めに応じて第一の三の3の(二)又は(三)により作業環境測定を行うときは、作業環境測定基準に従ってこれを行わなければならないものとすること。

5 作業環境測定士は、個人ぱく露測定を行う場合には、サンプリング又は分析の業務であって厚生労働省令で定めるものについては、厚生労働省令で定める者に補助させることができるものとすること。

二 その他所要の改正を行うこと。

第三 施行期日等

一 施行期日

この法律は、令和8年4月1日から施行すること。ただし、次に掲げる事項は、それぞれ次に定める日から施行すること。

1 第一の一の3の(1) 公布の日

2 第一の四の2 令和8年1月1日

3 第一の三の3並びに第二の一及び二の一部 令和8年10月1日

4 第一の一の5 令和9年1月1日

5 第一の一の2の(三)から(六)まで並びに3の(九)及び(十三)の一部 令和9年4月1日

6 第一の二 公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日

7 第一の三の1 公布の日から起算して5年を超えない範囲内において政令で定める日

二 検討

政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律による改正後のそれぞれの法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

三 経過措置及び関係法律の整備

この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるとともに、関係法律の規定の整備を行うこと。

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱

第一 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の一部改正

一 職場における労働者の就業環境を害する言動に関する規範意識を醸成するための国による啓発活動

国は、職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策の充実に取り組むに際しては、何人も職場における労働者の就業環境を害する言動を行ってはならないことに鑑み、規範意識の醸成がなされるよう、必要な啓発活動を積極的に行わなければならないものとすること。

二 治療と就業の両立支援対策

1 事業主は、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、就業によって疾病、負傷の症状が増悪すること等を防止し、治療と就業を両立することを支援するため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。

2 厚生労働大臣は、1の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を定め、これを公表するものとすること。
3 2の指針は、労働安全衛生法第70条の2第1項に規定する指針と調和が保たれたものでなければならないものとすること。
4 厚生労働大臣は、2の指針に従い、事業主又はその団体に対し、必要な指導等を行うことができるものとすること。

三 職場における顧客等の言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等

1 事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(以下四の5において「顧客等」という。)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないものとすること。
2 事業主は、労働者が1の相談を行ったこと又は当該事業主による1の相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。
3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる1の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならないものとすること。
4 厚生労働大臣は、1から3までの事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとすること。

四 職場における顧客等の言動に起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務

1 国は、労働者の就業環境を害する三の1の言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この四において「顧客等言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならないものとすること。
2 事業主は、顧客等言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる1の措置に協力するように努めなければならないものとすること。

3 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないものとすること。

4 労働者は、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる三の1の措置に協力するように努めなければならないものとすること。

5 顧客等は、顧客等言動問題に対する関心を深めること等に努めなければならないものとすること。

五 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

第二 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部改正

一 求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等

1 事業主は、求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定めるもの(以下この一及び二において「求職者等」という。)によるその求職活動その他求職者等の職業の選択に資する活動(以下この一において「求職活動等」という。)において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないものとすること。
2 事業主は、労働者が当該事業主による求職者等からの1の相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。
3 厚生労働大臣は、1及び2の事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとすること。

二 求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務

1 国は、求職者等の求職活動等を阻害する一の1の言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この二において「求職活動等における性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならないものとすること。
2 事業主は、求職活動等における性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる1の措置に協力するように努めなければならないものとすること。
3 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、求職活動等における性的言動問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないものとすること。
4 労働者は、求職活動等における性的言動問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる一の1の措置に協力するように努めなければならないものとすること。

三 男女雇用機会均等推進者

事業主が選任する職場における男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者の業務として、事業主の講ずる一の1及び二の2の措置等を加えるものとすること。

四 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

第三 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の一部改正

一 基本原則

女性の職業生活における活躍の推進に当たり配慮すべき事項として、女性の健康上の特性を加えるものとすること。

二 基本方針

女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針において定める事項として、職場において行われる就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な措置に関する事項を加えるものとすること。

三 基準に適合する認定一般事業主の認定の基準

基準に適合する認定一般事業主(国及び地方公共団体以外の事業主であって、女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関し、当該取組の実施の状況が優良なものであることその他の厚生労働省令で定める基準に適合するものである旨の認定を受けたものをいう。)の認定の基準として、事業主が講じている第二の一の1の措置に関する情報を公表していることを加えるものとすること。

四 女性の職業選択に資する情報の公表の義務の適用拡大等

1 一般事業主(国及び地方公共団体以外の事業主であって、常時雇用する労働者の数が百人を超えるものに限る。)が、厚生労働省令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事業における女性の職業生活における活躍に関して定期的に公表すべき情報に、その雇用する労働者の男女の賃金の差異及びその雇用する管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合を加えるものとすること。

2 特定事業主(国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員で政令で定めるものをいう。)が行う女性の職業生活における活躍に関する情報の公表等について、所要の改正を行うこと。

五 期限の延長

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の有効期限を10年間延長し、令和18年3月31日までとすること。

六 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

第四 施行期日等

一 施行期日

この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、次に掲げる事項は、次に定める日から施行することとすること。

1 第一の一並びに第三の一、二及び五 公布の日

2 第一の二及び第三の四 令和8年4月1日

二 検討

政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律による改正後のそれぞれの法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

三 経過措置及び関係法律の整備

この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるとともに、関係法律の規定の整備を行うこと。

安全センター情報2025年3月号