EPAがアスベストに関する第2部TSCAリスク評価を終了/US EPA, 2024.11.27

本日、合衆国環境保護庁(EPA)は、有害物質規制法(TSCA)に基づき実施された「アスベストに関する最終リスク評価第2部:アスベストの遺産使用[legacy uses]及び関連する廃棄を含む補足評価」を公表した。第2部でEPAは、クリソタイルアスベスト及び5種類の追加のアスベスト繊維を含むアスベストの遺産使用及び関連する廃棄を評価した。遺産使用とは、アスベストを含有する床・天井板、パイプの被覆、断熱材や耐熱紡織品など、製造、加工または流通は終了しているものの、アスベストが依然として存在している可能性がある使用である。EPAは、アスベストがヒトの健康に対して不合理なリスクをもたらす可能性があると判定した。

アスベストに関連した使用及びリスク

アスベストは自然に生成する繊維状の鉱物である。アスベストは歴史的には、20世紀半ばに建設における耐火材として使用されたが、他にも、塩素や苛性ソーダの製造に使用される隔膜、ガスケット、ブレーキ、セメント水道管や、床タイル、断熱材、屋根板、テクスチャードペイントなどの建築資材など、様々な用途でも広く使用された。
攪乱されるとアスベスト繊維が空気中に飛散し、それが人の肺に吸入されると、石綿肺(肺疾患の一種)及び中皮腫(腹腔膜のがん)や肺がん、卵巣がん、喉頭がんなどのを引き起こす可能性がある。
前政権下で、EPAは、進行[継続]中の使用のみをレビューすることによって、アスベストに関するTSCAリスク評価の範囲を狭め、遺産使用や廃棄に関する検討を除外した。クリソタイルアスベストのみが現在も使用されているため、他の繊維の種類は当初は考慮されなかった。しかし、2019年に裁判所が、同庁は「遺産使用」と「関連する廃棄」をTSCAの「使用条件」の定義から違法に除外したとの判決を下し、その結果、アスベストに関する同庁の当初のレビュー(「第1部」)を「第2部」リスク評価で補足する必要が生じた。
EPAは、2020年12月にクリソタイルアスベストの進行中の使用に関するリスク評価の第1部を完了し、2024年3月にクリソタイルアスベストの継続使用を禁止する規則を最終決定した。
第2部リスク評価は、クリソタイル(白石綿)に加え、クロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの5種類の繊維、リビー角閃石アスベスト、及びアスベスト含有タルクを考慮している。 リスク評価の第2部でEPAは、アスベストの遺産使用と関連する廃棄を評価した。アスベストは古い学校の建物にも見られることがある。一般的に、人々がアスベストに曝露する可能性があるのは、アスベスト含有物質が何らかのかたちで取り扱われたり、損傷を受けたりして、アスベスト繊維が空気中に飛散する場合だけである。例えば、古い建物の断熱材にアスベストが存在していても、アスベスト含有断熱材が攪乱されなければ、そのアスベストは当該建物内や近隣で生活したり働いたりする人々にとってリスクを生じさせない。
第2部リスク評価においてEPAは、アスベストへの曝露につながるアスベストの遺産使用は、アスベストによってもたらされる不合理なリスクに著しく寄与していると判定した。EPAは、解体作業に日常的に従事する建設労働者など、アスベスト含有物質の切断、研磨または研削作業に日常的に従事する労働者について、もっとも高いアスベスト曝露の可能性があると予期している。消防士などの緊急対応者も、火災その他の緊急事態により建物内のアスベスト物質が攪乱させられて、アスベスト曝露につながるリスクにさらされる可能性がある。このようなアスベスト使用の遺産状況は、衣服に付着したアスベスト繊維を家庭内に持ち込む可能性のある曝露労働者の家族やアスベスト含有物質が関わるDIY住宅リフォームやその他のプロジェクトに従事する人々、さらには解体やリフォームなどアスベスト繊維の飛散を引き起こす作業の近くに住む人々にも健康リスクをもたらす。
EPAのリスクに関する知見は、アスベスト含有物質が家屋や学校にあるからといって、誰もが健康被害を受けるという意味ではない。アスベストは、それが攪乱されない限り、古い学校の建物に通う生徒やそこで働く人々に対してリスクをもたらすことはない。
EPAは、タルクにアスベストが含まれるパーソナルケア製品など、TSCAの対象外である製品に微量[trace amounts]に意図せず含まれるアスベストによる曝露については評価していない。EPAの微量アスベストに関する知見は、TSCAの対象外であるアスベストの使用に関する結論に外挿されるべきではない。アスベストリスクに関するさらに詳しい情報は:https://www.epa.gov/asbestos/learn-about-asbestos を参照されたい。
EPAは、環境に対する不合理な被害リスクはないと判断している。

次のステップ

EPAは、アスベストの遺産使用及び関連する廃棄によってもたらされる不合理なリスクに対処するためのリスク管理プロセスを開始する。EPAは、特定されたリスクから人々を守るためにTSCAセクション6に基づく規則の提案を公表する予定である。

追加情報

不合理なリスクに著しく寄与する使用の状態:

  • 産業/商業使用:建設、塗装、電気、及び金属製品:建設及び建築資材:紙製品;金属製品;石こう、セメント、ガラス、セラミック製品
  • 産業/商業使用:建設、塗装、電気、及び金属製品:機械類、機械器具、電気/電子製品
  • 産業/商業使用:建設、塗装、電気、及び金属製品:その他の機械類、機械器具、電子/電子製品
  • 産業/商業使用:家具、清掃、ケア用品:建設及び建築資材:織物、繊維、及びアパレル
  • 産業/商業使用:家具、清掃、ケア用品:家具及び調度品:石、石膏、セメント、ガラス、陶磁器製品、金属製品、及びゴム製品
  • 消費者使用:建設、塗装、電気、及び金属製品:建設及び建築資材:紙製品、金属製品、石、石膏、セメント、ガラス、及び陶磁器製品
  • 廃棄

不合理なリスクに著しく寄与しない使用の状態:

  • 産業/商業使用:建設、塗装、電気、及び金属製品:充填材及びパテ
  • 産業/商業使用:建設、塗装、電気、及び金属製品:溶剤系/水系塗料
  • 産業/商業使用:建設、塗装、電気、及び金属製品:電気電池及び蓄電池
  • 産業/商業使用:包装、紙、プラスチック-包装(食品包装を除く):ゴム製品及びプラスチック製品
  • 産業用/商業使用:自動車、燃料、農業、屋外用製品:芝生及び庭の手入れ用品
  • 産業用/商業使用:非石綿商品の採掘
  • 産業用/商業使用:実験室用化学品
  • 産業用/商業使用:その他の用途:人工物
  • 産業用/商業使用:その他の用途:航空宇宙用途
  • 消費者使用:建設、塗装、電気、及び金属製品:機械、機械器具、電気/電子製品
  • 消費者使用:建築、塗装、電気、及び金属製品:充填材及びパテ
  • 消費者使用:建築、塗装、電気、及び金属製品:溶剤系/水系塗料
  • 消費者使用:家具、クリーニング、ケア用品:建設資材及び建築資材、布地、織物、衣類を含む
  • 消費者使用:家具、クリーニング、ケア用品:家具及び調度品:石材、石膏、セメント、ガラス、及びセラミック製品;金属製品;またはゴム製品
  • 消費者使用:包装紙、プラスチック、玩具、ホビー用品:包装(食品包装を除く):ゴム製品;プラスチック製品
  • 消費者使用:包装紙、プラスチック、玩具、ホビー用品:子供用玩具(及び子供専用用品):織物、繊維製品、衣類;またはプラスチック製品(硬質)
  • 消費者使用:その他の用途:人工物
  • 消費者使用:自動車、燃料、農業、屋外用製品:芝生及び庭の手入れ用品

https://www.epa.gov/chemicals-under-tsca/epa-finalizes-part-2-tsca-risk-evaluation-asbestos#:~:text=The%20part%202%20risk%20evaluation,and%20associated%20disposals%20of%20asbestos.

安全センター情報2025年1・2月号