早朝配送、労働者を巻き込んで殺す・・・うつ病も一般労働者の『三倍』/韓国の労災・安全衛生2025年1月17日
「(早朝配達の仕事をして帰ると)寝なければならないのに、子供たちが動いて何かをしているから眠れず、腹が立って・・・。だから揉め事も多いし、離婚の話も聞こえてきます。このような仕事はなくすべきです」(早朝配送八年目の運転手Aさん)
クパン、マーケットカーリーなど、早朝配送労働者のうつ病と自殺を考える頻度が他の労働者より三倍近くも高いことが判った。早朝配送労働者はアルゴリズムの『見えない統制』で過労に追い込まれ、身体的・精神的な健康を深刻に脅かされ、社会的な孤立にも苦しめられていた。しかし政府は『勤労基準法上の勤労者』ではないという理由で、彼らの労働権・健康権の保護には後ろ手を組んでいる。
中央大・社会福祉学科のイ・スンユン教授とソウル大学環境保健学科のキム・スンソプ教授などが国会で討論会を行い、このような内容の『早朝配送労働者1021人実態調査』結果を発表した。早朝配送労働者を対象に大規模な実態調査が行われたのは初めてだ。研究陣は昨年10月11日から18日まで、全国の早朝配送労働者1021人の調査を行った。
回答者の平均年齢は36歳で、男性が84.6%、女性が15.4%だった。主な利用プラットフォームは「クパン」が69.3%で最も多く、「マーケットカーリー」が23.0%、「SSG」が5.8%、「オアシスマーケット」が1.9%といった順だった。回答者は月の所得の74.4%を早朝配送に依存し、半分以上は所得の全べてを早朝配送で稼いでいた。
回答者の83.4%が午後9時~午前1時の間に仕事を始め、81.2%は午前5時~8時に仕事を終えていた。大部分が週五日以上働いていたが、「週六日働く」という応答も31.4%に達した。一日平均の配送量は77件で、200件以上を配送したという応答も7.0%あった。
調査の結果、明け方配送の労働者は過労によって、健康権・休息権を深刻に侵害されていた。回答者の57.7%が、最近一ヵ月間に健康の異常を経験したと答えた。しかしその内の93.5%が「痛くても仕事をした」と話した。65.0%は「休息ができない」と答え、85.4%が「トイレの利用が容易ではない」と答えた。休めない理由としては「物量(38.8%)」「時間の圧迫(27.7%)」「休む場所がない(24.9%)」「所得の減少(8.0%)」等が挙げられた。
早朝配送は、特に睡眠のパターンに大きな悪影響を及ぼすことが判った。回答者の34.8%が「最近一ヶ月間、眠りに就くのが難しかった」と話した。これは2023年の勤労環境調査に参加した一般労働者の平均(12.4%)の3.3倍、夜間労働者の平均(16.3%)よりも2.7倍高い。「最近一ヶ月間、睡眠中によく目が醒めた」という応答も41.8%で、一般労働者(14.1%)と夜間労働者(17.9%)より高く、「寝て起きても疲れている」という応答は65.0%で、一般労働者(18.4%)と夜間労働者(28.3%)を遙かに上回った。
睡眠不足と社会的な関係の断絶は、精神健康の悪化に繋がった。回答者の47.4%が「私の周りに人が余りいない」と答えた。憂うつ症状を体験する比率は31.9%で、一般労働者(10.8%)と夜間労働者(12.5%)よりも2~3倍高かった。
「過去一年間に自殺を考えたことがある」という応答も13.8%で、2022~2023年の国民健康栄養調査での労働者の平均(3.9%)より2.4倍高かった。「自殺に対する具体的な計画を立てたことがある(5.3%)」と「自殺を試みたことがある(5.3%)」という応答も、労働者平均(各々0.7%、0.5%)より4~6倍高かった。
早朝配送労働者たちが過労から抜け出すのが難しいのは、アルゴリズムなどによるプラットフォームの『見えない統制』のためだった。回答者の83.8%は、タブレット・アプリなどから『業務のスピードに関する影響を受ける』と答えた。79.9%は『配達経路と順序に影響を受ける』と答えた。75.4%は『最小限の成果や点数・配達量を維持しなければ、仕事がアプリで自動的に取り消しになったり、仕事を失ったり、仕事が中止されることもあり得る』と話した。
これは形式上『個人事業者』である早朝配送運転手が、実際には業務指揮と統制を受ける『勤労基準法上の勤労者』に該当し得ることを示している。イ・スンユン教授は「作業と仕事の遂行において、『実質的』な自律性は低いが、労働者個人が(車輌購入など)自ら負担する費用は高い」とし、「統制と指揮は受けるが、雇い主が責任を負うべきことからは抜け出している虚構的な自律性」と話した。
しかし、最近、雇用労働部はクパンに対する勤労監督を行った後、早朝配送運転手たちが「勤労者ではない」と判断した。労働部は「運転手が配送業務に必要な貨物車輌を所有し、直接管理し、業務時間を本人の裁量で選択できる」と話した。配送運転手たちが実質的な指揮・統制を受けて、休息さえできない状況を考慮していないという指摘が続いた。
2025年1月17日 京郷新聞 チョ・ヘラム記者