COP11で検討されるロッテルダム条約改正提案/Communication from the Secretariat to Parties, 2022.10.31
本書簡の目的は、ロッテルダム条約締約国及び署名国に対し、スイス、オーストラリア及びマリから提出されたロッテルダム条約改正案を伝達することである。本提案は、2023年5月1日から12日に開催される予定の第11回締約国会議[COP11]において検討される予定である。
本書簡は、改正提案のテキストは「採択が提案される会合の少なくとも6か月前に、事務局から締約国に対して通知されなければならない」と規定した第21条第2項にしたがって送付されるものである。本書簡の付録Ⅰに改正提案、付録Ⅱに提案者による説明書が示されている。
第11回締約国会議における議論を促進するため、締約国は、2023年1月16日までに、改正提案に関するコメントを事務局及びスイス政府に提出するよう要請する。事務局は締約国会議に、提出されたコメントを編集したものを提供する予定である。スイスは、提案を共同提案することを望む国はそうするよう求めていることに留意されたい。コメントは、可能であれば、メールで以下まで送っていただきたい。
[メール送付先-省略]
目次
付録Ⅰ ロッテルダム条約第7、10、11及び22条を改正し、附属書Ⅷを追加する、スイス、オーストラリア及びマリによる提案
第7条 化学物質の附属書Ⅲ及びⅧへの掲載
1 化学物質検討委員会は、附属書Ⅲに掲げるよう勧告することを決定した化学物質に関し、決定指針文書案を作成する。決定指針文書は、少なくとも、附属書Ⅰ又は、場合に応じ、附属書Ⅳに定める情報に基づくものとし、また、最終規制措置が適用される分類以外の分類における当該化学物質の使用に関する情報を含むものとする。
2 1に規定する勧告は、決定指針文書案と共に締約国会議に送付する。締約国会議は、1に規定する化学物質を事前のかつ情報に基づく同意の手続の対象または明示の同意の対象とすべく附属書Ⅲまたは附属書Ⅷに掲げるべきか否かを決定し、決定指針文書案を承認する。
3 事務局は、締約国会議が化学物質を附属書Ⅲまたは附属書Ⅷに掲げることを決定し、関連の決定指針文書を承認した場合には、その情報を直ちにすべての締約国に送付する。
第10条 附属書Ⅲ及び附属書Ⅷに掲げる化学物質の輸入に関する義務
1 締約国は、附属書Ⅲ及び附属書Ⅷに掲げる化学物質の輸入について時宜を得た決定が行われることを確保するため、適当な立法措置又は行政措置をとる。
2 締約国は、事務局に対し、できる限り速やかに、いかなる場合にも第7条3に規定する決定指針文書の発送の日の後9箇月以内に、関係する化学物質の将来の輸入に関する回答を送付する。締約国は、その回答を修正する場合には、事務局に対し直ちに修正した回答を提出する。
3 事務局は、2に規定する期間の満了の時に、それまでに回答していない締約国に対し、回答するよう直ちに書面で要請する。締約国が回答することができない場合において、事務局は、適当なときは、次条2の末文に定める期間内に回答することができるよう支援する。
4 2に規定する回答は、次の(a)又は(b)のいずれかのものとする。
(a) 立法措置又は行政措置に基づく次のいずれかの最終的な決定
(i) 輸入に同意すること。
(ii) 輸入に同意しないこと。
(iii) 特定の条件を満たす場合にのみ輸入に同意すること。
(b) 暫定的な回答。この回答には次のものを含めることができる。
(i) 輸入に同意すること(特定の条件の有無を問わない。)についての暫定的な決定又は暫定的な期間において輸入に同意しないことについての暫定的な決定
(ii) 最終的な決定について積極的に検討中である旨の記載
(iii) 事務局又は最終規制措置を通報した締約国に対し更なる情報の提供を求める旨の要請
(iv) 化学物質の評価についての支援に関する事務局への要請
5 4(a)又は(b)に規定する回答は、附属書Ⅲ及び附属書Ⅷに掲げる化学物質の特定された分類について行うものとする。
6 最終的な決定には、その根拠となっている立法措置又は行政措置についての記述を付すべきである。
7 締約国は、この条約が自国について効力を生ずる日までに、附属書Ⅲ及び附属書Ⅷに掲げる各化学物質に関する回答を事務局に送付する。ただし、改正されたロンドン・ガイドライン又は国際的な行動規範に従って回答した締約国は、再度回答することを要しない。
8 締約国は、その立法措置又は行政措置に基づき、この条の規定に基づく自国の回答を自国の管轄内の関係者が入手することができるようにする。
9 化学物質の輸入に同意しないこと又は特定の条件を満たす場合にのみ化学物質の輸入に同意することを2及び4並びに次条2の規定に従って決定する締約国は、同時に次のものについて禁止し又は同様の条件を付する(既に禁止し又は同様の条件を付している場合を除く。)。
(a) すべての者からの当該化学物質の輸入
(b) 国内における使用のための当該化学物質の国内生産
10 事務局は、受領した回答を6箇月ごとにすべての締約国に通報する。その通報には、入手可能な場合には、決定の根拠となった立法措置又は行政措置についての記述を含める。さらに、事務局は、回答が送付されなかったすべての事例について締約国に通報する。
第11条 附属書Ⅲ及び附属書Ⅷに掲げる化学物質の輸出に関する義務
1 輸出締約国は、次のことを行う。
(a) 事務局が前条10の規定に従って通報した回答を自国の管轄内の関係者に通知するための適当な立法措置又は行政措置をとること。
(b) 事務局が前条10の規定に従って締約国に対し最初に回答を通報した日の後6箇月以内に、自国の管轄内の輸出者が当該回答に含まれる決定に従うことを確保するための適当な立法措置又は行政措置をとること。
(c) 要請に応じ、かつ適当な場合には、輸入締約国に対し次のことについて助言し及び援助すること。
(i) 輸入締約国が前条4及びこの条の2(c)の規定による措置をとることを支援するため、更なる情報を取得すること。
(ii) 化学物質のライフサイクルにおいて当該化学物質を安全に管理するための輸入締約国の能力を強化すること。
2 締約国は、例外的な状況において附属書Ⅲに掲げる化学物質について回答しなかった輸入締約国又は暫定的な決定を含まない暫定的な回答を行った輸入締約国に対して、当該化学物質が自国の領域から輸出されないことを確保する。ただし、次の場合は、この限りでない。
(a) 当該化学物質の輸入の際に、当該輸入締約国において化学物質として登録されている場合
(b) 当該化学物質が以前に当該輸入締約国において使用され又は輸入されたことについての証拠が存在する場合で、かつ、当該化学物質の使用を禁止する規制措置がとられたことがない場合
(c) 輸出者が当該輸入締約国の指定された国内当局を通じて輸入に関する明示の同意を要請し、かつ、明示の同意を得ている場合。当該輸入締約国は、このような要請に対して60日以内に回答し、その決定を速やかに事務局に通報する。
この2の規定に基づく輸出締約国の義務は、締約国が回答しなかったこと又は暫定的な決定を含まない暫定的な回答を行ったことについて事務局が前条10の規定に従って最初に締約国に通報した日から6箇月の期間が満了した時から適用するものとし、その後の1年間について適用する。
3 締約国は、附属書Ⅲに掲載されるまでの間、例外的な状況において、回答しなかった又は暫定的な決定を含まない暫定的な回答を行った輸入国に対して、附属書Ⅷに掲げる化学物質が自国の領域から輸出されないことを確保する。
第22条 附属書の採択及び改正
1 この条約の附属書は、この条約の不可分の一部を成すものとし、「この条約」というときは、別段の明示の定めがない限り、附属書を含めていうものとする。
2 附属書は、手続的、科学的、技術的又は事務的な事項に限定される。
3 この条約の追加の附属書の提案、採択及び効力発生については、次の手続を適用する。
(a) 追加の附属書は、前条1から3までに定める手続を準用して提案され及び採択される。
(b) 締約国は、追加の附属書を受諾することができない場合には、その旨を、寄託者が当該追加の附属書の採択について通報した日から1年以内に、寄託者に対して書面により通告する。寄託者は、受領した通告をすべての締約国に遅滞なく通報する。締約国は、いつでも、先に行った追加の附属書を受諾しない旨の通告を撤回することができるものとし、この場合において、当該追加の附属書は、(c)の規定に従うことを条件として、当該締約国について効力を生ずる。
(c) 追加の附属書は、寄託者による当該追加の附属書の採択の通報の日から1年を経過した時に、(b)の規定に基づく通告を行わなかったすべての締約国について効力を生ずる。
4 附属書Ⅲ及び附属書Ⅷの場合を除くほか、この条約の附属書の改正の提案、採択及び効力発生については、この条約の追加の附属書の提案、採択及び効力発生と同一の手続に従う。
5 附属書Ⅲ及び附属書Ⅷの改正の提案、採択及び効力発生については、次の手続を適用する。
(a) 附属書Ⅲの改正は、第5条から第9条まで及び前条2に定める手続に従って提案され及び採択される。
(b) 締約国会議は、コンセンサス方式により附属書Ⅲの改正の採択についての決定を行う。
(b) 附属書Ⅲの改正の採択についてコンセンサス方式による決定を行なうためのあらゆる努力が尽くされた場合、締約国会議は代わりに、第21条第3項に規定する手続に従って当該改正の提案を附属書Ⅷの改正として採択することができる。
(c) 附属書Ⅲ及び附属書Ⅷの改正についての決定は、寄託者が直ちに締約国に通報する。当該改正は、当該決定において定める日にすべての締約国について効力を生ずる。
6 追加の附属書又は附属書の改正がこの条約の改正に関連している場合には、当該追加の附属書又は附属書の改正は、この条約の当該改正が効力を生ずる時まで効力を生じない。
附属書Ⅷ-明示の同意の対象となる化学物質
化学物質/関連するCAS番号/分類
※訳注:ロッテルダム条約日本語訳は以下に拠った。以下に参考として、第21条も掲載。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty156_5.html
参考:第21条 この条約の改正
1 締約国は、この条約の改正を提案することができる。
2 この条約の改正は、締約国会議の会合において採択する。改正案は、その採択が提案される会合の少なくとも6箇月前に事務局が締約国に送付する。事務局は、改正案をこの条約の署名国及び参考のため寄託者にも送付する。
3 締約国は、この条約の改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、締約国会議の会合に出席しかつ投票する締約国の4分の3以上の多数による議決で採択する。
4 改正は、寄託者がすべての締約国に対し批准、受諾又は承認のために送付する。
5 改正の批准、受諾又は承認は、寄託者に対して書面により通告する。3の規定に従って採択された改正は、締約国の少なくとも4分の3が批准書、受諾書又は承認書を寄託した日の後90日目の日に、当該改正を批准し、受諾し又は承認した締約国について効力を生ずる。その後は、当該改正は、他の締約国が当該改正の批准書、受諾書又は承認書を寄託した日の後90日目の日に当該他の締約国について効力を生ずる。
付録Ⅱ ロッテルダム条約改正提案に関する提案国による説明書
ロッテルダム条約は、化学物質と廃棄物の健全な管理を実現するための国際的な枠組みの重要な一翼を担っている。それは、各国が、国際貿易における特定の有害な化学物質及び駆除剤に関する情報を共有及び交換するための国際的プラットフォームと手順を確立している。
それは、各国が化学物質の有害な特性に基づいて情報を共有する必要のある化学物質について、及び、次にそのような情報を交換するプロセスについて、合意する仕組みとして設立された。同条約の付属書Ⅲに掲載された化学物質は、条約で定められた「事前のかつ情報に基づく同意」手続に従ってのみ、取引をすることができる。
本条約の目的は、化学物質の特性に関する情報交換を促進することにより、その輸出入に関する国の意思決定に寄与することにより、及びその決定を締約国に周知することにより、潜在的危害から人の健康と環境を保護するとともに、環境的に健全な使用に寄与するために、特定の有害な化学物質の国際貿易における締約国間の責任の共有及び協力の努力を促進することにある。
近年、化学物質検討委員会(CRC)が化学物質は掲載基準を満たすと判断し、締約国会議(COP)がその評価を確認し、締約国の大多数がリスト掲載を支持しているにもかかわらず、COPが化学物質の附属書Ⅲへの掲載ができなかったいくつかの事例がある。このような状況は、化学物質と廃棄物の健全な管理を実現するための世界的な努力を損ない、条約の有効性に疑問を投げかけるものである。CRCとCOPの両方がリスト掲載の基準を満たすと判断した化学物質を、COP附属書Ⅲに掲載できないことについて、毎回のCOP会合で多くの締約国が懸念を表明してきた。この問題に対処するために、これまでにも条約の改正提案があった。
これまでのCOPでは、条約の有効性を高めるための提案も検討され、いくつかの有益な改善が実施されてきた。しかし、有害であると広く認識されている多くの化学物質を管理するために、締約国が条約に基づく事前のかつ情報に基づく同意の仕組みを利用することをできなくさせられているという問題は残っている。
本説明書の付録[付録Ⅰ]に示される条約の改正提案は、これに対処するものである。要約すると、以下を行なうものである。
- 附属書Ⅲに追加して、CRCによって附属書Ⅲへの掲載の基準を満たすと判断されたものの、COPが附属書Ⅲへの掲載に合意できなかった化学物質を掲載する、新たな附属書を設立する(新たな附属書Ⅷを追加する改正提案参照)。
- 附属書Ⅷに化学物質を含めることについてコンセンサスに達するための努力が尽くされた場合に、4分の3の多数決によって新たな附属書Ⅷへの化学物質の掲載を決定するための法的根拠を、COP(より具体的には改正された条約の締約国)に対して提供する(第22条の改正提案参照)。
- 附属書Ⅷに掲載された化学物質の決定指針文書(DGD)を承認するともに、事務局にそれを利用可能にすることを求めるための法的根拠を、COPに対して提供する(第7条の改正提案参照)。
- 附属書Ⅷに掲載された化学物質に関する権利と義務を、改正された条約の締約国に対し定める。例えば、事前のかつ情報に基づく同意手続は、明示的な同意が必要であるという修正を加えたうえで、適用される(第10及び11条の改正提案参照)。
- 本説明書の付録は、便宜上、関連する条文と新たな附属書を、改正が採択され、発効した場合に表示されるかたちで示している。改正箇所は緑色[下線]で強調されている。
本改正によって導入される手続は、以下のように運用されるだろう。 - すでに附属書Ⅲに掲載されている化学物質、または、将来的にCRCにより提案されかつCOPにより附属書Ⅲへの掲載に合意される化学物質については、変更はない。例えば事前のかつ情報に基づく同意など、すべての手続は、現在と同様に運用される。
- 本改正は、CRCの運営にも、また条約第5~7条に基づく検討及びCOPに対する勧告にも、影響を与えない。
- ・ CRCが附属書Ⅲへの化学物質の掲載を勧告したものの、COPがリスト掲載についてコンセンサスに達することができない場合、改正された条約の締約国は、当該物質の附属書Ⅷへの掲載を決定するとともに、DGDを承認することができる。
- 附属書Ⅲには、すべての締約国に義務がある化学物質が掲載される。
- 附属書Ⅷには、改正された条約の締約国のみに権利と義務がある化学物質が掲載される。
- 附属書Ⅷに掲載された化学物質についての事前のかつ情報に基づく合意手続は、輸入国に、当該化学物質を輸入することに明示の同意を提供することを求め、とりわけ第11条第2項に規定される例外は適用されない。
- 附属書Ⅷへの化学物質の掲載は、将来的にCOPが当該化学物質の附属書Ⅲへの掲載を決定することを妨げるものではない。
※http://www.pic.int/TheConvention/Communications/tabid/3464/language/en-US/Default.aspx
安全センター情報2024年4月号