多部門ガイドラインの更新(2023年),欧州社会パートナー合同第三者暴力・ハラスメント(TPVH)ウェブサイト

多部門ガイドラインの採択から12年以上が経過し、欧州の社会パートナーは、公共サービスにとくに重点を置いた、EUが資金提供するプロジェクト(2021~2023年)を開始した。プロジェクトには、地方・地域政府、中央政府サービス、病院、教育、都市公共交通の6部門の社会パートナー(ガイドラインの署名者及び非署名者)、及び1民間部門(電気通信)の使用者パートナーが参加した。

プロジェクトは、ガイドラインの有効性と実施について検討し、変化する労働世界、社会パートナーの関連優先事項、法令の進展を反映するためにガイラインを更新する範囲について検討した。

[プロジェクトパートナーは、使用者側ではCEMR、HOSPEEM、EUPAE、UITP、ETNO、労働組合側ではEPSU、CESI、ETF、ETUCEである。プロジェクトは6回のウェビナーとマドリードでの最終会議を開催した。]

プロジェクト期間中に収集された事例、プロジェクトの調査結果、社会パートナー間の議論、TPVHの引き金、原因及び影響に関するより深い理解に基づき、プロジェクトの主な結果は以下のとおりである。

・ TPVHを「仕事の一部」と見なすのではなく、職場暴力・ハラスメントの重大な形態と見なし、提供されるサービスの質とサービスを提供する労働者の労働生活の質の両方に影響を与えるように、職場文化を変えることの重要性。
・ TPVHを防止し、苦情に真摯に処理・対応し、TPVHの影響を受けた労働者に支援を提供するうえでの、上級・管理職の意識、能力及びコミットメントの重要性。
・ 労働の編成、人員のレベル、TPVHに対処する不十分なメカニズム及び資源の制約のために発生する心理社会的リスクを考慮に入れることを含む、リスクアセスメントを通じて予防の文化を根付かせること。これは、TPVHの予防を、OSH、反差別、ジェンダー平等に関連する部門・職場方針の中心に据えることを意味している。
・ TPVHは、サービスの質やTPVHのリスクの問題が真剣に取り上げられ、TPVHの根本原因や引き金に取り組むことが評価され、ディーセントな労働条件、質の高いサービスを提供するための十分な人員と資源が確保されるような、前向きな労働環境の促進と様々な関連がある。この点で、TPVHを防止するために不可欠であるとして、使用者に対する義務とインセンティブが、プロジェクトパートナーによって頻繁に強調された。
・ 複数の、交差するかたちの差別を含む、差別と関連したTPVH のリスクを認識し、よりよく理解すること。一方では、女性が顧客や取引先などと定期的に接触する部門で働くことが多いため、より大きなリスクが生じ、他方では、労働市場におけるジェンダー不平等やジェンダー化された権力不平等のために、さらなる脆弱性が存在する。

多部門ガイドライン更新の主要テーマ

プロジェクトのために実施された調査、グッドプラクティスの収集、プロジェクト会議やウェビナーにおける社会パートナーの間での議論に基づき、以下は最終プロジェクト報告書における提言の要約である。

1. ガイドラインの更新

TPVHの特殊性とCOVID-19の間にTPVHがさらに大きな問題となったことを考慮すると、TPVHに関する専用のガイドラインを保持することの妥当性についてはコンセンサスが得られている。しかし、以下の点についてガイドラインを更新することにより、改善の余地がある。

  • 変化する労働世界におけるデジタル化の役割及び関連するリスク。
  • 労働における家庭内暴力を含むGBVHの影響、及びILO第190号条約・第206号勧告に沿ったTPVHへのジェンダーに対応したアプローチへの重点強化の必要性。
  • 重要な予防手段としてのリスクアセスメントをよりよく実施し、心理社会的リスク、不十分な人員配置、セキュリティプロトコル、被害者への支援と補償を含めることを促進する必要性。

2. ガイドラインのよりよい実施

ガイドラインの更新、実施及び普及は;

  • 短期的には、プロジェクトの対象となった部門別社会対話委員会でガイドラインの改訂に合意する。
  • ガイドライン、またはガイドラインを支える一連の原則が、国内労働協約及び/またはEU部門別協約において拘束力を持つべきかどうかを検討する。
  • 更新されたガイドラインのハイレベルな立ち上げと支援、グッドプラクティスを紹介する専用ウェブサイト、利用しやすいガイダンス資料やファクトシートとともに、コミュニケーション・普及計画を立案する。
  • 長期的には、あらゆる形態の暴力・ハラスメントに関する拘束力のある社会パートナー協約の再交渉(暴力・ハラスメントに関する2007年の社会パートナー協約の更新)にガイドラインを含める選択肢を議論するとともに、ILO第190号条約と暴力・ハラスメント(内部及び外部の両方)に対する統合的アプローチを支持する国内協約との整合を確保する。

【調査はまた、GBVH、職場の問題としての家庭内暴力、デジタル化、労働安全衛生とリスクアセスメント、及び保護と救済というテーマにわたるガイドラインの更新について、いくつかのさらなる情報を確認した。これらは添付[下記URL]のPDF[6頁]にまとめられている。

https://www.thirdpartyviolence.com/_files/ugd/549202_815c741cfa7e44179f8ec27d8e710f4e.pdf

調査から得られたこれらの要約テーマと提言は、最終報告書に掲載されており、英語(ENG[110頁])、フランス語(FR)、ドイツ語(DE)、スペイン語(ES)、イタリア語(IT)、ルーマニア語(RO)で入手可能である[各URL省略]。
ガイドライン更新のための行動計画が、2023年の部門別社会対話委員会でプロジェクトパートナーによって合意された。

https://www.thirdpartyviolence.com/_files/ugd/549202_85fba953557e4caaa75a25941a44587e.pdf

https://www.thirdpartyviolence.com/updatingmulti-sectorialguidlines2023

安全センター情報2022年7月号で以下を紹介している。

・ 労働に関連した第三者暴力・ハラスメントに対処するための多部門ガイドライン10周年に当たっての共同声明(2020年7月16日)
・ 労働に関連した第三者暴力・ハラスメントに対処するための多部門ガイドラインのフォローアップ及び実施に関する共同報告(2013年11月21日)
・ 労働に関連した第三者暴力・ハラスメントに対処するための多部門ガイドライン(2010年9月3日)

安全センター情報2024年6月号