欧州多部門労使による第三者暴力・ハラスメント対策~実施報告/10周年共同声明/多部門ガイドライン

「労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための多部門ガイドライン10周年に当たっての共同声明」/2020年7月16日

10年前、欧州公務労連(EPSU)、UNIグローバルユニオン欧州(UNI europa)、欧州労働組合教育委員会(ETUCE)、欧州病院医療事業者協会(HOSPEEM)、欧州地方自治体会議(CEMR)、欧州教育事業者協会(EFEE)、欧州卸売・小売・国際貿易事業者協会(EuroCommerce)、欧州防犯事業者協会(CoESS)は、第三者暴力及びハラスメントを欧州経済領域内で直面している安全衛生上の課題の鍵のひとつとして確認し、労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための多部門ガイドラインに署名した[2012年4月号で紹介したが、35頁に再録]。2018年[12月17日]に、EUPAE(欧州行政機関使用者連合)とTUNED(労働組合国内・欧州代表団)が、この緊急の問題に対処する諸団体の活動に加わった。

それ以来、われわれは、注意喚起やハラスメント及び暴力に対して利用することのできる手続の斬新的な増加をみており、職場における身体的暴力、セクシャルハラスメントやいじめ/ハラスメントに関連したデータの入手可能性の拡大をみている。

ガイドラインをもって、EUの社会パートナーは、多部門レベルの活動領域の創設を支援し、職場、及び、使用者、労働者や労働者代表によって現実的なステップがとられ、またとられる可能性のある場所における、結果志向型の方針に貢献してきた。

署名した団体は、様々な職業部門や職場で労働者が直面している第三者暴力に関して、部門別や組織別の違いはあるものの、グッドプラクティスの鍵となる共通の要素やそれに対処するステップには、社会パートナーシップ・アプローチ、明確な定義、労働者・労働者代表と協議して行うリスクアセスメントを通じた予防対策、注意喚起、トレーニング、明確な報告とフォローアップ、適切な評価プロセスが含まれることを理解している。

ガイドラインは、安全で健康的な職場に対する労働者の権利を支援するための重要な文書であり、健康的で安全、よく適応された労働環境を求めている労働安全衛生枠組み条約と欧州社会的権利の柱の基本原則である。さらに、ガイドラインは、最近採択された暴力及びハラスメントに関する第190号ILO条約を補完するものでもある。

ガイドラインは、プロセス全体を通じて、様々な部門の国の社会パートナーの平等な関与によって、ボトムアップ・アプローチでつくりあげられたものである。このアプローチは、欧州経済領域内での諸原則の効果的採用と実施を支援してきた各国の社会パートナーの間に自分たちのものであるという意識を生み出した。

過去数年間、各国の社会パートナーは、ガイドラインを積極的に活用するとともに、促進してきた。これはあらためて、彼らがガイドラインを自分たちのものだと思う意識と、以下を含む、適切な方針枠組みを生み出すための彼らの関与を示すものである。

  • 進行中の関係者との情報交換及び協議
  • 第三者暴力及びハラスメントの明確な定義
  • リスクアセスメントに基づいた方針
  • 暴力及びハラスメントに反対する方針並びにフォローアップ措置に関する、顧客や利用者に向けた適切な情報
  • 管理者及び労働者のための適切なトレーニング
  • TPVの申し立てを監視、調査及び対応する明確な手順
  • TPVに曝露した労働者に対する支援に関する方針
  • 労働者による事象の報告に関する要求事項及び当該労働者を保護するためにとられる措置
  • どのような場合に申し立てを行うのが適切かに関する方針
  • 監視のための事実及び件数の記録のための透明かつ効果的な手順

署名団体は、国の社会パートナーによる多部門ガイドラインの活用について分析するとともに、改訂のための可能性のある勧告を導き出すために、最初に各々の欧州部門別社会対話委員会の枠組みのなかでフォローアップ活動を行い、次いで2013年に共同フォローアップを実施した。

過去数年間の進展にもかかわらず、いくつかの部門とEU加盟国では、TPV及びハラスメントの増加が報告されてきた。いくつかの署名団体及び他の関心をもつ部門別社会パートナーらは現在、とりわけさらなる勧告をまとめるという観点からガイドラインを評価することを意図して、EUの資金提供によるプロジェクトの提案を起草しているところである。

今日まで、ガイドラインは、多部門の欧州部門別社会対話委員会によって署名された唯一の文書であり、欧州部門別社会対話の重要な成果のひとつと考えられている。

本日、ガイドラインの署名団体は、欧州社会的権利の柱のイニシアティブの文脈においても、各部門が、労働と関連した第三者暴力及びハラスメントへの対処を継続するとともに、近いうちに、各職場が狙いを絞った結果志向型の方針をもっているようにすることを、再確認するものである。

https://www.epsu.org/article/joint-statement-10th-anniversary-multi-sectoral-guidelines-tackle-third-party-violence-and

「労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための多部門ガイドラインのフォローアップ及び実施に関する共同報告」/2013年11月21日

1. はじめに

2010年7月16日、商業、民間警備業、地方政府、教育・病院部門の社会パートナーを代表する、欧州公務労連(EPSU)、UNIグローバルユニオン欧州(UNI europa)、欧州労働組合教育委員会(ETUCE)、欧州病院医療事業者協会(HOSPEEM)、欧州地方自治体会議(CEMR)、欧州教育事業者協会(EFEE)、欧州卸売・小売・国際貿易事業者協会(EuroCommerce)、欧州防犯事業者協会(CoESS)は、労働における第三者暴力及びハラスメントに対処するための多部門ガイドラインに合意した。

このガイドラインは、第三者暴力に関する調査結果が、事例紹介及び共同の結論とともに発表された、2008年3月及び2009年10月に[欧州]委員会の支援を受けて開催された2回の主要な会議を踏まえて策定されたものである。したがって、このガイドラインは、それらのイニシアティブのうえに構築されたものであり、また、2007年4月26日の労働におけるハラスメント及び暴力に関する多部門枠組み合意を補完するものであった。

ガイドラインの目的は、各職場が、第三者暴力に対処する結果志向型の方針をもつようにすることである。ガイドラインは、問題を低減、予防及び緩和するために、使用者、労働者、労働者代表/労働組合がとることのできる現実的なステップを設定している。このステップは、われわれの部門におけるベストプラクティスを反映しており、より特定した及び/または追加の措置によって補完することができるものである。

合意に署名したパートナーは、ガイドラインをフォローアップするために様々な活動を行った。英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語版が用意された-共同アンケート用紙が、EPSU、HOSPEEM及びCEMRの傘下組織に配布された。このアンケート用紙の目的は、社会パートナーによる多部門ガイドラインのフォローアップと活用に関する情報を収集するとともに、[ガイドライン]改訂のための可能性のある勧告を導き出すこと等であった。ETUCEとEFEEは、教育部門における関係者の間でこの問題に対する認識をさらに高めるためのプロジェクトを実施するとともに、教育部門のための具体的かつ現実的なステップを提供した、共同実施ガイドを作成した。したがって、本フォローアップ報告書は、地方政府、病院、教育、民間警備業と商業を対象にしている。

本報告書は、傘下組織にアンケート用紙が配布された部門で回収された回答を要約する。それは、尋ねた質問に沿って構成されている。アンケート用紙は配布されなかったが、欧州共同社会パートナーが資金提供したプロジェクトのフォローアップとして行った部門の方針も報告書に含められている。
2013年9月4日に、労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための多部門ガイドラインのフォローアップについて議論する多部門会議が開催され、報告書の全部門の署名団体が出席して、ガイドラインの実施をフォローアップするための共同勧告を策定した。

2.第三者暴力の主な事実と傾向

第三者暴力(TPV:Third Party Violence)、より厳密には労働に関連した暴力の事例は、懸念される現象である。様々な調査によれば、全労働者の2%から最大で23%がすでにTPVの対象になったことがある。この数字は、一般市民と直接接触する労働者のみを対象とした調査では、42%にまで上昇する。一般市民との接触がもっとも多い部門に女性が集中しているために、女性は男性よりもTPVに直面することが多い。

第三者暴力の割合は、EU諸国の間で大きく異なっており、第三者暴力について公式の定義をもっている国はわずかしかない。第三者暴力のリスクがもっとも高い部門のひとつは教育であり、とりわけ学校での暴力事象は、教師や学校職員の労働環境に有害な影響を及ぼし、教育や若者の学習の質に支障をきたすことから、憂慮すべきことである。

教育現場でのTPVの事例は、TPVが個人の健康と尊厳を損なうだけでなく、職場からの欠勤、モラルや職員の離職などについて、経済的にも現実的影響をもたらすことを示している。欧州労働安全衛生機関は最近の報告書のなかで、「多くの情報が利用可能になってはいるものの、なお、身体的な暴力だけでなく、言葉による、また言葉によらない暴力や脅迫がもたらす深刻で有害な結果についての知識、より高い認識、そしてそれらに対処するための可能な方法が求められている」と結論付けている。なぜなら、職場での暴力に対処するためのよく練られた戦略をもっている国でさえ、TPVの現象が認識されず、注目されないことが多いからである。

3.TPVに関するガイドラインを実施するプロジェクトのいくつかの事例-国及び欧州のプロジェクト

3.1 全部門のガイドライン署名団体による国[レベル]の事例

アンケート調査に対する回答から、以下の事例に注目することができる。

  • チェコ共和国(地方政府):TPVが関わる状況を想定した労働者教育を目的としたトレーニングプロジェクトで、ガイドラインが活用されている。プロジェクトは、ノルウェーからの資金協力を得て、「ノルウェー助成金」プログラム「ディーセントな労働と[政労使]三者対話」のもとで実施されている。
  • デンマーク(地方政府):2011年1月にDanish Regions(デンマーク地方自治体協議会)と他の2つの公共部門の社会パートナーは、「ハラスメント及び暴力の回避-デンマークの地方自治体・地域の職場」という出版物を出版した(デンマーク語・英語で入手可能)。この出版物は、地域・地方自治体の職場におけるハラスメント及び暴力を予防、把握及び管理するためのデンマークのアプローチについて説明している。出版物に示された事例は、デンマークの社会パートナーによってどのように協定がつくられ、実践されているかを示している。地域・地方自治体の職場は、これらの事例を提供するとともに、出版物の作成過程に密接に関わった。さらに、そのプロセスのなかで、5つの地域の人事部門の責任者に出版物の情報が提供されるとともに、要請に応じて出版物が配布された。
  • デンマーク(商業):「小売業労働安全衛生委員会」とともに「デンマーク商工会議所」は、職場に対するガイドラインとこの領域における政治への提案を書いた、ショートフィルムを作成した。
  • フィンランド(病院):2011年に、フィンランド語で「Ala riko hoitajaasi」、英語で「あなたの世話をする人を壊すな」と呼ぶキャンペーンが開始された。このキャンペーンは2012年に評価が行われている。
  • フランス(商業):Carrefour(カルフール)スーパーマーケットも2009年5月に労働安全衛生に関する協定を締結し、同社が、モラルハラスメントやセクシャルハラスメントと闘い、攻撃や暴力的対応の被害を受けた労働者を支援することを約束した。2012年7月には心理学的援助を提供するユニットが開設された。フランスの全労働者が、自宅に届けられた手紙でこれを知らされた。
  • ドイツ(商業):HSE社は、社会パートナーが商業法定労災保険機関のワーキンググループで作成した、非常に優れたツールキットをもっている。それは、企業のためのチェックリストを提供し、セミナー、ビデオ、遠隔教育のコンセプト、及び商業法定労災保険機関のスタッフによる企業への支援によって構成されている。
  • イタリア(商業/民間警備業):Confocommercio社は、2010年にミラノで「Vademecum per la sicurezza delle imprese commerciali」を発表し、関係する地方当局及び警察と常に協力関係のある他の地方機関とともに2012年2月にパドヴァ市で開催された記者会見の場で配布した。出版が計画されている。
  • ポーランド(教育):ETUCE/EFEEがポーランドの2つの学校を訪問してまとめた事例報告は、保護者、ソーシャルサービスや学校と関係のある心理学者との良好な関係を築くことによって、予防対策を開始することができることを示している。具体的な対策をもった暴力及びハラスメントに対処するための方針文書は、TPVへの対処にも役立つ可能性がある。ひとつの学校では、第三者暴力を含めた、学校における様々な種類の暴力に対する認識を高めるためには、生徒と教師両方のための、サイバー・ハラスメントの予防に関するワークショップが開催された。
  • スペイン(教育):学校における共存(conviven-cia)に関する政府指令によれば、スペインの学校は、地域/学校レベルのプロジェクトでTPVの問題に取り組んでいる。スペインの学校におけるETUCE/ EFFEの事例報告は、教師と教育コミュニティによって開始された特別なイニシアティブが暴力の予防に役立つ可能性があることを示している。調査した学校では、教師、生徒と保護者が、保護者会、警察や地元の教育・社会機関などの学校外の関係者と緊密に連携している。様々な関係者が協力してこの問題に取り組むことで、学校社会とその環境に、第三者暴力は容認されないという強いメッセージを発信している。
  • スウェーデン:社会パートナーによる分野横断的プロジェクトが実施された。「怖がるよりもよりよい準備を」という標語のもとで、このプロジェクトは、暴力や脅迫を予防及び制限するための職場に役立つツールを開発した。
  • スウェーデン(商業):商業労働者連合はそのカウンターパートと協力して、警察と協力して店舗をより安全にするために、安全に関する双方向のe-ラーニング(http://www.sakeributik.se/)と13の項目/要求をもつ安全証明書プログラムを実施した。学校における地方プロジェクトは、ETUCEとEFFEによる事例報告で示されたように、TPVを減少させるのに役立ってきた。TPVに取り組んでいる高校は、教師-生徒の関係を改善し、学校における雰囲気を変えるベストプラクティスを開発し、教師のために学校を労働者でいる魅力的な場所にすることによって、利益を得ている。ある学校は、生徒たちに教室の以外で教師に接する機会を与える、様々な文化、教育及びスポーツ・プログラムを行うユースセンターとして機能するとともに、教師が、学校以外の場で生徒の資質を知ることができるようにしている。

3.2 教育部門における欧州プロジェクト

教育部門でTPVに対処するために、教育部門の社会パートナーは、教育部門における第三者暴力及びハラスメントの予防及び低減に関する社会パートナーの取り組みを反映させた、実施の手引きを作成し、それに基づいて欧州、国及び地方レベルにおけるさらなる共同の取り組みが策定される予定である。実施の手引きは、ETUCEとEFFEの双方の代表が積極的に貢献したプロジェクト活動の結果に基づくものである。

この文書は、教育部門のための第三者暴力及びハラスメントの定義を示すとともに、学校、教育部門の社会パートナー、その他教育関係者に、学校における第三者暴力及びハラスメントの予防及び低減に関するグッドプラクティスの具体的かつ実践的な勧告を提供して、労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための多部門ガイドラインの実施を支援するものである。

もっとも重要なことは、この手引きは、第三者による暴力及びハラスメントの発生を根絶及び緩和するとともに、第三者暴力及びハラスメントを助長する構造を取り除くための予防的ツールとみなすべきであるということである。

手引きは、学校における第三者暴力及びハラスメントを予防及び緩和するうえでとる6つのステップを挙げている。

ステップ1:現状確認-状況を理解することによって開始する
ステップ2:協力-適切かつ明確に示される対策を確立する
ステップ3:グッドプラクティスの促進
ステップ4:事象の報告-いつどのように支援を求めればよいかを知る
ステップ5:初回及び継続的トレーニング
ステップ6:監視とフォローアップ

教育部門の社会パートナーによる実施の手引きは、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語で入手することができる。

3.3 民間警備部門における欧州プロジェクト

  • UNI欧州とCoESSによる労働関連第三者暴力及びハラスメントに対処するための多部門ガイドラインの主な実施が、共同EU-OSHA(欧州労働安全衛生機関)プロジェクト:OIRAツールを通じて実施された。
  • OIRAは、「オンライン・インタラクティブ・リスクアセスメント」の略で、企業がその事業(われわれの場合は民間警備サービス)に関連した特定のリスクを把握できるようにするツールである。
  • OIRAは、以下のことを目的としている。
    ・「リスクアセスメントを促進するためのシンプルなツールの開発」(2007~2012年共同体戦略)に貢献する。
    ・企業がリスクアセスメント・プロセスを実施するのを助ける実践的ツールを開発及び促進する。
    ・企業におけるリスクアセスメント・プロセスの理解を促進する。
  • 欧州企業の特性とニーズに合わせたリスクアセスメント・ツールの開発及び普及に関心のある(EU及び国の)社会パートナー、政府、公的機関のクリティカルマスを構築する。
  • 本報告書が書かれている時点で、われわれは民間警備サービスのためのOIRAツールを最終的に仕上げているところである。EUレベルでツールが完成したら、EU-OSHAの資金援助を受けて、各国のメンバーがそれを国レベルに翻訳することができるようになる。
  • 民間警備サービスのためのOIRAツールは、以下の6つのモジュールで構成される。
    ・一般モジュール:労働安全衛生(OSH)マネジメント
    ・モジュール:民間対人警備
    ・モジュール:警報後の機動的なパトロール/介入
    ・モジュール:イベント警備
    ・モジュール:空港警備
    ・モジュール:海上警備
  • 労働関連第三者暴力に対処するための多部門ガイドラインは、モジュール:民間対人警備に統合されている。このモジュールは、5つのサブモジュールからなり、暴力に関連するリスクアセスメントは、そのうち以下の2つのサブモジュールに組み込まれている。
    ・サブモジュール:「物理的及び心理的作業負荷」
    ・サブモジュール:「作業組織」
  • 第三者暴力に関連したリスクステートメントは以下のとおりである。
    ・暴力や攻撃に関連したリスクの予防
    説明:民間警備員に対する暴力/攻撃は、様々なかたちで行われる可能性がある。
    - 言葉による暴力:侮辱、脅迫
    - 身体的暴力:なぐられる、または傷つけられる
    - 武器による、または武装しているかのような印象を与えることによる
    このような暴力行為は、身体的傷害を引き起こすだけでなく、(恐怖感や心的外傷後ストレスなど)民間警備員の心理的な健康にも悪影響を及ぼす可能性がある。暴力行為を目撃した民間警備員は、心理的なトラウマにも悩まされる可能性もある。
    一般市民との接触をともなう警備業務(例えば、ショッピングセンターや、鉄道・地下鉄の駅などの人の往来が激しい場所での監視、万引きの発見など)は、身体的暴力に曝露する可能性が高い。
    以下の点をチェック(必要な場合には顧客との合意の上で)
    - 既存のすべての安全対策が考慮されなければならない(コード化されたドア、ボルトで固定されたエントリー、カメラ…)
    - 問題が生じた場合に迅速な連絡が可能でなければならない(電話、ラジオ、アラームボタン、等)
    - 一人で働く民間警備員の数は最小限にとどめ、それが不可能な場合には、労働者が本部と常時連絡する手段が確保されなければならない。
    - スタッフは、紛争状況に対処するためのトレーニングを受けていなければならない。
    - 事象後のケアが提供されなければならない。
    ・ いじめやセクシャルハラスメントに関連したリスクの予防
    説明:職場におけるいじめ((https://osha.europa.eu/en/publications/factsheets/23/[EU-OSHAファクトシート23-労働におけるいじめ])とは、「健康と安全に対するリスクにつながる、一人の労働者または民間警備員グループに対する異常な反復的行為であり、(…)言葉による攻撃や物理的な攻撃だけでなく、労働者の仕事を過小評価したり、社会的に孤立させたりするなど、より微妙な行為によって現われる可能性もある」とされている。いじめの事例としては、悪意のある噂を流したり、不当な扱いをしたり、誰かをいじめたりなどが挙げられ、…面と向かって行われることもあれば、手紙、電子メール、電話による場合もある。
    セクシャルハラスメントとは、「個人の個人的尊厳を害する目的または効果をもって、言葉により、または言葉以外により、性的な意味合いをもつ望まない行為が生じる、より具体的には、威圧的、敵対的、下劣的、屈辱的または侮蔑的な環境を作り出す状況」をさす。セクシャルハラスメントは圧倒的に女性に影響を及ぼすが、男性もこの種のハラスメントの被害者になる可能性がある。
    以下の点をチェック(必要な場合には顧客との合意の上で)
    -「暴力は、どのようなかたちであれ、受け入れられないし、容認されない」という明確なメッセージを、潜在的な加害者及び被害者に対して送らなければならない。
    - ヒエラルキーにしたがった責任及び役割を明確にしなければならない。
    - 事実は至急かつ公平に調査されなければならない。
    - 申し立てが報復につながってはならない。被害者と加害者双方の匿名性が維持されなければならない。
    - 被害者への対応や支援提供の「フロントライン」を担当する、一人または複数の信頼できる人物が指名されなければならない。
    - 民間警備員は、リスク及びとられるべき予防措置(報告手続、信頼できる人物…)について情報を提供され、トレーニングを受けられなければならない。
    ・ 一人作業の危険性に関連した安全衛生の管理
    説明:一人作業民間警備員とは、一般的には一人で仕事をしなければならない小規模な場所で、直接または近接した監督なしに、一人で働く者のことである。
    一人作業に関連したリスクは、嫌がらせ/攻撃を受けること、事故や病気ですぐに介入する必要があること、緊急事態や不測の事態に正しく対処することが難しいことがある。
    一人作業は欧州指令によって禁止されてはいないものの、原則として、関連する危険性の事前分析の対象であるべきである。
    この分析の過程で、重大な健康安全にかかわる危険性が確認される場合には、一人作業は最小限に抑えられなければならない。
    逆に、可能であると分析された場合には、警備員は、安全に健康上問題なく仕事をできるようにするために、必要なすべてのツールが与えられなければならない。
    OIRAツールでは、こうしたリスクに対処するため、ツールの利用者に、いくつかの解決策が提供されるとともに、ガイドラインが作成される。

4.地方政府、病院及び商業部門における回答の要約と概観

誰が回答したか?

2013年7月18日の締め切りまでに、地方・地域政府、保険・社会サービス及び商業部門別に38の回答が寄せられた。

使用者と労働組合による共同回答-1、スウェーデン(LRG+HSS)

EPSU傘下組織による回答-14、オーストリア(LRG+HSS)、LRG(デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、トルコ)、HSS(ベルギー、ブルガリア、チェコ共和国、フィンランド、アイルランド、ラトビア、オランダ、イギリス)

HOSPEEM傘下組織による回答-3、フランス、ラトビア、オランダ

CEMR傘下組織による回答-7、ベルギー、デンマーク、エストニア、フィンランド、ドイツ、ノルウェー、イギリス-スコットランド

Euro-Commerce傘下組織による回答-9、オーストリア、デンマーク、エストニア、フランス(Carrefour)、ドイツ、イタリア、マルタ、ポルトガル、スペイン

UNI欧州傘下組織による回答-4、オーストリア、チェコ共和国、フィンランド、スウェーデン

範囲:地理的には、スカンジナビア及びバルト諸国をよくカバーしている。西欧、中欧もほぼカバーしている。中東欧諸国と地中海沿岸諸国からの回答は一部にとどまった。

多部門ガイドラインの普及に関する欧州プロジェクトに参加したのは誰か?このイベントが参加者にとって有用だった場所はどこか?

回答した38団体のうち22団体が、3回のうち少なくとも1回のワークショップ(ローマ、ロンドン、パリで開催)、または最終会議(ワルシャワ)に参加した。参加した団体のほとんどが、イベントの有用性に明確に言及した。

イニシアティブに関する情報は組織内に広まったか?

回答したほとんどの団体が、イニシアティブとガイドラインに関する情報を組織内で広めたと回答した。これは主に、ニュースレターやメール、特別な出版物を通じて行われた。

いくつかの国では、回答者は、組織内で情報を普及させるためにさらなる取り組みを行っていると回答した。

- トレーニング、会議、セミナー(フィンランド、ドイツ、スウェーデン)

ひとつの事例では、ガイドラインが「不完全」と判断されて、その普及がなされなかった(ベルギー)。

ガイドラインの実施は社会パートナー間の関係にどのような影響を与えたか?

ガイドラインの実施は、両部門で第三者暴力を社会パートナーの課題にするとともに、労働関連暴力という特別の問題を促進するのに役立った。

回答に基づけば、多くの国で社会パートナーの関係は過去も現在も良好であり、2か国(ブルガリアとチェコ共和国)では、本ガイドラインの実施が社会パートナーの関係にとりわけよい影響を与えた。

実施している間の他の関係する部門との協力は?

  • 他の部門の社会パートナー(オーストリア、ベルギー、フィンランド、フランス、ノルウェー、イギリス-スコットランド、スウェーデン、イギリス、デンマーク、イタリア、マルタ)
  • 労働安全衛生の二者機関(フィンランド)
  • 労働安全衛生の三者機関(アイルランド)

実施に関連した主な困難は何だったか?

ガイドラインを実施するにあたって、以下の問題が報告された。

  • 翻訳の欠如(ベルギー:フランダース)
  • 社会的対話の未発達(エストニア)
  • 必要な措置に投資する意思の欠如-例えば、ジョブセンターの内装の変更(ドイツ)
  • 資源の欠如(マルタ)

どのようにガイドラインを実施したか?

以下を通じてガイドラインを実施

  • 会議、セミナー(オーストリア、ベルギー、ドイツ)
  • トレーニングプロジェクト(チェコ共和国、ドイツ、フランス)
  • 部門内協約(デンマーク)
  • 社会パートナーによって計画されたプロジェクト(エストニア、ポーランド、ブルガリア、リトアニア、イタリア)
  • 社会パートナーによる共同セミナー/プロジェクト(フィンランド、ラトビア、オランダ、イギリス)
  • キャンペーン(フィンランド)

スコットランドでは、ガイドラインに沿ったプロジェクトが、多部門ガイドラインが実施される前に行われていた。

TPV問題に対処する際に生じた困難は何だったか?

回答のなかで以下の問題/困難が挙げられた。

  • 公衆保健サービスの絶え間ない改革が、TPV問題に対処するのを困難にした(ブルガリア)
  • TPVが、保険・社会部門でまだ「普通」のこととして認識されている(チェコ共和国、ラトビア)
  • 社会パートナーによる取り組みがTPVの問題に対処するには十分に具体的ではない(フィンランド)
  • 公共費用の削減が重要な問題としてTPVに対処するのを困難にしている(アイルランド、ラトビア)
  • 労働安全衛生に対する不十分な資金提供(ラトビア)
  • 非公共部門で社会パートナーを把握する問題(スウェーデン)
  • ガイドラインが包括的なものにとどまっており、より具体的な合意が必要(イギリス)

社会パートナーはガイドラインの合意を超えて協定を締結すべきか?

この質問は地方・地域政府部門だけを対象にしていた。

  • この質問に回答したEPSUの傘下組織は、さらなる取り組みを歓迎するだろう(オーストリア、ベルギー、デンマーク、ドイツ、トルコ)
  • CEMRの傘下組織は、彼らの場合には合意と国の法令で十分であり、実施が強調されるべきだと回答した(ベルギー、エストニア、ドイツ、ノルウェー)
  • 共同回答のなかでスウェーデンの社会パートナーは、ガイドラインによって与えられた明確なステートメントについて強調したが、さらなる動きを除外はしていない。

5.さらなるステップのための勧告

最後の質問に対する回答が示しているように、今後どうすべきかについて、アンケートからは明確な答えがない。研究報告(すなわち上述のEU-OSHA報告)及びアンケートに対するいくつかの回答は、TPVに対処するためのさらなる行動の必要性を強調している。これを職場レベルで実施すべきか、または、国またはEUレベルにおける可能な法的イニシアティブを伴うべきかについては、まだ決定されていない。

9月4日の会議に参加した多部門イニシアティブの社会パートナーは、以下の課題及び2013年以降のさらなるステップに向けた勧告について議論した。

課 題

  • 第三者暴力は、第三者暴力に対処するための多部門イニシアティブにおいて明確に定義されているものの、この概念が十分に理解されておらず、使用者と労働者の間の職場暴力と混同されている場合もある。そのため、言語でこの概念を伝えることが困難な場合もあり、これは部門によっても異なるかもしれない。
  • それゆえ、社会における第三者暴力に対する認識の不十分さに、この問題に関する具体的な情報提供を通じて対処する必要がある。
  • 発生した事象の報告が少ないことが依然として最大の課題のひとつであり、とりわけ第三者暴力についての認識と理解の不十分さと関係している。
  • 緊縮財政措置が、人員削減やリストラのために、公共サービス労働者が第三者暴力に曝露する可能性を促進する傾向がある。そのため、事象が生じてから事後対策を講じるのではなく、より予防的な対策を講じることが必要である。
  • 現在の欧州委員会のインフラでは、当面、多部門イニシアティブへの資金提供は不可能である。

社会パートナーの共同勧告

  • 現在の国別の観測に欧州的な側面を加えるために、ETUI(欧州労働組合研究所)などの研究機関に、さらなる実施報告書の作成を委託する。
  • 第三者暴力からの保護を実施するために、地域的な背景も考慮しながら、ほとんどの場合、この問題が新しく適切なものであるEU13か国において、より焦点を絞ったアプローチを行う。
  • 例えば、運輸、中央政府や他の関心のある部門など、他の部門に働きかけ、対象となる職場を広げる。
  • 第三者暴力の防止に関する社会パートナーの合意は、何らかの交渉を開始するために社会パートナーの間のコンセンサスが得られれば、ガイドラインをより厳格に実施するためのさらなるステップになり得る。
  • ガイドラインを実施するために、欧州委員会の財政的支援を受けて、地方、地域及び国レベルの社会パートナーの傘下組織を対象としたさらなるプロジェクト、会議やトレーニングを検討すべきである。
  • 国レベルのプロジェクトに欧州社会基金から財政的支援を受けられる可能性がある。
  • 多部門ガイドラインの実施は、ガイドラインに署名した各社会対話委員会の部門別社会対話活動プログラムの不可欠の一部となるべきである。

https://www.epsu.org/sites/default/files/article/files/Report-Follow-Up-Multisectoral-Guidelines-TPV-ALL-SECTORS-FINAL-22-11-13.pdf

[編注]欧州労使団体は2021年2月から2023年3月に「労働に関連した第三者暴力及びハラスメントの予防における社会的パートナーの役割に関する多部門プロジェクト」に取り組んでおり、次のステップに進むことが期待されている。

「労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための多部門ガイドライン」2010年9月30日

欧州公務労連(EPSU)、UNIグローバルユニオン欧州(UNI europa)、欧州労働組合教育委員会(ETUCE)、欧州病院医療事業者協会(HOSPEEM)、欧州地方自治体会議(CEMR)、欧州教育事業者協会(EFEE)、欧州卸売・小売・国際貿易事業者協会(EuroCommerce)、欧州防犯事業者協会(CoESS)

(I) はじめに

  1. 本ガイドラインの目的は、個々の職場が、第三者暴力の問題に対処するための結果志向型の方針をもつようにすることである。本ガイドラインは、問題を低減、予防及び緩和するために、使用者、労働者、労働者代表/労働組合がとることのできる現実的なステップを設定している。このステップは、われわれの部門において開発されたベストプラクティスを反映しており、より特定した及び/または追加の措置によって補完することができる。
  2. EU及び各国の法律1によって、使用者及び労働者双方は、安全衛生の領域における義務を負っている。労働に関連したすべての側面において労働者の安全衛生を確保する義務が使用者にあるが1、労働者もまた、使用者によって与えられるトレーニング及び指示にしたがって、自らの安全衛生及び労働における彼らの活動によって影響を受ける他の者の安全衛生に可能な限り注意する責任を負っている。使用者はまた、労働者及び/または労働者代表と協議し、彼らが労働における安全衛生に関連したすべての問題に参加できるようにする義務を負っている。これは、実際に、安全衛生への共同アプローチがもっとも首尾よくいくという認識を反映するものである。
  3. 署名した、地方及び地域政府、医療福祉、商業、民間部門、教育部門の社会パートナーは、それが個々人の健康及び尊厳を傷つけるだけでなく、欠勤、モラル、労働者の転職に関してきわめて現実的な経済的影響ももっていることから、労働者に対する第三者暴力の影響についてますます懸念している。第三者暴力はまた、危険なまた一般の人々やサービス利用者をぎょっとさせるような環境をつくりだす可能性もあり、それゆえ社会に対して大きな否定的インパクトをもっている。
  4. 労働関連第三者暴力及びハラスメントは、多くの形態をもつ場合がある。それは以下である可能性がある。
    a) 身体的、精神的、口頭によるもの及び/または性的なものである。
    b) 個人または集団による一度限りの事象またはより系統的な行為のパターンである。
    c) 依頼人、顧客、患者、サービス利用者、生徒または親、一般の人、またはサービス提供者の行動または行為から生じる。
    d) 失礼な事例から、より深刻な脅迫や身体的攻撃にまで及ぶ。
    e) メンタルヘルス問題から、及び/または、感情的理由、個人的好き嫌い、ジェンダー、人種/民族、宗教や信念、障害、年齢、性的指向または身体のイメージにもとづく偏見に動機づけられて生じる。
    f) 組織されたまたは機会的なものかもしれず、また公的機関による介入を必要とするかもしれない、労働者及び彼/彼女の評判または労働者や顧客の財産を狙った刑事犯罪を構成する。
    g) 被害者の個性、尊厳及び人格に深い影響を与える。
    h) 職場、公共の場所または私的な環境で起こり、かつ、労働に関連している。
    i) 幅広い情報及びコミュニケーション技術を通じたサイバーいじめ/サイバー・ハラスメントとして起こる。
  5. 第三者暴力の問題は、特別のアプローチを正当とするのに、職場における(同僚間における)暴力及びハラスメントの問題とは十分に区別されるものであり、また、労働者の安全衛生に対するその影響及び経済的影響に関して十分に著しいものである。
  6. 様々な職業及び職場において労働者が直面している第三者暴力に関して部門間及び組織間の相違はあるものの、グッドプラクティスの主要な要素及びそれに取り組むステップはあらゆる労働環境に対して共通である。これらの要素は、パートナーシップ・アプローチ、明確な定義、リスクアセスメントを通じた予防、注意の喚起、トレーニング、明確な報告及びフォローアップ、適切な評価である。
  7. 欧州委員会の支援のもと多部門社会パートナーは、2008年3月14日及び2009年10月22日にブリュッセルで2回の大きな会議を開催し、そこでは事例研究及び共同の結論とともに、使用者及び労働組合の第三者暴力に関する調査結果が発表された。本ガイドラインは、こうしたイニシアティブのうえに構築された。部門をまたがった2007年4月26日のハラスメント及び暴力に関する枠組み協定を補完するものである。
  8. 特定のサービスが組織及び提供される方法は、国、地域及び地方の状況を反映している。社会パートナーが本ガイドラインに設定された諸措置をすでに実施しているところでは、とられる行動はなしとげられた進展を報告することになるだろう。
  9. 多部門社会パートナーは、使用者及び労働者は、お互いはもちろん、第三者に対しても職業上、倫理的及び法的義務を負っていることを理解している。

(II) 目 的

  1. 本ガイドラインの目的は、第三者暴力及びその結果を予防、低減及び緩和するための使用者、労働者及び労働者代表/労働組合による取り組みを支援することである。
  2. 多部門社会パートナーは、労働関連ハラスメント及び/または第三者暴力の予防及び管理が、多くの職場においてまだこれから発展させるべきものであることを認識する。それらの措置は以下のことをすべきである。
    a) 第三者暴力の問題についての使用者、労働者、労働者代表及び他の公的機関(例えば安全衛生機関、警察など)の認識及び理解を高める。
    b) 労働者の健康及び福祉、病気休業及び生産性に対する影響を低減するため、ハラスメント及び/または第三者による暴力の問題の予防及び管理をお互いに助けるために、協力及び経験及びグッドプラクティスを共有する社会パートナーの関与を示す。
    c) 労働関連ハラスメント及び第三者による暴力の問題を把握、予防、管理及び対処するためのガイドラインを、すべてのレベルにおいて、使用者、労働者及び労働者代表に提供する。

(III) 労働関連ハラスメント及び第三者による暴力を把握、予防、低減及び緩和するステップ

  1. 第三者ハラスメント及び/または暴力が起こる可能性は、使用者、労働者及びサービス利用者の注意喚起及び管理者と労働者が適切な手引きとトレーニングを受けることを通じて、低減することができる。
  2. 暴力に対処するためのもっとも成功するイニシアティブは、非常に当初から社会パートナーが関与し、予防及びトレーニングに対する注意喚起から、報告の方法、被害者への支援、評価及び継続的な改善まで、あらゆる側面をカバーした「全体的」アプローチを伴うものである。
  3. 使用者は、その一般的安全衛生方針に組み入れた、第三者によるハラスメント及び暴力の予防及び管理についての明瞭な方針の枠組みをもつべきである。その方針は、国の法令、労働協約及び/または慣行にしたがって、労働者及び労働者代表と協議して、使用者が策定すべきである。とりわけ職場の安全衛生リスクアセスメント及び個々人の職務権限を、第三者によって引き起こされるリスクの対策志向型アセスメントに含めるべきである。
  4. 第三者暴力の多面的性格は、方針が個々の労働環境にあつらえたものでなければならないことを意味している。グッドプラクティスの問題として、経験及び法令、技術、その他における関連した進歩を考慮に入れるために、方針は定期的に見直され続けられるべきである。時が経つにつれて、調査研究、経験及び技術的進歩が、現在利用可能なものよりもすぐれた解決策を提供するだろう。
  5. とりわけ、以下の要素によって、労働者のための適切な方針の枠組みが補強される。
    a) すべての段階における、管理者、労働者及び労働者代表/労働組合への継続的な情報提供及び協議
    b) とる可能性のある様々な形態の事例をつけた、第三者暴力及び/またはハラスメントの明確な定義
    c) 労働者に対するハラスメント及び暴力は容認されず、適当な場合には法的手段がとられることを示した、依頼人、顧客、サービス利用者、一般の人々、生徒、家族及び/または患者に対する適切な情報提供
    d) 例えば以下のような、様々な職務、場所及び労働慣行を考慮に入れることができ、可能性のある問題の把握及び適切な対応の立案を可能にするリスクアセスメントに基づいた方針
    ・ 依頼者/顧客/サービス利用者/生徒及び親が期待すべきサービスの性質とレベルに関する明瞭な情報、及び、第三者が苦情を申し立て、苦情が調査される手続の提供によって期待を管理する。
    ・ 職場の設計により安全な環境を組み入れる。
    ・ 例えば、意思疎通のチャンネル、監視、保安措置など、労働者の安全を守るための適切な「ツール」を提供する。
    ・ 警察、司法、社会サービス及び監督官などの関係公的機関との間の協力協定
    e) 職務及び労働環境に関係した安全一般を含めた、また衝突を回避または管理する技術などのより特別なスキルを組み入れる場合もある、経営陣及び労働者の適切なトレーニング
    f) 第三者によるハラスメント及び/または暴力の申し立てを監視及び調査し、被害者に関連するすべての調査及び対策の進展を知らせる手順
    g) 例えば、また状況によっては、(心理的を含めた)医学的、法的、実質的及び/または(法定の義務を超えてカバーする付加保険など)金銭的な支援を含む場合がある、第三者によるハラスメント及び/または暴力に曝露した労働者に与えられるべき支援に関する明確な方針
    h) 労働者による事象の報告、及び、可能性のある報復から労働者を守り、国の慣行及び手続にしたがって、他の人々、例えば警察、安全衛生当局などの機関に伝えるためにとられる措置に関する明瞭な要求事項
    i) 個人の尊厳、秘密性、法的義務及び情報保護の原則を尊重しつつ、苦情を申し立て、犯罪を報告し、または、第三者暴力の加害者に関する情報を他の労働者及び公的機関に知らせる適切な時期に関する明確な方針
    j) 施行された方針の監視及び確実にフォローアップするために詳細な事実を記録するための透明かつ効果的な手順
    k)方針の枠組みが経営陣、労働者及び第三者によく知られ、理解されているようにするための措置
  6. これに関連して、多部門社会パートナーは、首尾一貫した方針アプローチをもつことによって、暴力及びハラスメントを把握及び予防するために、国または地域レベルにおいて、他の適当なパートナーらと協力することの重要性を強調する。

(IV) 実行及び次のステップ

本ガイドラインの実行及びフォローアップは、3つのステージからなる。

ステージ1-参加及び普及

署名した社会パートナーは、本ガイドラインを普及し、上述(III)で確認された方針の枠組みを使って、第三者ハラスメント及び暴力の問題を評価及び対処する措置を講じる。

  • 共同で欧州委員会に対して、2011年末より前に開催するべきワークショップを含め、本ガイドラインを普及及び促進するプロジェクトを支援することを要請する。
  • 共同及び/または別々の取り組みを通じて、国の慣行を考慮しつつ、あらゆる適当なレベルにおいて、加盟各国において本ガイドラインのプロモーションを促進する。

検討されている問題に対する関心をふまえて、社会パートナーはまた、欧州及び各国レベルにおけるすべての関係者に本文書を届ける。また、本ガイドラインを活用するよう、EU以外のメンバーにも働きかける。

ステージ2-注意喚起

各国の社会パートナーは、第三者ハラスメント及び暴力の問題を宣伝し、各々の部門におけるこの分野のグッドプラクティスを開発及び共有する。これには、加盟各国における第三者暴力の減少に関する知識及び経験の現状に対して適当なあらゆる手段を含め、また、以下の可能性を含むこの分野においてすでに行われている取り組みを考慮するかもしれない。

  • 今後の調査研究
  • 出版物
  • グッドプラクティス及び/または問題解決に向けた取組を共有するための関心のある人々を集めた会議

ステージ3-モニタリング及びフォローアップ

署名した社会パートナーは、以下のことを行う。

  • 2012年に各々の部門別社会対話委員会に進捗報告書を提出し、共同報告書の作成を各部門の欧州社会対話委員会に委託する。
  • 次の欧州社会対話作業計画の策定にあたって、社会パートナーは本ガイドラインを考慮に入れる。
  • 多部門フォローアップ会議を適当なときに開催し、2013年に最終共同評価を行う。

1 EU法には、以下の指令が含まれる。

  • 労働における労働者の安全衛生の改善を促進する措置の導入に関する指令89/391/EEC。第5(4)丈は、「労働における安全衛生の領域における労働者の義務は、使用者責任の原則を冒してはならない」としている。
  • 人種及び民族にかかわりなく人々の均等待遇の原則を実行する2000年6月29日の指令2000/43/EC
  • 雇用及び職業における均等待遇のための一般的枠組みを確立する2000年11月27日の指令2000/78/EC
  • 雇用、職業トレーニング及びプロモーション、及び労働条件へのアクセスに関する男女均等待遇の原則の実施に関する理事会指令76/207/EECを修正する2002年9月23日の指令2002/73/EC

https://ec.europa.eu/social/main.jsp?catId=521&langId=en&agreementId=5175

安全センター情報2022年7月号