20年間『特高圧電気にばく露』配電労働者の甲状腺ガンを無視した裁判所/韓国の労災・安全衛生 2024年06月12日

資料写真/チョン・ギフン記者

20年近く特高圧電気に触れながら活線作業をしてきた配電労働者が甲状腺癌に罹った。彼は労災だと主張した。費用節減と停電時間の短縮などのために、政府が直接活線工法に固執したため、その危険負担は完全に配電労働者が受け取った。電磁波に常時露らされたまま、感電事故の心配による激しいストレスにも苦しんできた。

裁判所は労災ではないとした。直接活線工法と甲状腺ガンの間の因果関係を裏付ける研究が不充分だという勤労福祉公団の主張を認めた。直接活線工法が廃止され、十分な研究が難しい現実に背を向けたという指摘を避けられないものとみられる。

安全より効率重視、危険負担を抱えた配電労働者

ソウル高裁行政部は11日、配電労働者のAさんが勤労福祉公団に提起した療養不承認処分取り消し訴訟で、原告勝訴と判断した原審を取り消し、原告の請求を棄却した。

Aさんは1995年から20年間、配電の電気員として働いた。彼はほとんどの時間を、活線工法を使った2万2900ボルトの特高圧電気が通じている状態の電柱で、送・配電線路の維持・補修をする無停電作業を行った。

配電工事作業の内、停電をしない無停電作業は、活線作業と送電工法を利用した作業の大きく二つに区分される。韓国では1995年から無停電作業が一般化され、その内、電気員が直接充電部で作業を行う直接活線工法が広く利用された。アメリカと日本の場合、電気員の安全のために、スティックを利用した間接活線工法を利用しながら、工法と工具を続けて開発してきたのに較べ、韓国は危険負担が大きい直接活線工法を利用してきたため、配電員の安全問題が長期間指摘されてきた。建設労組などによる電気労働者への持続的な問題提起で、2017年以後からは直接活線工法が廃止され、間接活線工法に転換された。

Aさんが甲状腺乳頭状ガンの診断を受けたのは2015年11月。彼は常時的に超低周波磁場などの電磁波にばく露し、難度の高い作業を行いながら、強迫感と深刻なストレスを受けてきたとして療養給付を申請した。

公団は2020年3月、これを不承認とした。極低周波磁場へのばく露と甲状腺ガンの発生との因果性について、これを裏付ける研究が足りないとし、申請傷病と業務との相当因果関係が認められないと判断した。

「因果関係の推断可能」一審で覆される

一審裁判所はAさんの労災を認めた。ソウル行政裁判所は2022年7月に原告勝訴の判決を行った。

一審は2017年、安全保健公団・産業安全保健研究院の「活線作業者の健康状態と関連実態調査」を引用して、「Aさんが持続的にばく露した極低周波磁場が、Aさんの体質などの他の要因と複合作用して甲状腺ガンを発病させたり、少なくともその発病を促進ないし自然経過以上に弱化させた原因になったと推測できる」と判断した。調査によれば、配電作業者の極低周波磁場へのばく露レベルは、事務職の会社員の26倍、半導体加工・組立工程従事者の約1.78倍、変電所勤務者の約3倍に達する。

また、因果関係を裏付ける研究が足りないという公団の主張に対して一審は、「現在の医学と自然科学のレベルで因果関係の究明が困難だということだけで、因果関係を簡単に否定することはできない」と切り捨てた。現在、直線活線作業が廃止された状況にも言及し、関連の研究が正しく行われていない事情があるということも明確にした。

しかし、二審裁判所は公団の手を挙げた。裁判所は「原審を取り消し、原告の請求を棄却する」と判示した。Aさんは、最高裁への上告を準備している。これまでに10年の歳月が流れた。

2024年6月12日 毎日労働ニュース カン・ソギョン記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=222001