『強制昇進』によるうつ病と自殺・・・裁判所「産業災害だ」/韓国の労災・安全衛生 2024年05月26日

ケッティ・イメージバンク

望まない昇進で発病したうつ病と、これに因る労働者の自殺が裁判所で労災と認定された。成果に対する負担、同僚との不和によって誘発されたうつ病が6年以上続き、自殺の原因になったということだ。

ソウル行政裁判所が、23年間戦闘機製作会社に勤め、2020年7月に自ら命を絶ったAさんの遺族が勤労福祉公団を相手に起こした「遺族給与と葬儀費不支給処分取り消し訴訟」で、原告勝訴判決を行った。

判決文によれば、1997年に入社し、戦闘機の組立業務をしていたAさんは、2013年に海外出張中に「組長」昇進を伝えられた。Aさんは昇進を望まなかったが、会社はこれを無視したまま「業務能力が卓越している」という理由で、2014年1月からの昇進を発令した。Aさんは戦闘機の最終組立工程を担当する組の組長として働き、成果ヘの負担と組員の業務怠慢による納期遅延、組員との不和などでストレスが激しくなり、精神健康医学科で『うつ病』と診断されて治療を受けた。2015年から再び組員に発令されたが、2017年からは、チーム長の指示を現場に伝達する中間管理者の発令を受け、現場と管理者との間を調整する過程で発生するストレスによって、うつ病が続いた。

2020年4月からは、他機種の戦闘機の組立業務を担当して、更に深刻化した。会社が、組長と中間管理者として苦労した自分の意思を無視して、はるか後輩に最初から学ばなければならず、体力的に負担の大きい業務を担当させられたことに対する喪失感が大きかったためだ。Aさんはこの頃から「私は会社でいじめられっ子だ」という言葉を口癖にし、同僚たちとの対話もなくなり、顔色が暗くなったという。結局、Aさんは2020年5月、6月に自殺を試み、7月に三回目で命を絶った。勤労福祉公団は遺族の遺族給与支給請求に「自殺が業務上の理由のためとはみられない」として、労災を認めなかった。Aさんが精神科への相談の過程で、職場での仕事だけでなく、経済的な理由、母親の看病などに対するストレスも一緒に話したということだ。

しかし、裁判所の判断は違った。裁判所は「2014年の組長人事発令の以前には、うつ病を含む精神科的な病歴は存在しなかったので、業務上の理由に基づくストレスでうつ病が発病し、それによって極端な選択に至ったということ以外に、Aさんの自殺を説明できる動機や契機がみえない」として、業務上の災害と認定した。更に「突然の人事措置、新しい役割を遂行しながら発生した構成員との不和、成果に対する負担、業務苦情に関する疎通窓口の不在(ストレスの訴えに対する無反応)等の業務的な要素がうつ病の発病に決定的な影響を与え、その状態が自殺の実行当時まで長期間続いたとみられる。」「Aさんは自殺未遂の事実を会社には全く知らせていないが、これはAさんの職場内での疎通が足りなかっただけでなく、会社が提供する心理相談などの支援体系に対する信頼がなかったことを示している」と指摘した。

遺族を代理したイ・ソンヨン弁護士は「労働者が望まない強制昇進で発生したストレスを業務上災害と認定した、事実上初めての判決」で、「健康で有能で責任感があったAさんの死が、単純な個人的な弱さによるものではなく、不合理な人事システムと職場内いじめ、ストレスのためだったことを裁判所が認めたもの」と話した。

2024年5月26日 ハンギョレ新聞 パク・テウ記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1142070.html