令和5年度化学物質管理に係る専門家検討会中間取りまとめ/2023(令和5)年11月21日 厚生労働省労働基準局安全衛生部

Ⅰ 検討の趣旨及び経緯等

1 検討の趣旨

今般、国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類にのぼり、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれる。さらに、化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く。)のうち、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)等の特別則の規制の対象となっていない物質を起因とするものが多数を占めている。これらを踏まえ、従来、特別則による規制の対象となっていない物質への対策の強化を主眼とし、国によるばく露の上限となる基準等の制定、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みの整備・拡充を前提として、事業者が、危険性・有害性の情報に基づくリスクアセスメントの結果に基づき、国の定める基準等の範囲内で、ばく露防止のために講ずべき措置を適切に実施する制度を導入することとしたところである。

この制度を円滑に運用するために、学識経験者からなる検討会を開催し、2に掲げる事項を検討する。

2 検討事項

(1) 労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質のばく露の濃度の基準及びその測定方法
(2) 労働者への健康障害リスクが高いと認められる化学物質の特定並びにそれら物質の作業環境中の濃度の測定及び評価の基準
(3) 労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質に係るばく露防止措置
(4) その他

3 中間取りまとめ

今般、本検討会は、2に掲げる検討事項のうち、個人ばく露測定(労働者の呼吸域における物質の濃度の測定をいう。以下同じ。)に係る測定精度の担保等について、中間的な取りまとめを行った。

4 検討の経緯

○ 第 1 回検討会(6月8日 10:00-12:00)
① 令和5年度検討スケジュール
② 皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかな物質の特定
③ その他

○ 第 2 回検討会(7月 18 日 14:00-17:00)
※ 全般事項の構成員と、毒性に係る構成員のみ
① 濃度基準値の検討
② その他

○ 第3回検討会(8月 28 日 14:00-17:00)
① 濃度基準値の検討
② 濃度基準値設定対象物質ごとの測定方法について
③ 個人ばく露測定の精度管理について
④ その他

○ 第4回検討会(10 月 6 日 14:00-17:00)
① 濃度基準値の検討
② 濃度基準値設定対象物質ごとの測定方法について
③ 個人ばく露測定の精度の担保等について
④ その他

○ 第5回検討会(11 月6日 14:00-17:00)
① 濃度基準値の検討
② 濃度基準値設定対象物質ごとの測定方法について
③ 個人ばく露測定の精度の担保等について
④ その他

5 構成員名簿

(全般に関する事項)

大前 和幸慶應義塾大学 名誉教授
尾崎 智一般社団法人 日本化学工業協会 常務理事 環境安全 レスポンシブル・ケア
推進 管掌
小野 真理子独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 化学物質情報管理研究センター 化学物質情報管理部 特任研究員
城内 博独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 化学物質情報管理研究センター長
髙田 礼子聖マリアンナ医科大学 医学部予防医学教室 主任教授
鷹屋 光俊独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 所長
武林 亨慶應義塾大学 医学部 衛生学 公衆衛生学教室 教授
平林 容子国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター長
宮内 博幸産業医科大学 産業保健学部 作業環境計測制御学講座 教授
宮本 俊明日本製鉄株式会社 東日本製鉄所 統括産業医
最川 隆由一般社団法人 全国建設業協会 労働委員会 労働問題専門委員
西松建設株式会社 安全環境本部 安全部 担当部長

(毒性に関する事項)

上野 晋産業医科大学 産業生態科学研究所 職業性中毒学研究室 教授
川本 俊弘中央労働災害防止協会 労働衛生調査分析センター所長
宮川 宗之帝京大学 医療技術学部 スポーツ医療学科 非常勤講師

(ばく露防止対策に関する事項)

津田 洋子帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 講師
帝京大学 産業環境保健学センター 環境保健学部部門長
保利 一産業医科大学 名誉教授
山室 堅治中央労働災害防止協会 労働衛生調査分析センター 上席専門役

(50音順)

Ⅱ 個人ばく露測定に係る測定精度の担保等について

第1 基本的考え方

1 個人ばく露測定の法令上の位置付け(下図参照)

(1) 作業環境測定においては、測定に専門知識及び技術を要する作業場(以下「 指定作業場 」という。」という。)における測定については、作業環境士による測定(デザイン、サンプリング分析)を義務付け、結果の精度を担保している(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)及び作業環境測定法(昭和50年法律第28号。以下「作環法」という。) )。

(2) 一方、個人ばく露測定においては、指定作業場ける測定を含め、測定実施者の限定がなく、測定精度を担保する仕組みがない状態である。

  • 指定作業場(①)では、作業環境測定士による作業環境測定が義務付けられている。
  • 環境改善が困難な第三管理区分作業場(②)では、令和6年4月1日から、個人サンプリング測定等(第三管理区分測定告示注による測定)が義務付けられる。
  • リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う作業場(③)では、リスク見積りのため、化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月18日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号。以下「化学物質リスクアセスメント指針」という。)及び化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針(令和5年4月27日付け技術上の指針公示第24号。以下「技術上の指針」という。)に基づき、個人ばく露測定を行う。
  • 金属アーク溶接等作業を継続的に行う屋内作業場(④)では、個人ばく露測定が義務付けられている。
  • 濃度基準値設定物質を製造・取り扱う屋内作業場(⑤)においては、令和6年4月1日から、技術上の指針に基づき、個人ばく露測定を行う。

(注)「第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定の方法等」(令和4年厚生労働省告示第341号)。この告示では、個人ばく露測定のほか、作業環境測定基準に規定する方法による測定も認められているが、あくまで呼吸用保護具の選択のための測定であり、作業環境測定ではない。

2 精度の担保の必要性

(1) 環境改善が困難な第三管理区分作業場及び金属アーク溶接等作業を継続的に行う屋内作業場(以下「第三管理区分作業場等」という。)においては、個人ばく露測定の結果により、呼吸用保護具の選定を行うことが義務付けられていることから、測定の精度を担保する仕組みを検討する必要がある。

(2) 労働者のばく露の程度が濃度基準値以下であることを確認するための個人ばく露測定(以下「確認測定」という。)や、リスクアセスメントのための個人ばく露測定については、義務付けられてはいないが、測定結果に基づき呼吸用保護具の選定を行うことは同じであるため、測定の精度を担保する必要がある。

(3) 濃度基準値が低い値となっている物質もあるため、特に、分析の精度の担保が重要である。

3 精度を担保する仕組み

(1) 第三管理区分作業場等においては、法令上、個人ばく露測定を行うことを事業者に義務付けていることから、法令改正により、個人ばく露測定を資格者に行わせることを事業者に新たに義務付けることが適当である。

(2) 確認測定やリスクアセスメントのための個人ばく露測定についても、その精度を担保する仕組みが必要であり、当面の間、化学物質リスクアセスメント指針及び技術上の指針において、資格者による個人ばく露測定の実施を行政指導として求めるべきである。さらに、今後、必要な法令の整備により、作業環境測定と同様、資格者による個人ばく露測定を義務付ける仕組みを設けることを検討すべきである。

(3) 資格者の要件については、個人ばく露測定を円滑に行う仕組みとするため、(1)及び(2)に共通の要件とすべきである。

4 個人ばく露測定を行うために必要となる業務量について

(1) Ⅲの1のアンケート結果によれば、金属アーク溶接等作業に係る個人ばく露測定のほとんどは、作業環境測定機関によって行われた。これを前提に、Ⅲの2で示す試算によれば、確認測定の実施頻度を最大限に見積もり、全て作業環境測定士が実施するという最大限の試算を行うと、約3万人分の作業環境測定士の業務量が増加するという試算となる。

(2) 濃度基準値設定物質の数は、徐々に増えていくため、突然、業務量が増加するわけではないが、将来を見据え、特定の資格者に業務量が集中しない仕組みとするとともに、業務量が増加しても機能する仕組みを考える必要がある。

第2 個人ばく露測定を行う者に求められる能力

1 個人ばく露測定のデザインを行うために必要な能力

(1) デザインを行う能力としては、ばく露される化学物質の有害性等の把握、均等ばく露作業の設定や最大ばく露者の選定、測定対象物質に応じた捕集方法と試料採取機器の選択、ポンプ流量の設定など、第三管理区分測定告示注や技術上の指針に定められたデザインを実施できることが求められる。なお、測定対象者の選定に当たっては、現場の作業内容をよく理解していることが望ましい。

(2) リスクアセスメントのための個人ばく露測定では、統計処理により、上側信頼区間95%の値を算出した上での評価も求められるため、そのために必要な知識も求められる。

2 個人ばく露測定のサンプリングを行うために必要な能力

(1) サンプリングを行う能力としては、デザインの際に決定された測定対象者に対して、捕集方法や試料採取機器の適切な装着、ポンプ流量の設定、測定中の監視等が求められる。

(2) デザインをした者の指示に従ってサンプリングを行うだけの場合、デザインを行う者に必要な能力は必ずしも求められず、デザインを行う者との役割分担を可能とすべきである。

3 個人ばく露測定の分析を行うために必要な能力

(1) 分析を行う能力としては、試料の種類に応じて必要な分析機器を用いることができ、それらを用いて試料の種類に応じて分析できる能力が必要である注1

(2) 一つの分析機関が全ての物質を分析できる必要はなく注2、分析機関が相互に連携・分担し、全体として、全ての濃度基準値設定物質(リスクアセスメント対象物)の分析を可能とする仕組みを構築するべきである。

(注1)分析者の能力を担保するだけでなく、作業環境測定で行われているような分析の精度管理の仕組みも必要である。
(注2)測定頻度が低い物質や、分析が困難な物質等については、特定の分析機関に分析を集中させる等により、スケールメリットが得られるような仕組みが必要である。

4 第三管理区分作業場等における改善措置やリスク低減に必要な能力

(1) 第三管理区分作業場等における個人サンプリング測定等については、呼吸用保護具の選定ための測定であり、 第三管理区分作業場については作業環境管理専門家の意見を踏まえて環境改善が困難とされた作業場であるため、個人ばく露測定(特にデザイン及びサンプリング)を行う者は、作業環境の管理及び改善のため、作業環境管理専門家又は化学物質管理専門家に相当する知識を有することが望ましい。

(2) 確認測定やリスクアセスメントのための個人ばく露測定は、リスクアセスメントの実施の一部をなすものであるから、個人ばく露測定(特にデザイン及びサンプリング)を行う者は、リスクアセスメントの結果に基づく措置(リスク低減措置)について、必要な知識を有することが望ましい

(注) 健康診断等による対応も考えられる場合は、産業医の意見を聴取する必要がある。

第3 想定される資格者の要件

1 個人ばく露測定のデザイン及び個人サンプリングを行う者の要件等

(1) 個人ばく露測定の測定対象者の選定は、個人サンプリング法による作業環境測定注1とは考え方が異なる。また、作業環境測定より多様な化学物質等の測定が必要なため、捕集方法や試料採取機器、ポンプの流量については、作業環境測定より広範な知識が求められる。このため、作業環境測定士(第一種・第二種)については、追加講習の受講が必要である。

(2) (1)の講習の内容は、概ね次の表のとおりとすべきであり、講習の品質管理の観点から、都道府県労働局長により登録を受けた機関が実施するとともに、修了試験を行うべきである。講師要件については、作業環境測定士に対する講習の講師要件等を踏まえて決定すべきである。

(3) オキュペイショナル・ハイジニスト注2の職務には、個人ばく露測定のデザイン及びサンプリングが含まれるため、デザイン及びサンプリングを行う資格者として認めることが妥当である。

(4) 事業場に所属する作業環境測定士は、現場の作業内容をよく理解し、作業者とのコミュニケ-ションが取りやすいため、最も望ましい。これが困難な場合は、均等ばく露作業の特定等の際に作業内容をよく知る化学物質管理者が関与することが望ましい。

(注1)作業環境測定法施行規則(昭和50年労働省令第20号)第3条第1項第1号イに規定する個人サンプリング法をいう。
(注2)公益社団法人日本作業環境測定協会の認定オキュペイショナルハイジニスト又は国際オキュペイショナル・ハイジニスト協会(IOHA)の国別認証を受けている海外のオキュペイショナル・ハイジニスト若しくはインダストリアルハイジニストの資格を有する者

【学科】

講習の科目範   囲時 間
個人ばく露測定(総論)個人ばく露測定の目的(溶接ヒューム測定告示注1、第三管理区分測定告示、濃度基準値告示注2、技術上の指針、化学物質リスクアセスメント指針における個人ばく露測定の趣旨) 個人ばく露測定結果の評価及び呼吸用保護具の選定(要求防護係数、指定防護係数、フィットテスト等)2時間程度
デザインの実務個人ばく露測定に係るデザインの方法(溶接ヒューム測定告示、第三管理区分測定告示、技術上の指針に基づく均等ばく露作業の特定、最大ばく露者の特定の方法等)3時間程度
サンプリングの実務個人ばく露測定に係るサンプリングの方法(簡易測定機器とその取扱い、試料採取機器の選択、ポンプ等の選択、試料採取機器の装着に関
する事項等)
1.5時間程度
関係法令個人ばく露測定に係る関係法令等(特化則等の省令、技術上の指針、化学物質リスクアセスメント指針)1時間程度

注1:金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等(令和2年厚生労働省告示第 286 号)
注2: 労働安全衛生規則第五百七十七条の二第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物及び厚生労働大臣が定める濃度の基準(令和5年厚生労働省告示第 177 号)

【実技】

講習の科目範   囲時 間
デザインの実務個人ばく露測定に係るデザインの方法(溶接ヒューム測定告示、第三管理区分測定告示、技術上の指針に基づく均等ばく露作業の特定、最大ばく露者の特定の方法等)0.5時間程度
サンプリングの実務個人ばく露測定に係るサンプリングの方法(簡易測定機器とその取扱い、試料採取機器の選択、ポンプ等の選択、試料採取機器の装着に関する事項等)1.0時間程度

※個人サンプリング法による作業環境測定の登録を受けた作業環境測定士については、サンプリングの実務を免除する等、必要な科目免除の規定を設ける。

2 個人ばく露測定のサンプリングのみを行う者の要件等

(1) 1に掲げる資格者から指示を受けてサンプリングのみを行う者については、サンプリングの実務に必要な知識に関する講習を受講した者を認めるべきである。

(2) (1)の講習の内容は、概ね次の表のとおりとすべきであり、講習の品質管理の観点から、都道府県労働局長により登録を受けた機関が実施すべきである。講師要件については、作業環境測定士に対する講習の講師要件等を踏まえて決定すべきである。また、幅広い者を養成する観点から、受講資格を設けるべきではなく、修了試験によって修了者の質を担保すべきである。

(3) (1)のサンプリングのみを行う者は、1に掲げる有資格者からの指示注1を受けた場合にのみサンプリング実施できる者あり、(1)の資格者単独でサンプリングを実施することはできないことに留意する必要がある。

(4) なお、 測定が終了した試料採取機器の回収・保存、分析機関へ搬送等職務は、1に掲げる資格者が担うべきである注2

(注1)ここでいう指示を元請事業者に属する上記1の資格者が請負事業者に属する上記2の資格者に対して行う場合、適切な請負と判断されるためには、請負事業主が、自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること、業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理することなどの要件を満たすことが必要となる。当該指示が適切な請負の範囲内として認められるかどうかは、「労働者派遣事業と請負による行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)に基づき実態に即して判断されることを通達で明確にする。
(注2)1に掲げる資格者が試料採集機器の回収・保存、搬送等を行う際には、サンプリング中に問題が発生しなかったか等をサンプリングを行った者から直接聴取し、確認することも重要である。

【学科】

講習の科目範    囲時 間
化学物質管理(総論)化学物質管理の概要0.5時間程度
個人ばく露測定(総論)個人ばく露測定の目的0.5時間程度
サンプリングの実務個人ばく露測定に係るサンプリングの方法(簡易測定機器とその取扱い、試料採取機器やポンプの取付け方法、サンプリング方法(始動、取り替え、監視を行う一連の方法))0.5時間程度
関係法令個人ばく露測定に係る関係法令等(特化則等の省令、技術上の指針、化学物質リスクアセスメント指針)3時間程度
0.5時間程度

【実技】

講習の科目範    囲時 間
サンプリングの実務個人ばく露測定に係るサンプリングの方法(簡易測定機器とその取扱い、試料採取機器やポンプの取付け方法、始動、取り替え、監視を行う一連の方法)1.5時間程度


3 個人ばく露測定の分析を行う者の要件等

(1) 分析機器を保有し、それを用いた精度を担保した分析が可能であるという意味で、第一種作業環境測定士(機関)が最も望ましい。しかし、作業環境測定機関だけでは、分析対応能力が不足する可能性があるため、他法令に基づく測定関係の資格者も分析可能とすべきである。

(2) これらを踏まえ、分析に関する資格者は、測定対象物質の捕集及び分析に必要な試料採取機器注1及び分析機器を有する者であって、次に該当する者とすべきである注2

  • 第一種作業環境測定士
  • 作業環境測定機関(当該機関に所属する第一種作業環境測定士が分析を実施する場合に限る。)注3
  • 1級化学分析技能士(所属事業場に係る個人ばく露測定における試料の分析に限る注4注5。)

(3) 一つの測定機関(者)が、濃度基準値設定物質(リスクアセスメント対象物)の全てを分析するための分析機器を保有することは困難であるため、分析機関が相互に連携・分担し、多様な化学物質の分析を可能とする仕組みが必要である。

(注1)試料採取機器は、分析機関がデザイン・サンプリングを行う者に提供(又は指定)することを想定している。試料採取機器により、分析のための前処理が異なるためである。
(注2)環境計量士(濃度)については、その多くが作業環境測定士の資格を有していることから、実質的に分析業務に参入可能となっている。分析の資格者として法令上明記する必要性については、関係機関と調整する。
(注3)作業環境測定機関において分析を行う場合は、第一種作業環境測定士に分析を行わせる趣旨である。
(注4)大手企業の自社の分析部門で分析が可能とすべきであるが、作業環境測定士が所属していない場合、分析を行う者に何らかの資格を求めるという趣旨である。
(注5)2級及び3級の化学分析技能士は、全ての分析方法に対応できるわけではないため、1級の化学分析技能士の管理下で資格に応じた実施可能な化学分析を行うことができる。

4 第三管理区分作業場等における改善措置やリスク低減措置に関する要件

(1) 個人ばく露測定結果を踏まえた適切な呼吸用保護具の選定や、作業内容の変更に合わせた作業環境改善等を適切に行うため、1の資格者は、作業環境管理専門家又は化学物質管理専門家の資格を有することが望ましい注1

(2) 作業環境管理専門家又は化学物質管理専門家の資格を有する者により個人ばく露測定のデザインを実施することが困難な場合は、外部の作業環境管理専門家又は化学物質管理専門家注2が個人ばく露測定結果の評価に関与することが望ましい。

(3) 化学物質リスクアセスメント指針及び技術上の指針の改正により、事業者に対し、上記の事項を促すべきである。

(注1)例えば、作業環境測定士であれば、一定の経験を積み、指定された講習を受講することで、作業環境管理専門家や化学物質管理専門家の資格を得ることができる。
(注2)健康診断等による対応も考えられる場合は、産業医の意見を聴取する必要がある。

第4 今後のスケジュール等

1 個人ばく露測定の精度の担保

(1) 金属アーク溶接等作業に係る個人ばく露測定は、特化則において義務付けられていることから、特化則を改正する形で資格者に測定を行わせることを事業者に義務付けるべきである。第三管理区分作業場における個人ばく露測定は、それぞれ、特化則、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)、鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号)及び粉じん障害予防規則(昭和54年労働省令第18号)において規定されているため、これらの規則を改正することで、資格者に個人ばく露測定を行わせることを事業者に義務付けるべきである。

(2) (1)以外の場合であって、リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う作業については、化学物質リスクアセスメント指針、濃度基準値設定物質を製造・取り扱う作業については、技術上の指針において個人ばく露測定を行うことが規定されている。このため、当面、これらの指針を改正し、事業者に対し、個人ばく露測定を行う場合は、資格者が行うべきであることを規定すべきである。

(3) これらの指針は、行政指導のための基準であることから、今後、作業環境測定と同様、資格者による個人ばく露測定を義務付ける仕組みを設けるための法令の整備を行うべきである。

2 今後のスケジュール等

(1) 本中間取りまとめは、速やかに公表し、必要な法令改正や関係指針の改正を行うべきである。

(2) 法令及び指針の改正に当たっては、パブリックコメントにより広く国民の意見を聴取すべきである。

Ⅲ 参考資料

8461c7447d96217cc42272b4e94525b6

令和5年度「化学物質管理に係る専門家検討会」の中間取りまとめを公表します(厚生労働省発表 2023(令和5)年11月21日)

安全センター情報2024年1・2月号