一部不正受給を根拠に労災補償制度を見直すと言う労働部 2023年12月20日 韓国の労災・安全衛生

雇用労働部長官が20日、「労災保険制度特定監査」の中間結果を発表している。/労働部提供

雇用労働部が一部の労災保険不正受給事例を理由に、労災保険制度を見直すと明らかにした。不正受給は勤労福祉公団内部のシステムを改善すれば解決できる問題だが、これを労災保険制度改編の根拠にするのは不適切だという指摘が出ている。これまで労働部は、勤労福祉公団、労災病院、労災患者間の『労災カルテル』を根絶すると言ってきたが、未だにカルテルの実体は確認できていない。

雇用労働部のイ・ジョンシク長官は20日、政府ソウル庁舎で『労災保険制度特定監査』中間結果を発表した。

先に「国民の力」のイ・ジュファン議員が10月の国政監査で、勤労福祉公団が労災指定機関として、治療中の労災患者を公団が直接運営する労災病院に連れてくれば褒賞金を与えるなど、労災カルテルが作られていると指摘した。労働部は先月1日から特定監査を始め、大統領室も「前政権の故意的な放棄で兆単位の血税が流出している情況を捕捉した」として、監査に力を入れた。

監査で不正受給が摘発された。労働部は不正受給が疑われる事例320件の内、178件の調査を終え、178件の中から117件の不正受給を発見した。摘発した金額は60億3100万ウォンだ。私的に発生した事故を業務中に怪我をしたと操作した事例、障害等級を高めるために障害状態を誇張したり虚偽操作した事例、労災療養期間中に休業給付を受けながら他の仕事をして他人名義で給与を受け取った事例、などが出てきた。

労働部は今回の監査で長期療養患者の割合が高いという点にも焦点を合わせた。昨年基準で、六ヵ月以上の長期療養患者の割合は47.6%だった。労働部は勤労福祉公団が長期療養患者診療計画書を再審査し、その結果、長期療養患者1539人の内、419人には療養延長をせずに治療終結の対象に切り替えた。

イ・ジョンシク長官は、労災カルテルに関しては「追加調査中」とした。文在寅政府の時に導入された『推定の原則』に対しても、外部からの問題提起事項を検討中だと話した。推定の原則は、特定疾病については業務と疾病の間に関連性があると推定し、一部の調査手続きを省略するもので、労働部の統計上、承認率が高い一部疾病の中から最小限に選定したものだ。昨年は筋骨格系疾患の内、推定の原則の対象事件は3.65%に過ぎなかった。

労働部は監査期間を一ヵ月延長して今月末まで行う。イ・ジョンシク長官は「監査終了後に専門家などが参加する制度改善タスクフォース(TF)を構成し、労災補償制度の構造的な問題点を改善する」と話した。

民主労総はこの日論評を出して、「いくら監査の中間結果とはいえ、与党、韓国経営者総協会、大統領室まで出てきて不正の温床であるかのように騒いでいた『労災カルテル』を証明する結果とは見難い。」、「それでも労働部は、毎年摘発された不正受給事例を前面に出して、労災保険制度改悪の扉を開けようとしている」と話した。クォン・ドンヒ労務士は「不正受給事例は、これをきちんと濾過できなかった勤労福祉公団の内部システムの問題に過ぎない」と話した。

長期療養患者の割合が高いということは、労災の処理期間が長期化しているという傍証だという指摘も出た。昨年基準の労災処理期間は、筋骨格系疾患108日、脳心血管疾患114日、職業性癌281日に達する。

2023年12月20日 京鄕新聞 キム・ジファン記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202312201610001