労災の『先補償制度』の国会論議に「初めの一歩」 2023年12月05日 韓国の労災・安全衛生

ユ・ソンギュ公認労務士が5日、国会・環境労働委員会で行われた労働災害補償保険法一部改正法律案の立法公聴会に出席して発言している。/国会映像会議録システム

国会が『労災先補償制度』導入議論への初めの一歩を踏み出した。長い疫学調査期間のせいで、労災を認められないまま労働者が亡くなるという事態を防ぐために、労災保険を優先適用しようという趣旨だ。10月の国政監査での野党の制度改善の主張に、与党が呼応して行われた。ただ、最近、政府・与党が労災保険給付を不正受給する『労災カルテル』を問題視し、財界がこれに同調して、労災先補償議論がきちんと続くかは未知数だ。

災害調査が長引けば、国が優先して保険を適用
「先労災保険適用、事後審査で跳ばす」

国会・環境労働委員会は5日、労災補償保険法の一部改正案の立法公聴会を開いた。共に民主党のウ・ウォンシク議員が労災保険法の改正案を説明した。

改正案は労災の国家責任制の導入が核心だ。災害の調査期間を経過しても承認の可否を結論付けられなかったり、業務と災害の因果関係に関する医学・科学的な研究が不十分な場合、国が労災保険を優先して適用するという内容だ。

業務上の事故は7日、業務上の疾病は90日までに災害の調査を実施し、疫学調査など、より専門的な調査が必要な場合には180日の期限を設定した。業務上災害の『相当因果関係』の判断基準に、医学的・科学的な基準の他に、社会的な規範を置けるようにし、医師が被災者の代わりに労災申請ができるとする規定もある。

韓国の労災疫学調査の期間は長く、調査中に亡くなった労働者は少なくない。勤労福祉公団の資料によると、今年1~8月の産業安全保健研究院の疫学調査の所要日数は1072日で、職業環境研究院の疫学調査の所要日数は581.5日だ。2017年1月から今年8月までに、367人が労災審査中に亡くなった。

労災事件の経験が多い専門家たちは、法案に賛成した。迅速な労災補償で被災者の苦痛を減らすことができ、これは労災保険の趣旨にも合うという理由からだ。産業災害補償保険再審査委員会の委員も務めたクォン・ドンヒ公認労務士は、「労災保険法の目的は迅速・公正な補償だが、2~3年から7年も遅れる疫学調査によって、労働者が被害を受けている」とし、「最高裁の判例などは、社会規範的な判断に基づいて相当因果関係を証明せよと要求しているが、公団は医学的な判断だけに依存し、行政訴訟での敗訴率が高い」と指摘した。

聖公会大学校の兼任教授でもあるユ・ソンギュ公認労務士は「労災保険の労災は、社会保険の恩恵を与えられる範囲」で、「国の財政的な能力、社会的な合意と社会保障制度のレベルなどによって、その範囲は様々に定められる」と強調した。先補償制度については、「現在、健康保険が行っているように、被災労働者が病院を訪問すれば自動的に労災保険が適用され、事後審査によって労災でないものはろ過するシステム」だと説明した。

財界「不良な調査と不合理な判定が続く」

財界は反対した。法定の災害調査期間を設定すれば、公団の不良調査と不合理な判定が続くという理屈だ。韓国経営者総協会のイ・ガンソプ安全保健本部責任委員は、「災害調査期間の設定に先立ち、不充分な災害調査のインフラを拡充し、先ず、処理期間がどれだけ短縮されるかを調べるのが効率的」と主張した。

モラルハザードが発生するという主張も出ている。中小企業中央会のソ・ジョンホン人材政策室長は、「不良調査と不合理な判定への憂慮が大きくなっている状況で保険給付を優先して支給すれば、モラルハザードが蔓延する。」「財源が不明であり、どんな形であれ、事業主が直接・間接的に負担する可能性が高い」と話した。

2023年12月5日 毎日労働ニュース イム・セウン記者

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