航空乗務員「宇宙放射線による胃がん」に初の労災認定 2023年11月05日 韓国の労災・安全衛生

大韓航空

宇宙放射線に20年以上曝され、胃がんの判定を受けて死亡した航空乗務員に労働災害が認められた。宇宙放射線による胃がんが労災と認定されたのは今回が初めてだ。この間、航空乗務員の宇宙放射線による労災は白血病など血液がんに限定されていたが、胃がんのように硬い塊形態の腫瘍である固形癌に対しても労災が認められた。今後、放射線による労災認定の範囲が広くなる展望だ。

勤労福祉公団の『業務上疾病判定書』によると、ソウル南部業務上疾病判定委員会は先月6日、大韓航空の乗務員だったAさん(53)の胃がんを業務上災害と認定した。委員会は「故人の累積ばく露放射線量は測定されたものより多く、長距離路線の特性上、不規則な時間に食生活をするなどの要素を総合的に考慮する時、申請人の傷病と業務との相当因果関係が認められる」と判定した。航空乗務員の宇宙放射線ばく露の問題は、2018年に急性白血病の判定を受けた航空乗務員の労災申請以後、引き続き提起されてきた。

Aさんは1995年から2021年まで航空機の客室乗務員として働いた。Aさんの年平均飛行時間は1022時間だったが、その内49%は長時間飛行のアメリカ・ヨーロッパ路線だった。アメリカ・ヨーロッパ路線は北極航路を利用するケースが多く、短期路線よりも宇宙放射線へのばく露量が多いと知られている。Aさんは2021年4月16日、胃がん4期の診断を受け、翌月8日に死亡した。

大韓航空が測定したAさんの2008年以降の総累積被ばく放射線量は約42mSvだった。2019年7月から2020年6月までの一年間の累積被ばく放射線量は2.7mSvだった。航空乗務員の年間累積被ばく放射線量の安全基準は6mSvだ。大韓航空側は「乗務員の累積被ばく放射線量が年間6mSvを超えないよう管理しており、申請人の傷病(胃がん)と宇宙放射線との相関関係は明らかになっていない」と主張した。

しかし、公団は大韓航空の主張を受け容れなかった。審査委員は大韓航空が使用する測定法(CARI-6M)による累積放射線量は過小測定された可能性があると見た。ある審査委員は「累積放射線資料上、100mSv以上の放射線へのばく露の可能性があったと判断される」と話した。他の審査委員は「CARI-6Mは(放射線を)過小評価される方法で、これよりもばく露が多かったものと見られる」と話した。

審査委員たちは年間6mSv以下の低量放射線へのばく露も、がんの発生に影響を与え得るとみた。ある審査委員は「低線量放射線の危険度について、最近知られた状況などを考慮した」と話した。また別の審査委員は「電離放射線は、がん発生と閾値がない相関関係があり得る」と話した。Aさんが長距離飛行で不規則な食生活をしたこと、ヘリコバクターピロリ菌の検査結果が陰性で、飲酒・喫煙力がなかったこと、胃がんが相対的に早い年齢で発病したことも考慮された。

遺族側を代理したキム・スンヒョン労務士は「血液がんに続き、比較的ありふれた固形癌である胃がんにも宇宙放射線による労災を認めた意味のある決定」で、「現在の大韓航空の放射線測定モデルには過少測定の憂慮がずっと提起されているので、新型モデルを導入すべきだ」と話した。「未だ確認されていない放射線の影響は相当なものと見られる。航空乗務員の健康状態の全数調査が必要だ」と話した。

2023年11月5日 京郷新聞 キム・セフン記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202311051619001