「安全」はない、造船所下請け移住労働者 2023年10月06日 韓国の労災・安全衛生

3千人。今年、現代重工業に入ることになった移住労働者の規模だ。サムソン重工業とハンファ・オーシャン(旧・大宇造船海洋)まで加えると、その数は約1万人に迫る。

今後計画される流入人員まで合わせれば、約3万人以上が造船所に来る予定だという。政府は人材難に陥っている造船業界の要請で、造船業に従事する移住労働者クォーターを大幅に増やした。

このようにして入ってきた移住労働者たちは多くの困難に遭っている。韓国人の作業者と意思疎通ができないため、溶接や製缶といった作業でチームワークが取れないという問題を抱えている。更に、労働者なら当然に享受すべき安全権も保障されていない。

一昨年、昨年と次々に発生した重大災害で、現代重工業は安全保健措置を改善すると約束した。今までと比べると改善された方だが、慢性的な問題が解決されたわけではない。

生産工程中心の業務文化、「搾るほど搾れる」元・下請け関係、災害を誘発する上下の同時作業は依然として残っている。多段階下請けのために、業者間の連絡網の構築も不十分だ。混在作業が続いているのだ。

安全教育でもきちんとやっていれば良いが、下請け会社自身の安全教育は不十分でしかない。生産工程が忙しいので、雨天などで作業ができない日に行っている。それさえも形式的に過ぎない。映像資料が必要な教育なのに、映像を流す場所がなく、しないでおくこともある。

言葉も上手く通じない移住労働者は、一層危険に曝される。言語適合型の安全教育は不十分だ。移住労働者は安全教育を正しく理解できず、危険な環境に置かれるしかない。更に、投入される工程と密接な下請け会社の安全教育を、韓国人の労働者と一緒に聞いているのが実情だ。安全点検会議もやはり韓国語を中心に行われ、移住労働者は自分が何をしているのかよく解らない状態で、現場に投入されている。このため、ヒューマンエラーによる事故の危険が大きくならざるを得ない。

移住女性労働者が多く投入される塗装の工程も例外ではない。塗装作業はペイントのために皮膚疾患や呼吸器疾患になりやすい代表的な作業だ。しかし、現場に備えられた物質安全保健資料(MSDS)は、韓国語の資料しかないことがほとんどだ。安全教育も韓国語だけで行われている。結局、塗装作業で疾患に罹っても正しく理解できず、適切な措置を受けられていない。

移住労働者の一部はブローカーと組んで入国している。ブローカーには韓国ウォンで少なくとも1千万ウォン、多ければ2千万ウォンが支払らわれている。その上、派遣期限は2年で、個別業者とは1年ずつ契約している。当然、週末と祝日を返上しなければブローカーの費用を返済し、家族に送金することはできない。

これは筋骨格系疾患になりやすい状態を作る。また、筋骨格系疾患に罹っても適切な措置を受けられない。疾患の事実を隠すしかないからだ。ただでさえ筋骨格系疾患を予防するための作業方法と手続きをきちんと教育されない状況で、移住労働者の安全は本当に劣悪だ。

現代重工業は移住労働者に対して、母国語での安全教育を準備している。直ぐに準備すべきことだった。現代重工業は2021年に発刊した『安全・保健・環境経営計画報告書』で、工程安全報告書の等級を、現行のM+(普通)からS等級(上級)に引き上げるために努力すると明らかにした。しかし、移住労働者の安全教育が不十分なために、M+等級の維持に汲々とするしかない。現代重工業だけの問題ではない。ハンファ・オーシャンとサムソン重工業でも避けられない問題だ。

造船所の人手不足には理由がある。低賃金と安全保健管理の問題が大きなウェイトを占めている。移住労働者まで入れるのであれば、『仕事は大変でも安全な職場だった』という認識を与えなければならない。だが、今の造船所の安全保健は、移住労働者からすらも敬遠されている。造船所が『危険な職場』ではなく、『安全な職場』になることを願う。

2023年10月6日 毎日労働ニュース ハ・イネ安全管理労働者

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