13年勤務し「希少がん」に、裁判所は「労災」 2023年08月30日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・ギフン記者

約13年間、様々な有害要因に曝されて働き、稀貴がん(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)に罹ったソウル交通公社の労働者に、裁判所が業務上災害を認めた。先端産業の現場で新たに発生する希少疾患であるために、研究結果が十分でなくても業務と疾病の間の相当因果関係が認められるという趣旨だ。

<毎日労働ニュース>の取材によると、ソウル行政裁判所はソウル交通公社の職員Aさん(48)が勤労福祉公団に起こした療養不承認処分取り消し訴訟で、原告勝訴判決を行った。公団は不服として控訴した。

Aさんは2002年12月、ソウル交通公社に入社し、機械設備の維持管理と補修業務を行っていたが、2016年1月に「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」と診断された。DLBCLは血液がんの一種で、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)の40%を占める。進行速度は速いが、早期の検診法はないといわれる。

希少がんの診断を受けたAさんは、公団に療養手当を申請したが承認されなかった。公団は「約13年間、地下鉄で機械設備のメンテナンス業務をしながら、ラドンと極低周波電磁場にばく露されたと推定され、夜間交代勤務を行った事実が確認される」としながら、「申請の疾病が発病したとするには、科学的な連関性があったとは見難い」と判断した。

Aさんは雇用労働部の労災補償保険再審査委員会の再審査も棄却されると、2020年9月に訴訟を起こした。「ラドンと極低周波電磁場など、様々な有害要因に13年以上ばく露し、傷病発病当時は満41歳で、好発年齢よりかなり若い」と主張した。関連の治療歴や家族歴もなかった」と強調した。

裁判所は公団の判定を覆してAさんの手を挙げた。リンパ腫と有害要因との医学的な因果関係が十分に立証されていなくても、相当な因果関係を簡単に否定すべきではないと判断した。裁判所は「労災保険は産業安全保健上の危険を、公的な保険によって産業と社会全体がこれを分担しようとする目的を持っている。」「勤労者の安全と健康のための最小限の社会的なセイフティーネットを提供することによって、安定的に産業の発展と経済成長に寄与するという制度の趣旨が、判断において十分に考慮されるべきだ」と説明した。

裁判所は特に、Aさんが磁場やラドンなどの有害物質に数年間はばく露したと見た。安全保健公団・産業安全保健研究院の疫学調査によると、Aさんは、潤滑油・冷媒などの化学物を取り扱い、トンネル・集水場・排水ポンプ場で高い濃度のラドンにばく露した。「たとえラドン・磁場などが制限的な証拠しかない発がん物質だとして提示されていても、Aさんが長期間、様々な有害因子に複合的にばく露され、昼・夜間交代勤務をするなど、作業環境の有害要素も複合的に作用し、疾病発生の危険が大きくなり得た」と判示した。

裁判所の鑑定医が、磁場ばく露と夜間勤務環境の作業が傷病を誘発または促進した可能性が高いと提示した所見も、労災の判断を後押しした。裁判所は「Aさんの喫煙歴、非ホジキンリンパ腫の特性など、公団が主張する事情を考慮しても、裁判所の鑑定医の医学的な所見を排斥することは難しい」とした。Aさんを代理したキム・ヨンジュン、キム・ウィジョン弁護士は「希少疾患の場合、労災と認められにくいのが現実だが、今回の判決は、労働者が各種の先端産業の現場で新しく発生するタイプの稀貴がんなどから保護される良い先例を残した、という点で意義がある」と話した。

2023年8月30日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者r

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