タワークレーン労働者の73%「工事期間短縮で危険作業を強要された」 2023年05月23日 韓国の労災・安全衛生

18日、始興のある建設現場で、タワークレーンで設置中の組み立て型枠が、強風に揺れている。/民主労総建設労組提供

#1:1月、ソウルのある建設現場で、タワークレーンで運搬していた鉄骨の柱が地上の20トントラックの運転席を襲った。幸い人命事故はなかったが、1200万ウォンもの車輌の修理費が掛かった危険千万な事故だった。当時、現場で別のタワークレーンを操縦していて事故を目撃したA(56)さんは「鉄骨の運搬はフォークリフトを利用すべき作業」で、「工事費を節約するために、タワークレーンの操縦士にこのような運搬作業を求めているのが現実」と話した。

#2:今年4月、抱川市のある建設現場では、タワークレーン操縦士のB(54)さんが、瞬間最大風速22mの強風にも拘わらず、タワークレーンを運転しなければならなかった。産業安全保健に関する規則で、瞬間風速が15mを超過すれば運転を止めなければならないが、現場では関係なかった。Bさんは「作業を拒否したら、元請け会社が直接電話で、『怠業か信義誠実義務違反だ』と脅してきた。」「会社が申告すれば、政府が免許証を取り消すというのに、どうやって作業を拒否するのか」と話した。

民主労総・建設労組が3月9~10日に、タワークレーン分科の組合員2207人をオンラインでアンケート調査した結果、「工事期間の短縮のために危険作業を強要または指示されたことがあるか」という質問に、73.4%(1620人)が「ある」と答えた。「ない」という答えは、26.6%(587人)に止まった。

工事期間短縮のために無理に要求された作業類型としては、「気象の悪化でも作業を強行」(23.56%)、「信号手の不配置など、安全未確保作業の強要」(18.4%)、「引き揚げ物の落下や破損など、危険作業の強要」(16.81%)などが挙げられた。建設労組は引き揚げ物の落下などの危険性が最も大きな作業として、「麻袋の引き揚げ」を挙げる。麻袋は合成樹脂で作った大きな風呂敷で、建設現場から土や砂を運ぶ時に使う。土の中に時々コンクリートの破片や鉄筋の切れ端が混ざっていて、引き揚げの途中に布が破れることが多いという。

本来フォークリフトを使って移さなければならないが、費用を節減するために、労組員ではなくタワークレーン操縦士にさせるのが慣行だと建設労組は説明した。この他にも、組み立てられた鉄筋をクレーンで丸ごと引き揚げたり、トラックの上の鉄筋・鉄骨を上下する作業、気象悪化での作業強行、などが危険作業に挙げられる。

4月12日、河南市のある建設現場で、組み立てられた鉄筋がタワークレーンによって引き揚げられる途中に崩れている。/民主労総建設労組提供。

危険作業を強要・指示した建設業者に訊きたい話しでは、52.15%が「生産中止」(下請け業者)を挙げた。続いて「ない」(26.6%)、「元請け会社」(20.98%)の順だった。タワークレーン労働者と直接契約を結ぶタワークレーン「リース業」と答えたのは、0.27%に過ぎなかった。「工事期間短縮のために不当な作業をどれくらい強要されたか」という質問には、「毎日、随時される」が34.03%で最も多く、「週五回未満」が(30.54%)、無回答(29.04%)が続いた。

重大災害処罰法の施行後、建設現場で安全の関連(慣行や意識)が変わったかという質問には、「全くない」(35.39%)、「ない」(32.35%)と答えた。「少し変わった」は30.36%、「大きく変わっている」は1.9%に止まった。労働者の過半数は依然として変化を実感できていないのだ。

2023年5月23日 ハンギョレ新聞 キム・ヘジョン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1092851.html