下請け労働者が誤って投げた鉄パイプで元請け労働者が負傷、損害賠償責任は? 2023年05月08日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・ギフン記者

下請け労働者が建物から投げた鉄パイプに当たって元請けの職員が出勤の途中に傷害を負った場合、元請けが損害を賠償すべきだという最高裁の判決が出た。最高裁は下請けの職員の不法行為で事故が起きたとしても、会社が事前に通行路への安全措置をしなかった誤りがあると判断した。

下請け労働者の不法行為と元請け責任が争点、一審は「所属職員への安全保護義務違反」

<毎日労働ニュース>の取材によると、最高裁判所一部は、永川市の自動車部品メーカーB社の職員のAさんが会社に対して起こした損害賠償訴訟の上告審で、原告敗訴とした原審を破棄し、事件を大邱地裁に差し戻した。訴訟が提起されてから五年目のことだ。

Aさんは2017年6月19日午前7時頃、工場の増築工事の現場で事故に遭った。増築工事を担当した下請け業者のC社所属の労働者が、現場の二階から投げた足場パイプに当たったのだ。Aさんは前日に退社したが、上司の頼みでもう一日出勤していたところだった。

当時、Aさんを目撃した現場の一階の作業者は、二階の作業者に「パイプを投げるな」と言い、Aさんにはしばらく止まるよう求めた。しかし、Aさんは工事現場を通っても良いと聞いて、工場の出入口に向かって走っていたところ、パイプが頭に当たり、背骨の骨折や脳震とうなどの傷害を負った。この事故で約四ヶ月間療養し、1700万ウォン余りの休業・障害給与を受け取った。

Aさんはこれとは別に会社に対して損害賠償を要求した。職員に対する保護義務と安全配慮義務に違反した責任があると主張した。また、下請け労働者の不法行為による損害も、元請けが責任を負うべきだと要求した。一方、会社はAさんが既に退社した状態である上に、下請けの工事に具体的に指示・監督をしていなかったので、使用者責任はないと主張した。

一審は会社の損害賠償責任を認めた。裁判所は「会社としては、所属の勤労者が工事現場の周囲を通る時、落下物などによって怪我をしないように安全ネットなどの保護施設を設置し、勤労者の安全を確保すべき保護義務もしくは安全配慮義務がある。」「これを怠ることによって事故が発生したので、会社は原告が被った損害を賠償する義務がある」と判示した。

ただし、B社の責任比率を60%に制限した。下請け労働者の過ちで事故が起き、Aさんもパイプなどの工事資材が落ちる可能性があるため、速やかに工事現場を通過すべきだったという趣旨だ。会社は下請けが雇用した職員の不法行為に責任を負うことはできないとして控訴した。

二審、「下請けの不法行為が事故の原因」
最高裁判所、「通行路の安全措置を講じるべきだった」と原審を逆転

控訴審は会社の手を挙げた。下請け職員の不法行為に伴う事故であるため、B社に使用者責任はないと判断した。裁判所は「事故は工事現場の安全施設の不備などによって発生したものではなく、C社の職員が足場パイプを投げた不法行為によって発生した」ので、「B社に保護義務違反があるとは見難く、不法行為の発生を予測できたとは見難い」と説明した。 C社の職員の不法行為に対するB社の使用者責任もないと見た。

しかし、最高裁は原審を逆転し、B社が損害を賠償すべきだとした。裁判所は「事故の直接的な原因が、受給者であるC社の職員の不法行為によって発生したものではあるが、B社が事前の安全措置を正しく行わなかった誤りも事故の発生原因の一つと見られる」と判示した。更に、会社は工事の現場近くの事務室に出入りする職員が、安全事故によって被害を受ける可能性があるということは十分に解るだろうと指摘した。

裁判所は「B社は、所属の勤労者たちが安全に事務室に出入りできるように、事前に通行路に関する安全措置を直接取ったり、受給者に指示または要求すべきだった」とし、「原審が保護義務違反などを認め難いと判断したことは、必要な審理を果たさないまま、使用者の勤労契約上の保護義務に対する法理を誤解し、判決に影響を及ぼした誤りがある」と判示した。

2023年5月8日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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