環境公務員、17年目に視神経炎、裁判所が「公務上災害」 2023年05月04日 韓国の労災・安全衛生

ソウル行政裁判所庁舎の全景/ホン・ジュンピョ記者

環境公務員が約20年間、有害化学物質にばく露し、過労に苦しめられ、『視神経炎』が発病したことに対して、業務上災害に当たるという判決が出た。被災した公務員は、環境汚染物質を排出する事業場を随時訪問して有害物質に頻繁にばく露し、約四ヶ月間を休日なく連続勤務していたものと把握された。

四ヵ月間休まず働き、請願人からの暴言まで

<毎日労働ニュース>の取材によると、ソウル行政裁判所は、論山市環境課の公務員のA(53)さんが人事革新処に対して提起した公務上療養不承認処分取り消し訴訟で、原告一部勝訴の判決を行った。

Aさんは環境保護課に勤務して17年目の2017年10月、右目に痛みが生じて診察を受けた結果、「右目の前虚血性視神経病症・両眼視神経萎縮」と診断された。その後、人事革新処に公務上の療養を申請したが、職務遂行による疾病ではないという理由で、不承認とされた。

Aさんは「約20年間、環境汚染物質の排出事業場の指導点検業務などをしながら、毒性化学物質と飛散粉塵に長期間ばく露した」として、2020年10月に訴訟を起こした。四ヵ月間の過労と苦情によって蓄積したストレスも発病の原因だと主張した。

実際、Aさんは悪臭などの環境汚染物質に関する苦情が届けられれば、退勤後や週末にも当該の事業場を訪問して点検しなければならなかったことが確認された。Aさんが引き受けた事業場にはメタノール、ベンゼン、硫酸といった有害物質を扱う業者が多数だった。

特に2017年6月には鳥インフルエンザ(AI)『深刻』段階が発令され、三交代で勤務した。約12週間、秋夕(旧盆)の当日を除いては休みなく連続勤務した。同期間の超過勤務時間だけでも月平均75時間に達した。

『悪性苦情』も影響を与えた。住民たちが環境汚染物質による頭痛とめまいの症状を訴えた。その過程で悪口と暴言も激しかった。住民の一人は、夜間や週末にもAさんに電話をして、「10分以内に来なければ放っておかない。殺す」と脅迫した。

有害物質にばく露の不安、激しいストレスが作用

裁判所は、Aさんが過労とストレスで『視神経炎』を発症したと判断した。視神経炎は視神経に炎症が生じて神経繊維が機能を発揮できなくなり、視力低下・視野障害の症状が現れる疾患をいう。裁判所は「過労とストレスが眼疾患の発生と関連があるというのは、医学界で一般的に受け容れられている見解」とし、「過労やストレスが否定的な影響を及ぼす可能性は十分だ」と判示した。

環境汚染物質にばく露されるという精神的な負担も大きかったと見た。裁判所は「多数の請願人が有害化学物質による悪臭がひどいと言って様々な身体症状を訴えて苦情を提起する状況で、該当の事業場を訪問して環境汚染物質排出の有無を確認し、捕集まで直接行った原告としては、確認されていない有害化学物質にばく露して健康を害する恐れがあるという心配を常時抱えていたものと見られる」と説明した。

基礎疾患である帯状疱疹と多発神経病症が視神経炎の原因だという公団の主張も排斥した。裁判所は「過労とストレスが重なって免疫力が低下し、視神経炎の危険性を増加させた可能性が高い」とし、「原告の他の既存疾患によって視神経炎が発病したとは断定し難い」と指摘した。累積した過労とストレスが視神経炎の発病に影響を及ぼしただろうという趣旨の裁判所の鑑定所見も後押しした。

Aさんを代理したキム・ヨンジュン、キム・ウィジョン弁護士は「有害物質によって発病した傷病の特性上、被災者が有害物質の成分とばく露量などを証明すべきだが、具体的な資料を確保して証明することは不可能だった。」「しかし、慢性過労と深刻な業務ストレスが認められ、傷病と公務の間に相当因果関係が認められたことに意義がある」と話した。

2023年5月8日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=214927