「合意」金額が平均賃金か? 最高裁「支給義務金額を含まねば」 2023年04月20日 韓国の労災・安全衛生

ソウル瑞草区の最高裁庁舎全景。/チョン・ギフン記者

労災の被災労働者に、実際には支給されていなくても、事業主が支給義務を負担する賃金額も『平均賃金』の計算に含めるべきだ、という最高裁の判決が出た。最高裁は、勤労福祉公団が事業主と遺族が合意した金額を反映させて労災被災者の平均賃金を計算したのは違法だとした。

『平均賃金』は労災補償保険法によって災害補償の基準とする金額だ。被災者が死亡するなど、平均賃金を算定しなければならない理由が発生した日以前の三ヶ月間に支給された賃金総額を、該当期間の総日数で割って計算する。『賃金総額』には労働者が受け取った金額だけでなく、使用者が支給義務を負担する金額も含まれるべきだというのが最高裁判所の態度だ。

最低賃金未達の平均賃金に事業主・遺族合意

<毎日労働ニュース>の取材によると、最高裁判所三部は夜間警備員の配偶者が、勤労福祉公団に対して起こした遺族給付と葬祭料の平均賃金の訂正と保険金の差額不支給処分取り消し訴訟の上告審で、原告敗訴の判決を行った原審を破棄し、事件を釜山高裁に差し戻した。

訴訟は警備会社所属の夜間警備員のAさんが、2019年1月に警備室で心不全で亡くなったことから始まった。Aさんが最低賃金(2019年基準8350ウォン)を受け取っていなかっために問題が大きくなった。Aさんの平均賃金(5万6250ウォン)は、当時の最低補償基準金額(6万6800ウォン)よりも低かった。公団は給与台帳に基づいて平均賃金を計算し、Aさんの妻に遺族給付と葬祭料を支給した。

遺族は労働庁に、最低賃金法違反を理由に事業主を告訴した。事業主はその年の5月、未払い賃金と退職金など4400万ウォンを遺族に支給し、民・刑事の不提訴に合意した。しかし、遺族は平均賃金が9万5千ウォンだとして、公団に遺族給付と葬祭料の差額を出すように要求した。公団は平均賃金を8万7000ウォンに訂正して差額を支給した。事業主と合意した金額を基に計算したものだ。審査と再審査請求も棄却された。

遺族「公団が勝手に平均賃金を算定」

Aさんの妻は2020年9月に「追加で受け取るべき未払い賃金に平均賃金が反映されなかった」として訴訟を起こした。遺族側は「平均賃金の算定は合意対象にならないのに、公団が勝手に平均賃金を算定した」とし、「死亡三ヶ月前の基本・延長・夜間・休日勤労時間をベースに、最低賃金を適用した平均賃金は9万2000ウォンだ」と主張した。

一審は遺族の請求を棄却した。公団が平均賃金を最大限事実通り算定したもので、十分合理性があるという趣旨だ。裁判所は未払い賃金の内、退職金を除いた金額の比率が77%だと解釈した。これを根拠に、公団が、事業主と合意した金額の77%を未払い賃金と見て平均賃金を算定したことは合理的だと判断した。Aさんの追加勤務も認めなかった。

控訴審も、「公団は平均賃金を最低補償基準金額より大幅に上方修正して処分をしただけで、単純に合意された金額の一部だけを恣意的に平均賃金の訂正に反映したわけではない」と判示した。同時に、遺族が平均賃金算定の根拠の資料を明らかにできていないと指摘した。

最高裁判所「合意は事後的な意思に過ぎず、実際の金額とは違う」

最高裁の判断は違った。公団が算定した平均賃金は正確でない可能性が高いと見た。裁判所は「故人が死亡したことによって、平均賃金を算定すべき理由が発生したので、三ヶ月間に現実的に支給された賃金額はもちろん、その時点で現実的に支給されていなくても、会社が支給義務を負担する賃金額も平均賃金の計算に含めるべきだ」と判示した。

同時に「公団はこのような方式に従わず、告訴事件で原告が主張した金額と(事業主と遺族が)合意した金額を反映して故人の平均賃金を計算した」とし、「これは(原告と会社の)事後的な意思により計算した金額に過ぎず、故人が支給されるべき金額を基に平均賃金を計算したものとは見難い」と指摘した。合意した金額は実際の未払い賃金とは見難いということだ。

実際の勤務時間と給与額が記載されている勤労契約書や給与台帳を根拠に、賃金額は十分に計算できると判断した。裁判所は「夜間警備員として勤めた故人が、死亡以前の三ヶ月間に提供した夜間勤労に対して、勤労基準法によって支給されるべき加算手当ての中に生前支給されなかった部分があれば、平均賃金の計算に含めるべきだ」と説明した。

裁判所は「原審は、故人が死亡した当時に支給されなかった賃金が存在するのか、存在するならばその金額がいくらなのかに関して審理しないまま、公団が故人の平均賃金を8万7000ウォンと計算し、これを超過する金額を基礎とした遺族給付と葬祭料の差額支給を拒否したことは適法だと判断した」として「このような原審の判断には、平均賃金に関する法理を誤解し、判決に影響を及ぼした誤りがある」と判示した。

2023年4月20日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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