『労災自殺』、36%が過労・・・半分は職場経験が5年以下 2022年12月20日 韓国の労災・安全衛生
Aさんは2017年7月、勤めていた情報通信業者で運営関連の業務を行い、重点課題を管理し、企画の責任を負う幹部に昇進した。それ以来、仕事が殺到した。一日に12時間以上、一週間に60時間以上も働かなければならなかった。朝8時20分頃出勤して、遅ければ夜11時か12時頃に退勤した。
配偶者には「私はほとんど毎日、一番遅く退勤する。夜は事務室の電気を消して、携帯電話の光で仕事をする」とも話した。また、本部の仕事のやり方が余りに非合理的で非効率的で、辛いと訴えた。仕事が苦しくて、本部長に職務の変更を要請したが聞いてくれなかった。
Aさんはついに2019年3月、自宅のトイレで自ら生命を絶っているのが発見された。昨年、勤労福祉公団の疾病判定委員会は、Aさんの死は業務上の死亡だとし、労災であることを認め、遺族に遺族給付と葬祭料を支給するように判断した。
Aさんのように、過労と職務ストレスなどを理由に自ら世を去った労働者の遺族が、労災を申請して承認される事例が増えている。市民団体『職場の甲質119』と基本所得党のヨン・ヘイン議員室が、2019年から3年間の労災申請資料を分析した報告書によれば、自殺によって労災を申請したケースは、2019年の72件から昨年の158件に、倍以上に増加したことが分かった。この内、労災と認められた事例は、2019年の47件から2021年の88件に増えた。
職場の甲質119が、最近3年間に遺族が労災申請をして承認された196件の内、勤労福祉公団から資料を受け取った161件の業務上疾病判定書を分析した結果、労働者を極端な選択に追い込んだ最も大きな理由は、Aさんのケースのように過労だった。161件のうち、過労による死は58件(重複事由を含む)で、161件のうちの36%に達した。
懲戒と人事処分(52件、32.3%)が続き、職場内いじめも48件、29.8%になった。暴行(7件、4.4%)とセクハラ(4件、2.5%)がこれに続いた。
このように労災申請と承認件数が増えたのは、過労と職場内いじめなどが、労働者を死に至らせるほど深刻な社会的な暴力だという認識が深まった影響と想われる。報告書の作成に参加したチェ・スンヒョン労務士は「過労と、懲戒と人事処分、職場内いじめなどが同時に、(労災の原因として)重複して作用するケースが多かった。」「職場内いじめが別の事件、自殺の要因と連係して作用していることが解る」と話した。
労災自殺の被害は、勤続年数が短いほど集中する傾向が判った。死亡者の半分(50%)が5年以下の勤務者だった。過労による死亡の場合、58件のうち勤続5年以下が37人で、63%に達した。範囲を勤続10年以下に拡げれば44人(75%)に達する。職場内いじめ被害による死亡者も56.3%(27人)が勤続5年を超えていない。
報告書は「故人の遺族が(配偶者や子供ではなく)両親であるケースが22%にもなるとして、自殺労災の労働者の中で、若い労働者が相当数だと想われる」とし、「職場で、勤続年数が短く、若い労働者に対する特別な保護が必要だ」と指摘した。職場の甲質119とヨン・ヘイン議員室は、自殺労災被害の現況と対策を議論する討論会を21日に国会議員会館で開催する。
2022年12月20日 ハンギョレ新聞 チョン・ジョンフィ記者