フォークリフトに敷かれたんだけど、これ犯罪行為?裁判所は「業務上災害」 2022年11月17日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

中国系韓国人労働者が、転覆したフォークリフトの下敷きになって亡くなったにも拘わらず、『犯罪行為』という理由で業務上災害不承認とされたが、裁判所がこれを逆転して労災を認めた。勤労福祉公団は、労働者が事業主の承諾なしに、無免許でフォークリフトを運転した重過失に伴う事故だと主張したが、裁判所は受け容れなかった。

無免許状態で他社のフォークリフトを運転、裁判所「事業主の支配・管理下にあった」

<毎日労働ニュース>の取材によると、ソウル行政裁判所は、中国系韓国人・A(死亡当時59歳)さんの配偶者が勤労福祉公団に起こした遺族給付と葬儀費不支給処分取り消し訴訟で、原告勝訴の判決を行った。

Aさんは、2021年5月から全羅北道にある骨材製造会社の下請け会社のB社で、機械管理と清掃業務を担当した。入社一ヵ月後の6月25日に、昼食を終えて、フォークリフトで約10キロの潤滑油ポンプを運搬していて、急斜面の坂道で転覆し、フォークリフトの下敷きになって死亡した。

Aさんの配偶者は、業務上の災害として公団に遺族給付と葬儀費を請求したが、拒否された。Aさんが無免許で他社のフォークリフトを勝手に運転したのは重過失による『犯罪行為』という理由だ。当時、Aさんが運転していたフォークリフトは、骨材事業場でクラッシャー設置の工事をする業者の所有だった。これに対して遺族は直ちに訴訟を起こし、「事業場でフォークリフトを運転する時は免許が不要で、潤滑油ポンプを運搬していた時に発生したので、業務上災害に該当する」と主張した。

裁判所は公団の判定を覆し、遺族側の手を挙げた。裁判所は、「故人が事故当日に事業場内でフォークリフトを運転して潤滑油ポンプを運搬した行為は、本来の業務行為または業務の準備行為や社会通念上、業務に伴うと認められる合理的・必要的な行為として、事業主の支配・管理下にあると見られる」と判示した。

先ず、公団の『犯罪行為』と言う主張を排斥した。裁判所は、「故人が免許なしでフォークリフトを運転したという事情だけで、直ぐに業務遂行性が否定されるわけではない」と指摘した。また下請けの代表が、「一般貨物車でも進入が不可能な傾斜路を認知できずに事故が起きたようだ」と証言した内容を根拠に挙げた。免許なしで運転したことが直接的な原因ではないと見た。

下請け代表「運転指示はなかった」の主張に、裁判所「無免許運転、黙示的承認」

B社の代表は裁判で、事実確認書で「事故当日、フォークリフトで運搬することは故人の判断によって行われ、無免許運転に対する黙示的な承諾はなかった。」「普段も業務上フォークリフトを使用することはなく、フォークリフトの運転に関する指示はなかった」と陳述した。

裁判所は、Aさんは事実上、事業主の支配・管理を受けたと解釈した。裁判所は、「Aさんの事故は、運転の過程で通常伴う危険の範囲内で発生した事故」で、「機械に潤滑油を塗る業務は、機械の作動が止まっている昼休みにだけに可能なことを考慮すれば、事故が休憩時間に発生したという事情は、業務と災害の間の相当因果関係を否定する理由にはならない」と判示した。更に、約10kgの潤滑油ポンプを、フォークリフトなしで運搬することも容易ではなかったと推定した。

他社のフォークリフトを運転したという事実も、業務上災害を否定する根拠にはならないと判断した。フォークリフトがないB社の労働者が、他社のフォークリフトを頻繁に使って、免許がないのにフォークリフトを運転していたという同僚職員の陳述が、これを後押しした。裁判所は「B社の代表は、所属する勤労者たちがフォークリフトを無免許で運転することを黙示的に承認してきたと見られる」と説明した。

2022年11月17日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=212011