兵士死亡の「罪責感」に軍の将校が自死、最高裁「公務上災害」 2022年10月05日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

同じ部隊の兵士の事故による死亡で罪悪感に苦しみ、極端な選択をした陸軍将校が、最高裁で公務上の災害を認められた。

<毎日労働ニュース>の取材によると、最高裁二部は、死亡した将校・Aさんの配偶者が、京畿北部報勲支庁に対して提起した報勲補償対象者要件非該当決定処分の取り消し訴訟の上告審で、原告敗訴とした原審を破棄し、事件をソウル高裁に差し戻した。

兵士の声の幻聴に悩まされて公傷で転籍
報勲補償の対象外の決定に遺族訴訟

1999年に少尉に任官されたAさんは、2001年8月頃、歩兵師団の砲隊長として勤務していた当時、部下の兵士が死亡する事故を経験した。兵士は鉄柱の切断作業中に、鉄柱に頭をぶつけて亡くなった。

その時から、Aさんは罪悪感に苦しんだ。その後、他の部隊に移ったが、月最大50時間の超過勤務と補職の変更によるストレスが累積した。結局、翌年7月に統合失調症と診断された。死亡した兵士の声が聴こえるなど、幻聴に苦しんだ。

Aさんは薬物の服用で症状は好転したが、2014年頃から再び不眠症と幻聴を訴えた。二回入院して治療を受け、統合失調症と重症のうつ病エピソードなどの診断が下された。軍はAさんの病気を公務傷病と認めた。

2015年に公務傷病で転役したAさんは、2年後に極端な選択をした。報勲審査委員会は、国家有功者と報勲補償対象者に該当しないと決定した。Aさんの妻は「夫の病気と軍での服務遂行とは因果関係が認められる」とし、2020年7月に訴訟を起こした。一、二審は「Aさんの傷病が軍人としての職務遂行によって発病したり、自然な経過以上に悪化したとは見られない」とし、Aさんの妻の請求を棄却した。

最高裁「職務上のストレスだけを訴えた」
任官以前は『建康』、同僚も「責任感が強い」

しかし、最高裁は原審を覆し、公務上の災害と判断した。Aさんが部下の兵士が死亡した当時、勤務を変えてやれなかったことについての罪悪感、勤務地移動に適応する難しさなど、職務上のストレスだけを訴え、他の要因に関する困難があったという事情が発見されないとした。

実際、Aさんは、任官以前は精神疾患の治療履歴がなく、軍の同僚たちも責任感が強く、誠実に勤めたという趣旨の確認書を裁判所に提出した。一審裁判所の鑑定も、部下の兵士の死亡後、幻聴を経験し始めたという内容の所見を出した。統合失調症の診断経緯書もこれを裏付けた。最高裁は「死亡した兵士に関する幻聴など、死亡事故による精神的ストレスが(統合失調症診断の)直接的原因」と判示した。

最高裁は「故人は職務上体験した特別な経験にも拘わらず、続いた業務上の負担と緊張が耐え難い外的ストレス要因として作用し、傷病の発病・悪化に寄与したと判断する余地が多い」と判示した。環境的なストレスを受ける場合にも、統合失調症が発病する可能性があるという判断だ。

Aさんの遺族を代理したオ・ミンエ弁護士は、「最高裁は職務遂行との因果関係の判断で、これまでに確立された法理に照らして具体的な事情を積極的に考慮した」、「遅くなったが、故人と遺族の名誉を回復できる判決という点に意義がある」と話した。

2022年10月5日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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