日没制を廃止すれば安全運賃制の成果が出る 2022年9月29日 韓国の労災・安全衛生

共に民主党のチョ・オソプ議員室と公共運輸労組貨物連帯本部の主催で28日に行われた貨物自動車安全運賃制立法のための国際事例分析討論会。/チョン・ギフン記者

貨物自動車安全運賃制が効果を挙げるために、長期間にわたって制度を運用してきた外国の事例が紹介された。韓国の安全運賃制は2020年に施行され、今年末で終了する日没条項を定めている。1979年から安全運賃制を導入したオーストラリアのニューサウスウェールズ州は、1989年から昨年までに、安全運賃制の導入で道路の安全を改善し、約205人の命を救ったと分析された。

導入地域における死亡事故の減少率は、他地域の2倍
「安全運賃制の効果は長期的に観察しなければならない」

公共運輸労組貨物連帯本部は28日、『貨物自動車安全運賃制立法のための国際事例分析国会討論会』を開催した。討論会は、共に民主党のパク・ヨンスン、チョ・オソプ、チェ・インホ議員が主催した。26日から訪韓している国際運輸労連(ITF)が討論会に参加し、安全運賃制導入の国際的な現況を話した。安全運賃制は、貨物自動車の過積載・過労・スピード違反を防ぐために、一種の適正運賃、最小運賃を定め、これを支給する制度だ。韓国では「貨物自動車運輸事業法」(貨物自動車法)が改正され、2020年に施行されたが、今年末に制度が日没となる。貨物連帯本部は2つに制限されている適用品目の拡大と、日没制の廃止を要求している。

グリフィス大学のデビッド・フィッツ名誉教授(経営学)は「オーストラリアのニューサウスウェールズ州が1979年に安全運賃制を導入し、定量的に把握が可能な道路の安全改善が明らかになった」と強調した。フィッツ名誉教授によると、1989年から昨年まで、ニューサウスウェールズ州とオーストラリアのその他の地域で発生したトレーラー式トラックの死亡事故を比較すると、ニューサウスウェールズ州では1年に約0.1%ずつ死亡事故の割合が減少した。一方、安全運賃制が導入されていない他の地域は、死亡事故の発生率が維持される傾向にある。事故発生率が下がらなければ、更に171件の事故が発生しただろうし、事故1件当たり1.2人が死亡するということを考慮した時、安全運賃制の導入で約205人の生命が救われたと説明した。「ニューサウスウェールズ州は韓国の1/6の規模」とし「ニューサウスウェールズ州の死亡事故減少率を韓国に適用すれば、韓国では1200人余りの生命を救うことができるレベル」と分析した。「安全運賃制は1979年から始まったので、1989年からのデータを分析した該当の研究より、実際には更に多くの死亡者減少効果があっただろう」と付け加えた。

フィッツ名誉教授は「安全運賃制の効果を分析する時は、長期の傾向を分析すべきだ」と提言した。交通事故に影響を及ぼし得る変数が多様であるためだ。オーストラリアでは1989年から昨年まで、ニューサウスウェールズ州だけでなく、他の地域でも死亡事故の発生率が減少する傾向を示している。ところがニューサウスウェールズ州の死亡事故減少率が他の地域より顕著に高かった。「オーストラリアのその他の地域では、年間2%から2.1%の死亡事故減少率を示し、ニューサウスウェールズ州は、年平均2.6%から5%減少した」、「オーストラリア全般の道路安全の改善だけでは説明が不可能で、安全運賃制施行の結果と見るべきだ」と話した。

国際運輸労連・道路運輸分科のイム・ウォルサン副議長は「オーストラリアの事例の核心は『運賃を引き上げれば事故率が減少する』ということ」で、「韓国の安全運賃制は明らかに先導的なモデルであることは明らかだが、日没制と少ない品目のために効果が制限的なので、日没制を廃止し、品目を拡大して、制度の安定性を確保する必要がある」と主張した。

ベルギー、ニュージーランド「韓国のように安全運賃制を導入すべき」

6月に貨物連帯本部が安全運賃制の日没制廃止と品目拡大を目的にストライキをした当時、荷主協議会の関係者が「安全運賃制は世界的に類例のない制度」と発言した。しかし、安全運賃制はオーストラリアのニューサウスウェールズ州だけでなく、ブラジル、カナダなどでは、最低運賃制の形で運用されているが、韓国の安全運賃制が先導的な制度と評価されているのは事実だ。

ニュージーランドのファーストユニオン戦略事業室のオニタ・ローゼンテッター室長は「韓国の(安全運賃制)経験はニュージーランドにも非常に大きな意味がある」、「韓国の安全運賃制に世界が注目している」と評価した。ニュージーランドは運送会社3社が物流市場で大きな影響力を行使している。ローゼンテッター室長によれば、貨物労働者全体の60%が個人事業者である特殊雇用労働者だが、彼らは団体交渉の影響力から排除され、労組加入率も低い。貨物労働者は低賃金・長時間労働に苦しめられ、劣悪な労働条件で競争しなければならない。ニュージーランドの産業安全保健庁もやはり、低賃金と劣悪な産業安全保健の関連性を指摘し、「規制によって、底に向かう競争を避ける方法を設計する機会を見ることができる」と話した。ファーストユニオンは安全運賃制の導入キャンペーンを行っている。最近、労働党政府が関心示し、安全運賃制に類似の制度が適用されるという見通しも出ている。

ベルギー運輸労組(BTB)のトム・ピーターズ運輸・物流本部長も「価格ダンピングで搾取される貨物労働者の現実を改善するために、安全運賃制の法制化を目標にしている」と話した。ベルギー運輸労組は『運送は無料ではない』キャンペーンを始め、大衆と使用者団体、政界に、安い運賃で働く貨物労働者の現実を知らせてきた。現在、使用者団体と一緒に多様な運送品目に関する運賃表を作っている。運賃表が完成すれば、政府が安全運賃制を設計する土台になるように、この運賃表を受け容れるように提案する計画だ。

2022年9月29日 毎日労働ニュース チョン・ソヒ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=211197