「労災隠し」サムソン物産の下請けに損害賠償の判決 2022年9月16日 韓国の労災・安全衛生

写真は記事とは無関係。/チョン・ギフン記者

サムソン物産の下請け業者が労災を隠蔽し、裁判所から損害賠償の判決を受けた。労働者が被った精神的な損害を賠償せよという趣旨だ。下請け業者の責任者たちは、労災補償保険で労災を処理する代わりに、会社の経費で治療費を支給して労災を隠蔽したことが明らかになった。

下請安全管理者が指を骨折
会社の金で治療費を支払い「正常出勤」を偽装

「毎日労働ニュース」の取材によると、ソウル中央地裁は、下請け会社の安全管理者Aさんがサムソン物産と下請け会社などに起こした損害賠償訴訟で、原告一部勝訴の判決を行った。

事件は、Aさんが2019年5月に高徳産業団地の半導体建設現場で働いていて、指を骨折したことから始まった。工事はサムソン物産が施工したが、エレベーター設置工事をB社に請負わせ、B社は再びC社に安全管理業務を委託した。AさんはC社に所属する現場安全管理者だった。

ところが下請け業者は労災の隠蔽に汲々としていたことが明らかになった。C社の経営者であるD氏とB社の現場所長は、労災を報告することによる不利益を避けるため、労災保険で処理せず、会社の費用で治療費を支払った。また、三日間の休業期間をAさんが正常出勤したようにして給与を支給し、労働災害調査票を雇用労働部に提出しなかった。

検察は彼らに産業安全保健法違反の容疑を適用して裁判に付し、裁判所は罰金100万ウォンの略式命令を出した。B社の現場所長は、労災を隠蔽した事実はないとして正式な裁判を請求したが、今年2月、一審で有罪を宣告された。

Aさんは業務上災害に該当し、労災隠蔽で精神的な損害を受けたとして、2020年1月に訴訟を起こした。特に、サムソン物産が療養給付申請に対して、労災発生を否認する意見書を勤労福祉公団に提出したり、会社と議論しなかったことを非難するなど、労災隠蔽に同調したと主張した。

一方、C社は、労災隠蔽に関与した事実はないと反論した。また、B社の現場所長が善意で三日間の休業を有給で処理してくれたので、会社とは関係がないと抗弁した。サムソン物産も、療養給与申請の後になって事故の事実を知り、自主調査の結果、意見書を出しただけだと主張した。

「労災多発」履歴を心配して公傷を求める
サムソン物産の責任は「証拠はない」として認めず

裁判所は労災隠蔽があったとして、下請けに不法行為による慰謝料100万ウォンを支給せよと命じた。裁判所は「B社の現場所長とD氏は、A氏が業務中に負傷した事実を知っていたにも拘わらず、公傷で処理することにして労災を隠蔽した」と指摘した。公傷による処理は、労働者が労災に遭った時、労災保険で処理する代わりに、会社が治療費を補償する方法だ。

雇用労働部の指針でも、事業主が会社の費用で補償した事実が確認されれば、労災隠蔽情況と見ている。裁判所は、Aさんが自費で治療を受けた後、B社の現場所長が休業三日分を出勤したものとして処理して給与を支給し、D氏が治療費を追加で支給したのは「公傷処理」と判断した。合わせて、「労災処理を勧めたが、Aさんが断った」という現場所長の陳述は信じ難いと強調した。

更に、現場所長はAさんに、「当時、サムソン物産の工事現場で事故が少しあって、それまで知られてはまずいので、公傷で静かに処理しよう」と話していたことが把握された。D氏はこのような内容を捜査機関で供述した。サムソン物産の工事現場は、2018年3月、作業台の崩壊で下請け労働者1人が亡くなり、4人が負傷する事故が起き、昨年6月にも50代の下請け労働者がフォークリフトに撥ねられて亡くなった。事故が知られることを心配して、もみ消したということだ。

但し、サムソン物産の責任は認められなかった。裁判所は「サムソン物産が勤労福祉公団に労災を否認する内容の意見書を提出し、療養給付の申請に否定的な立場を明らかにしたとしても、下請けの労災隠蔽に関与したとは見難い」とした。また、元請け・下請けのいすれも、産業安全保健法違反に対する不法行為責任はないと判断した。

2022年9月16日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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