「浮気を疑われ」殺害された職場の上司、裁判所が労災認定 2022年9月15日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

妄想障害で妻の浮気を疑った夫に殺害された職場の上司の遺族が、裁判所で業務上災害を認められたことが確認された。裁判所は、職場内の人間関係の危険が現実化して起きた事故と判断した。

「毎日労働ニュース」の取材によると、ソウル行政裁判所は、死亡した労働者A(当時40歳)さんの妻が勤労福祉公団に起こした遺族給付と葬祭料不支給処分取り消し訴訟で、原告勝訴判決を行った。

浮気疑念症の夫、妻が退社した4ヵ月目に犯行
『職務の危険性はない』公団の判定に対し訴訟

Aさんは2020年3月10日の午後6時15分頃に退社し、会社正門前に駐車していた自分の乗用車に乗ろうとしていたところ、退社した部下の職員の夫のB(43))に、凶器で数回刺されて死亡した。Bは、自分の妻とAさんが不倫関係にあるという妄想に陥り、あらかじめ凶器を購入して車をレンタルした後、近くで待機していたが、Aさんが会社から出てきたとろを凶行に及んだことが分かった。Bの携帯電話のメモには、Aさんと妻の関係を疑う内容と、Aさんの車輌の番号が書かれていた。

普段から妻の浮気を疑う病的な症状が激しかったBは、夜遅く訪ねてきて、会社のワークショップから妻を連れ出し、Aさんと自分の妻が面談するのを見て「殺してやる」と脅迫したことが把握された。Bの妻は、夫の妄想障害が会社に害を与えることを心配して退社した。

Bは殺人罪で起訴され、一審で懲役15年を宣告され、昨年3月の控訴審でも原審の判決が維持された。裁判所は妄想障害による判断力低下で犯行に及んだと見た。

Aさんの妻は、夫の事故が業務上災害に当たるとし、遺族給付と葬祭料の支給を請求した。しかし公団は、「事業主の支配管理下にあったのではなく、通常の退勤の過程で発生すると予測できる範囲内の事故ではない」として、不支給処分をした。Bの妻が退社して4ヵ月が過ぎた時点で事故が発生し、職務上内在していた危険性は消えたということだ。

Aさんの妻は、職場内の人間関係に内在した危険が現実化したとし、昨年7月に訴訟を起こし、正常な退勤の過程で事故が発生したので、業務上災害が認められるべきだと主張した。

裁判所「故人の業務を契機に事故が発生」

裁判所はAさんの妻の主張を受け容れた。「本事件の災害は、職場内の人間関係に内在したり通常伴う危険が現実化して発生したもので、業務との間に相当な因果関係がある」と判示した。AさんとBの妻が個人的に接触したと見るに値する事情がなく、『私的な関係』によって事故が発生したとは見られないという趣旨だ。

特に、チーム長のAさんは部下の職員との業務上の接触が避けられなかった点が、主な根拠として作用した。裁判所は「Bは故人とBの妻の面談場面と退勤後に業務指示をしているのを目撃し、不倫関係を疑うことになった」とし、「Bが二人の間の関係を疑うようになったことも、故人の業務が契機になった」と判示した。

同時に「Bの精神疾患が災害発生に影響を及ぼしたり、退社後に事故が発生したという事情があっても、職場内の人間関係に内在した危険が現実化したということは変わらない」とし、「故人の死亡と業務との間の因果関係が断絶したとは言えない」と強調した。これを前提に(業務関連性の認定に)事故発生場所が事業場であったり、通勤過程中に事故が発生したことを要しないとした。

Aさんの妻を代理したキム・ヨンジュン、キム・ウィジョン弁護士は、「業務上の人間関係から始まったとすれば、例外事由に該当しない限り業務上災害に該当するという原則を幅広く解釈し、他の理由を挙げても業務関連性を否定できないということを確認した判決」と説明した。

2022年9月15日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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