「金鎔均さん死亡」のあの下請け会社、今回は労災取り消し訴訟 2022年9月5日 韓国の労災・安全衛生

忠清南道泰安郡の泰安火力発電所全景/資料写真チョン・ギフン記者

泰安火力発電所で亡くなったキム・ヨンギュンさんが働いた韓国西部発電の下請け業者の韓国発電技術が、所属労働者の業務上災害承認の取り消しを求めた訴訟を起こしたが、本案の判断もされないまま却下されたことが確認された。

韓国発電技術は、労災の承認による労災保険料の増額と、労災率の上方修正による入札での不利益を主張した。裁判所は、労災の認定によって具体的な利益は侵害されておらず、処分の取り消しを求める利益がないと判断した。

「毎日労働ニュース」の取材によると、ソウル行政裁判所が、韓国発電技術が勤労福祉公団に提起した療養給付決定の取り消し訴訟で、却下の判決を行った。

事件の発端は、労働者のAさんが騒音性難聴を患ったことから始まった。Aさんは1978年10月から所属業者を変えながら2016年1月まで働き、その後、発電技術で機械・電気業務総括整備室長として働いた。そして2020年4月に「両側騒音誘発聴力損失」と診断され、公団に療養給付と障害給付を請求した。

公団は昨年7月、Aさんの聴力損失が業務上の疾病に当たるとして、療養を承認する処分を行った。そして、疾病発生の主な事業場を明確に判断するのは難しいと見て、Aさんが最後に勤務した発電技術を適用事業場に選定した。公団の『療養決定時の適用業務関連判断に関する処理指針』に従ったものだ。

発電技術は労災承認から3ヶ月後の昨年10月、公団の療養給付決定の取り消しを求める訴訟を起こした。一方、公団は、発電技術は処分相手ではない第三者であり、原告適格がないと反論した。行政処分で法律上保護される、個別的・直接的・具体的利益がある場合ではないという主張だ。

裁判所「発電技術、具体的利益侵害はない」

「持続的な騒音ばく露は業務上疾病に該当」

裁判所は公団の主張を受け容れた。「発電技術は処分の根拠法規によって保護される、個別的・直接的・具体的利益を侵害されたとは見られない」とし、「処分の取り消しを求める法律上の利益がない」と判断した。事業主に処分の取り消しを求める利益がないという趣旨だ。

このような判断には、Aさんが処分の直接の対象という部分が作用した。裁判所は「療養承認決定は、事業主である発電技術を直接の対象にしたものではないだけでなく、直接的に義務を賦課したり、権益を制限する法律効果を発生させる侵害的な行政処分とは見られない」と判示した。

発電技術は、Aさんは他の事業場での「業務上の事故」で疾病が生じたと主張し、公団が「業務上の疾病」と判断したことは誤りだとも抗弁した。しかし、裁判所は「療養給付申請書によると、Aさんが継続的な騒音ばく露を災害の原因と主張していると見られる」とし、業務上の疾病であると判断した。また、発電技術でも騒音へのばく露があったと判断して、公団が事業場を特定したとして、発電技術側の主張を排斥した。

労災承認で労災率が高まり、公企業への入札参加時に、審査基準で不利益を受けるおそれがあるという発電技術側の主張も、受け容れなかった。裁判所は「雇用労働部長官の災害率公表は、抗告訴訟の対象になる処分に該当する」とし、「発電技術は抗告訴訟を提起することによって、それによる不利益を除去できる」と、線を引いた。抗告訴訟は行政庁の違法な処分を取り消し、又は変更する訴訟をいう。

2018年12月に泰安火力発電所でベルトコンベヤーに挟まれて亡くなったキム・ヨンギュンさんの死亡事故責任に関連して、ペク・ナムホ元・韓国発電技術代表は、2月に懲役1年6月、執行猶予2年、社会奉仕160時間を宣告されている。元請けの西部発電のキム・ビョンスク元・代表は無罪を宣告されて論争が起き、6月から控訴審が行われている。

キム・ヨンギュン財団主催で4月19日に行われた『処罰のないキム・ヨンギュン裁判一審、裁判所に尋ねる』討論会で、キム・ヨンギュンさんの母親・キム・ミスク理事長が発言している。/チョン・ギフン記者

2022年9月5日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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