【速報】消防士としての職業曝露は中皮腫や膀胱がん等を引き起こす-国際がん研究機関(IARC)がグループ1に分類(2022年7月1日)
IARCモノグラフが消防士としての職業曝露の発がん性を評価
International Agency for Research on Cancer, Press Release No.317, 2022.7.1
2022年7月1日フランス・リヨン-世界保健機関(WHO)のがん期間である国際がん研究機関(IARC)は、消防士としての職業曝露の発がん性を評価した。
3人の招待専門家を含む、8か国25人の国際的専門家のワーキンググループの会議が、IARCモノグラフ・プログラムによってリヨンに召集された。
利用可能な科学的文献を徹底的にレビューした後にワーキンググループは、ヒトにおけるがんについての十分な証拠に基づいて、消防士としての職業曝露をヒトに対して発がん性(グループ1)に分類した。
最終評価の概要は今日ランセット・オンコロジーにオンライン出版された。詳細な評価は、IARCモノグラフ第132巻として、2023年に発行される予定である。
ヒトにおけるがんについての証拠
消防士としての職業曝露は、がんを引き起こす。以下のがん種について、ヒトにおけるがんについての十分な証拠が存在する:中皮腫及び膀胱がん。
以下のがん種について、ヒトにおけるがんについての限定的な証拠が存在する:結腸がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚の黒肉腫、及び非ホジキンリンパ腫。
強力なメカニズム的証拠
消防士としての職業曝露は、発がん因子の10の主要特性(KCs)のうちの5つを示すという、曝露したヒトにおける強力なメカニズム的証拠が存在する:「遺伝毒性である」(KC2)、「エピジェネティックな変化を引き起こす」(KC4)、「酸化ストレスを引き起こす」(KC5)、「慢性炎症を引き起こす」(KC6)、及び「受容体介在作用を調節する」(KC8)。
消防士の曝露
世界には1,500万人以上の消防士がいる。「消防士」という言葉は、産業的、自治的及び自然的環境、自然と都市との境界、及びその他の環境における、有給及び無給の労働者の異種集団を包含している。いくつかの環境では、気候変動の影響により、消火活動の曝露が時間の経過とともにより一般的になってきている。
消防士は、構造物火災、森林火災、車両火災など様々な種類の火災や、その他の事象(例えば車両事故や建物の倒壊など)に対応する。
消防士は、火災による燃焼生成物(例えば多環芳香族炭化水素、揮発性有機化合物、金属、微粒子など)、ディーゼル排気、建材(例えばアスベストなど)、その他のハザーズ(例えば熱ストレス、交代勤務、紫外線など)の複雑な混合に曝露している。また、繊維製品への難燃剤の使用、消火用泡消火器への残留性有機汚染物質(例えばペルフルオロ物質、ポリフルオロ物質など)の使用は、時代とともに増加傾向にある。
この混合には、IARCモノグラフ・プログラムによりグループ1(ヒトに対して発がん性)、グループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性)、グループ2B(ヒトに対して発がん性の可能性)にすでに分類されている多くの因子が含まれている可能性がある。経皮曝露、吸入及び摂取が一般的な曝露経路であり、消防士のバイオマーカー研究では、多環芳香族炭化水素、難燃剤及び残留性有機汚染物質への曝露マーカーが高いレベルであることが判明している。
IARCモノグラフの分類
IARCモノグラフの分類は、ある物質または因子ががんを引き起こす可能性があるという証拠の強さを示している。IARCモノグラフ・プログラムは、がんハザーズ、つまり、曝露ががんを引き起こす可能性を特定することを目的としている。しかし、分類は、異なるレベルでのまたは異なるシナリオにおける曝露に関連する発がんリスクのレベルを示すものではない。同じ分類が与えられた物質または因子に関連する発がんリスクは、曝露の種類や程度、ある曝露レベルにおける因子の影響の大きさなどの要因によって、大きく異なるかもしれない。
https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2022/07/pr317_E.pdf