アスベスト禁止に向かう太平洋島嶼国-PacWastePlusプロジェクト関連情報 2021年

ランス・リッチマン(太平洋地域寛容計画事務局(SPREP)PacWastePlusプログラム)

PacWastePlus地域プロジェクト:アスベスト

アスベスト含有物質(ACMs)は、建物建設にACMsを使用してきた歴史をもつ多くの太平洋島嶼国にとって重要な問題である。すべての種類のアスベストは人に対して発がん性があり、大気中に飛散したアスベスト繊維の吸入は深刻な肺疾患を引き起こす可能性がある。

プロジェクトの説明

この地域プロジェクトの目的は、アスベストとそのリスクに関する理解を促進し、各国が法的/規制的ACM禁止を採用・実施するのを援助し、ACM実務指針の採用を創出・支援し、ACMを適切に制御・管理するための支援ツールを提供することである。

このプロジェクトは何をするか?

プロジェクトは、以下のような支援的文書を開発するだろう。

〇アスベスト含有物質禁止政策覚書と起草の手引き
現状、アスベスト・ACM輸入禁止実施の選択肢、各選択肢の太平洋島嶼国の地域的及び個別状況に対する妥当性の分析。

〇ACM管理モデル行動規範
ACMの確認・認識、安全な補完・輸送・取り扱い・廃棄に対処することによってアスベスト繊維へのさらなる曝露を低減するための実用的リソースを提供する、アスベスト手引き文書のための実務指針の開発。

〇追加的リソース
太平洋島嶼国におけるあらゆる形態のアスベスト・ACMの製造・使用・再利用・輸入・輸送・保管・販売を禁止するために必要な法令及び/または規制をつくるための一連のリソースを編集する。これには、各国が容易に活用することのできる、アスベスト禁止のための政府説明や起草の手引きが含まれるだろう。

企業や地域社会向けのファクトシートやブックレット、ケーススタディ、研修の開発など、(法的及び非法的特異性を考慮して)太平洋地域でアスベストに対処するためのリソースの開発。

https://pacwasteplus.org/regional-project/804/

地域における有害廃棄物管理の強化

2021年9月8日、サモア・アピア-太平洋地域における水銀・アスベスト・医療廃棄物に対する認識と管理を強化する機会が、「回復力のある青い太平洋のための行動の加速」をテーマとした第30回SPREP(太平洋地域環境計画事務局)政府間会議に出席したメンバーに対して強調された。

太平洋島嶼国・地域は、時刻に輸入された危険物を適切に受け入れ・使用・保管・輸送する能力が限られている。

「地域の有害廃棄物管理施設へのアクセスが限られていることは、ほとんどの場合、使用済みの有害物質が環境に放出され、人の健康と環境衛生の双方に差し迫った持続的なリスクをもたらしていることを意味している」と、SPREP廃棄物管理・汚染防止(WMPC)プログラムのアクティング・ディレクター、アンソニー・タローリは言う。

タローリ氏は、各国は、国の立法・能力開発・啓発・教育活動によって支持されて、地域的に禁止するための多国間環境協定や地域協定をもっていると付け加えた。

さらに、各国は、これらの製品がもたらす社会的・環境的リスクを低減または根絶するために、これらの製品の安全な使用・取り扱い・保管・廃棄を制限・制御・管理する法的メカニズムを実施している。

「人の健康と環境衛生に重大なリスクをもたらす有害廃棄物の管理については、現在SPREPが実施しているドナー資金によるプロジェクトの焦点になっている輸入・使用の禁止に関する議論を含め、過去のSPREP会議で議論されてきた」と、タローリ氏はコメントした。

欧州連合が資金提供するPacWastePlusプログラムは、PacWasteプロジェクトによって実施された初期アスベスト管理作業を継続し、数か国においてアスベスト材料を積極的に除去するとともに、積極的かつ継続的なアスベスト管理ですべての国を支援する強力な法的・管理的ツールを提供する、多数の活動を行っている。

具体的な活動には、キリバス、ナウル、ニウエ、トンガでのアスベスト備蓄を安全に梱包・輸送・廃棄するためのアスベスト除去作業やいくつかの政府管理サイトが含まれる。

PacWastePlusプログラムはまた、ツバルの外島にある建物にアスベスト含有物質があるかどうかの評価や、税関職員に対するアスベストの安全な取り扱い・除去に関する適切なトレーニングの開発・実施も支援する予定である。

アスベスト含有物質の輸入を禁止し、使用・輸送・廃棄のための基準を確立する法的文書の実施をめざす諸国に対して、追加的支援が提供されるだろう。

PacWastePlusは、アスベスト禁止を導入するために必要なステップを明確に確認した「アスベスト管理立法改革の道筋」を開発した。この道筋は、アスベストの輸入禁止を導入するためには、アスベスト管理の選択肢の分析、問題点に関する手引き覚書/説明や、国の法令の起草を手引きする政策覚書など、行われる様々な作業を活用及び要約している。

これらのリソースの開発は、過去のSPREP会議が、アスベストを管理し、地域に対するその輸入を禁止するための具体的な支援を要請したことに直接対応したものである。

https://pacwasteplus.org/news/strengthening-the-management-of-hazardous-waste-in-the-region/

アスベスト管理立法改革の道筋

1. 立法の必要性の確認
アスベスト輸入/管理の問題があることを確認する。

2. 実現可能性の事前調査
アスベスト管理立法の導入により、どのような全体的な目的/成果を求めるかを確認する。対処すべき問題(輸入、保管、使用、輸送、廃棄等)と、その変更を管理するために使用または修正される可能性のある立法環境、及び、システム管理の責任者を確認する。

3. 政治的支援
持続的に資金調達の可能な立法の導入をさらに検討するための政治的支援を確保するための内部プロセスを実施する。

4. タスクフォースの設立
立法改革プロセスに取り組むための複数の省庁からなるタスクフォースを形成する。タスクフォースには、保健、環境、安全衛生(公衆衛生とは別の場合)省、廃棄物管理機関の代表と、適当な場合には非政府組織の代表を含めることが推奨される。

5. 立法環境の分析
どのような法令が改正され、あるいは最初から策定される必要があるかを検討する、立法環境の分析。(国の既存の法令の枠組みのなかで)政策目的を達成するためにもっとも効果的な法律文書に焦点を置くべきである。法律/規則を策定・実施するプロセスに関しては、継続的な機関間協力の仕組みとともに、主導機関を選択することが推奨される。

6. アスベスト・ACM国家行動計画
政策目標、役割、責任、課題及び提案される解決策の基礎を提供するために、アスベスト・アスベスト含有物質国家行動計画を策定する。効果的な計画は、明瞭なステップ、測定可能な行動、必要なリソース、及び明瞭なタイムフレームを含んでいるべきである。
計画には、国の優先事項、それらの目標を実現するための関連する諸活動、役割、責任及び監視計画を含めるべきである。検討される可能性のある問題の種類には、アスベスト/ACMの輸入禁止、アスベストに対する認識の改善、アスベストの把握と管理、安全なアスベスト除去、廃棄、及びアスベスト関連疾患を減少させるための地域的協力などがある。

7. アスベスト行動規範の策定
行動規範は、アスベスト作業時または遭遇時に、安全な作業に必要な要件を確保する方法について、規制機関、実務者、作業者及び一般の人々に助言するものである。それは、アスベスト作業、関連するリスク及びそれを管理する方法などの諸側面に関する情報を明確に提供する、実際的な文書である。

8. 協議
地域社会や企業が、懸念に対処でき、アスベスト関連疾患の予防という根本的な動機が明確に理解されているようにするために、地域社会や企業との協議をプロセスの早い段階で開始すべきである。

9. アスベスト・ACM国家行動計画と立法改革要求事項の採用
協議のフィードバックを利用して、アスベスト・アスベスト含有物質国家行動計画を採用する。

10. 法律起草
法律起草のプロセスは、担当者から現場の人々、すなわち税関職員、衛生監督官、労働安全衛生担当者や環境省/局職員などに知らされるべきである。これにより、予見可能な問題に最初から対処することができるだろう。

11. 規制影響評価
規制影響評価が必要かもしれない。規制影響声明は、対処しようとしている問題、検討された選択肢と関連する費用・効果、実施された協議、実施・見直しのために提案される手はずについてのハイレベルな要約である。政府がこのステップが必要と判断した場合には、関連する分析を活用するために、地域内の別のところでの事例を参考にすることができる。

12. 協議
政策と法律文書を検討するための協議活動を開発及び実施する。

13. 政治的支援
立法影響分析に関する協議の結果を踏まえて、システムを導入するための継続的な政治的支援を確認する。

14. システムの必要性・経費の確認
システムの設計とアスベスト・アスベスト含有物質国家行動計画の成果を活用して、改革を実施するために必要なインフラ、設備及び訓練などを確認する。

15. 立法採用プロセス
関係者との協議を通じて改革が確認され、法令が起草され、必要なインフラや契約が明確に理解されたら、立法文書の正式な政府による採用とシステムを実施するための承認を求める。

16. 税関・財務システムの創設
税関職員が輸入に対してシステムを適用できるように、また、環境遵守職員が必要な作業遵守監督を実施できるようにするために必要なすべてのシステム設計を開発及び実施する。

17. 政府職員の訓練
執行職員の訓練には、税関・国境管理職員やアスベスト・ACM使用禁止を執行する主導機関(例えば公衆衛生職員、環境職員または労働者安全衛生職員)が含まれる可能性がある。アスベスト及びアスベスト含有を疑われる物質を確認するためのインベントリーやビジュアルチャートを含むことのできるアスベスト行動規範など、明確な手続的文書を開発することによって、能力構築が支援されるだろう。重要な実施措置のひとつは、把握と対応のために適切な措置が講じられていることを確保するために、国境管理・税関システムを見直すことである。

18. 社会・産業界の注意喚起
輸入・使用ができなくなった製品、アスベストを含有するリスクのある製品、アスベスト・アスベスト含有物質の発生リスクが高い輸出元国についての理解を提供する。アスベスト・アスベスト含有物質の輸入者や潜在的使用者に知らせるために、情報・コミュニケーション資料が不可欠である。また、親類に建材を供給する海外に住む家族によって提供される物資の量を踏まえると、この情報は地域社会レベルでも配布することができる。アスベスト関連疾患の根絶という目標を強調することを、すべてのコミュニケーションの前面及び中心に据える必要がある。

19. システムの実施
設計されたとおりにシステムを実施する。開かれた透明性の高いプロセスを確保し、システムの運用・使用に関して、一般の人々や廃棄物業界と積極的に関わり続ける。

20. 監視、評価及び監査
アスベスト管理システムが期待どおりに運用され、廃棄物が設計されたとおりに適切に管理されていることを確保するために必要な資金が利用可能であることを確保するための、アスベスト・アスベスト含有物質国家行動計画の重要な構成要素のひとつである-システムの監視、評価及び監査を実施する。

21. システムの拡張・改善
システムがうまく稼働したら、改善することができるかどうか検討し、システムを離島地域に拡張できるかどうか、また、システムに別の問題のある廃棄物項目を追加すべきかどうかを判断するために、システムを見直す。

https://pacwasteplus.org/wp-content/uploads/2021/09/Asbestos-Management-Legislative-Reform-Pathway.pdf

(安全センター情報2022年4月号)

本ウエブサイト上の「アスベスト禁止をめぐる世界の動き」関連情報