最高法院が元RCA労働者の損害賠償を否定した判決を覆す-2022年3月11日 フォーカス台湾
最高法院は金曜日[3月11日]、損害賠償を否定した2020年の下級審判決を覆して、発がん化学物質に曝露した222人の元ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(RCA)工場労働者を支持する判決を下した。
最高法院は、たとえ病気との因果関係が証明されていなくとも、有害化学物質への曝露が上告人らの憲法上の権利を侵害した可能性があるとして、事件を台湾高等法院に差し戻した。
最高法院はまた、元RCA従業員と死亡または負傷した労働者の親族が2004年にRCAとその親会社及び継承企業に対して起こした集団訴訟において、他の24人の原告に対して5,470万台湾ドル(約182万米ドル)の賠償を認めた2020年3月の高等法院による判決を支持した。
2020年に高等法院は、1970年から1992年に桃園工場で働いた数千人のRCA労働者を病気にし、または死を引きこしたとされた同社の有害化学物質汚染について、24人の原告は補償を受ける権利があるとする判決を下した。
しかし、この下級審は、他の222人の原告らは、工場の汚染による何らかの疾病を証明していないか、または病気であることの明らかな外見的兆候を示していないとして、彼らに対する損害賠償は否定した。
最高法院の高孟煊裁判官は金曜日に、高等法院の判決は「問題があり」、「議論の余地がある」と述べた。
高等法院は、この事件で、原告らの立証責任は軽減されるべきであることに同意していたが、損害賠償を否定した決定は、原告らが彼らの疾病と汚染との因果関係を立証できなかったという事実に基づいていた、と高は言う。
また、憲法は身体的完全性と健康に対する権利を認めており、これらの権利の侵害は、診断が可能な病気または医療を必要とする病気に限られるものではない、とも高は述べた。
高によれば、病気になるリスクを高め、結果的に苦痛を感じさせることになる、高度に有害な成分に誰かを曝露させる行為は、こうした憲法上の権利の侵害とみなされる可能性がある。
使用者には、職場でその従業員の健康を守る義務があるが、元RCA労働者らは、工場で有害な水を飲まされ、有害な物質に曝露させられていた、と高は言う。
彼女は、元RCA労働者の一部が感じた心理的及び感情的な損害は孤立した事例ではなく、高等法院はそれを考慮に入れていなかったと示唆した。
判決が下された直後に、RCA自救協会と台湾工作傷害受害人協会(TAVOI)のメンバーら数十人は、最高法院の建物の外で「私たちは勝った!決してあきらめるな」と叫びながら勝利の歓声を上げた。
TAVOI秘書長の利梅菊は、今日の判決を嬉しく思うと述べ、20年間の粘り強さがようやく報われたと付け加えた。
RCAは、1970年から1992年まで、新竹県竹北、宜蘭県、当時の桃園県(現在の桃園市)の3つの主要工場を操業していた。
これら3つの工場は、ピーク時には約8万人の労働者を雇用していた。
1986年にRCAは、アメリカの多国籍企業ゼネラル・エレクトリック(GE)に買収され、GEは1988に、桃園工場をフランスのテクニカラーSAの米国子会社トムソン・コンシューマー・エレクトロニクスに売却し、その後それは電子製品の生産を中国に移転した。
買収から3年後、トムソン社は桃園工場における深刻な汚染を発見し、結果的に翌年に工場を閉鎖したが、それまでに2万人の労働者のうちの一部ががんと診断されていた。
1992年、産業公害の被害者となった労働者たちが自救協会を結成し、法的手段による補償を追求したことが、2千人近い原告が関わる長年にわたる訴訟の引き金となった。
その後の調査のなかで、RCA社は、発がん物質トリクロロエチレンを含む約30種類の有機溶剤に曝露したことによって、従業員が罹患したがんを含む病気にに責任があることが判明した。
また、同社が、工場の近くに有害廃棄物を登記し、土壌と地下水を汚染したことも判明した。
この訴訟でボランティア弁護士のグループを率いるジョセフ・リン(林永頌)弁護士は、高等法院における再審には数か月から数年かかるだろうことから、金曜日の判決が終わりではないことを認めている。
しかし、林は、次の法廷闘争については楽観的で、222人の原告への補償が裁判の焦点になるだろう、と付け加えた。
最高法院判決は、元RCA労働者の精神的苦痛を考慮すべきことを指摘し、高等法院は、原則としてこの見解を裁判において採用しなければならない、と林は言う。
林によれば、金曜日の最高法院の判決は、今後の労働災害や公害に関する訴訟にも大きな影響を与える「大きなブレークスルー」である。
法院は、人の健康の侵害は、身体的な病気に限られるものではなく、精神的な病気やその他の病的な状態も含まれることを明確にした、と林は言う。
RCAと3つのその関連会社-GE、トムソン・コンシューマー・エレクトロニクス(バミューダ)、テクニカラーSAに対する別の集団訴訟について、2019年12月に台北地方法院が1,115人の原告を支持する判決を下し、総額約23億台湾ドルを認めている。
この判決は双方から台湾高等法院に控訴されており、4月に判決が下される予定である。