MSDSの70%は営業秘密、毒性物質のでたらめな製造・管理 2022年2月24日 韓国の労災・安全衛生

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昌原市のトゥソン産業で、急性中毒で職業性疾病者が16人発生し、金海市のテフンR&Tでも3人が急性中毒の症状を示していることから、有害・毒性物質の管理・監督を強化すべきだとの声が高まっている。

毎日労働ニュースの取材によると、雇用労働部・梁山支庁は、自動車部品メーカーのテフンR&Tで洗浄工程に関わった作業者94人に対し、23日から24日にかけて臨時の健康診断を実施し、急性中毒になっているかどうかを追加で確認している。22日には、テフンR&Tの事業所で局所排気装置などの作業環境を確認し、洗浄剤試料を採取して分析に入った。テフンR&Tが使用した洗浄剤は、トゥソン産業の洗浄剤を製造したメーカーで作られた。試料分析が終わっていないため、テフンR&Tで使った洗浄剤にトリクロロメタン成分があるかどうかは確認されていない。

今回の急性中毒事故で、事業所が有害・毒性物質をどれほど疎かに扱っていたかが明らかになっている。トゥソン産業側は「トリクロロメタン成分は、納品業者が虚偽作成したために判らなかった」と主張した。一方、製造会社は「口頭でトリクロロメタンが含まれている事実を知らせた」とし、真実を巡る攻防を展開している状況だ。

問題は物質安全保健資料(MSDS)がでたらめに作成されているという点だ。トゥソン産業の洗浄剤のMSDSには、問題になったトリクロロメタンの代わりにジクロロエチレンと記載されている。しかし、労働部と安全保健公団が確認したところによると、トゥソン産業はこれまでジクロロメタンを洗浄剤として使用してきた。ジクロロメタンが環境関連法によって今年から使用規制対象物質になり、洗浄剤の成分を変える過程で、更に毒性の強い「トリクロロメタン」を使った事実も確認された。

MSDSの信頼度の低さは昨日や今日のことではない。正確な成分を把握しなければ、特殊健康診断や作業環境測定を実施して適切な保護措置を取ることができないのに、国内で流通しているMSDSの67.4%(2014年基準)が非公開だ。構成成分の名称や含有量が営業秘密に当るかどうかを、事業主が自ら判断しているためだ。このような問題のため、産業安全保健法が改正され、今年の1月16日から、MSDS提出と代替資料の審査制度が施行された。作成または変更されるMSDSは、製造または輸入前に、安全保健公団に提出しなければならない。しかしこの条項は、5年間の製造・輸入量に応じて段階的に施行されるため、未だに対象事業場が多くはない。今年は100トン以上の製造・輸入量に限って事前審査制が適用される。

事前審査制が施行されても、使用者が成分を虚偽作成すれば判らない。政府が該当物質の成分を直接分析するよりも、MSDS上の分類がきちんとできているかどうかを見るためだ。大韓産業保健協会・産業保健環境研究院のチョ・ギホン首席研究員は、「事業主が提出した情報がきちんと分類されているかだけを確認するため、MSDSの審査を強化しても、依然として信頼の問題は解決されない」と指摘した。

労働部は同日、洗浄剤メーカーに対して是正命令や罰金を科した。MSDSを事前に提出しておらず、成分もきちんと表記していないというのが理由だ。産業安全保健法によると、MSDSを虚偽表記すれば500万ウォンの過料処分が出される。『仕事と健康、慶南の健康と生命を守る人々』は声明を出し、「前近代的な急性中毒事故を防ぐには、MSDSの虚偽・捏造への処罰を強化すべきだ」と指摘した。労働部はトゥソン産業とテフンR&Tに類似した成分の洗浄剤を使用する事業場を対象に調査中だ。

2022年2月24日 毎日労働ニュース キム・ミヨン記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=207576

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