令和4年2月15日付け労災発0215第1号都道府県労働局長宛て厚生労働省大臣官房審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」

厚生労働省は2022年2月15日付けで労災発0215第1号「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」を発出した。

令和4年度においては、次の事項に留意し、労災補償行政を推進することとするとしている。
① 新型コロナウイルス感染症等への迅速・的確な対応
② 過労死等事案などの的確な労災認定
③ 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底
④ 業務実施体制の確保及び人材育成、デジタル化の推進

①の関連では、処理の迅速化と請求勧奨を引き続き課題としながら、以下のように指摘していることが注目される。
「本感染症については、感染性が消失した後も症状が持続し(罹患後症状があり)、呼吸器や循環器、精神・神経症状等に係る症状がみられる場合があることから、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(暫定版)」等を参考に医師の意見を確認し、療養や休業が必要と認められる場合には、労災保険給付の対象となることに留意すること。
なお、主治医等から意見を徴した結果、治ゆの判断がなされた事案については、本省に協議すること。」

②の関連では、2021年3月30日に示した「労働時間質疑応答事例集」を「参考に的確に把握すること」を指示しているが、他方で、次のようにも言っている。
「労働時間については、タイムカードや業務日報など、客観的に労働時間を判断できる資料が無い場合も少なくなく、また、いわゆる持ち帰り残業や休憩時間中の業務の判断は困難であるが、訴訟においては、実態を踏まえた判断が行われ、敗訴になることが多い。労働時間の判断に当たっては、労働時間質疑応答事例集を参照し、適切な認定に努めること。」

「労働時間質疑応答事例集」については、2022年1月19日付け東京新聞に、「過労死の『見かけ上の減少を優先』労働時間の過小認定が続出 厚労省の基準厳格化で弁護団が指摘」「仮眠や持ち帰り残業が『労働時間』に加算されない? 厚労省が基準厳格化、労災の認定後退の恐れ」と報じられ、日本労働弁護団『季刊・労働者の権利』第344号(2022年1月発行)でも問題点が検討されている。「敗訴になることが多い」実態を踏まえた見直しが必要だ。

本通達は幅広い課題を扱っており、新たな課題として、建設アスベスト給付金制度やテレワーク中に負傷した場合の労災補償の取扱い等も取り上げられている。以下が全文を示す。

機密性1/10年保存/令和4年4月1日から令和14年3月31日まで

令和4年度における労災補償業務の運営に当たっては、特に下記に示したところに留意の上、実効ある行政の展開に遺憾なきを期されたい。

目次

第1 労災補償行政を巡る状況への対応

近年、労災保険の新規受給者数は年間65万人を超える状況にある中、労災補償行政の使命は、被災労働者に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付等を行うことにより、セーフティネットとしての役割を担うことにある。この使命を果たすためには、業務に従事する職員一人一人がこの役割を自覚するとともに、それに応えるべく、社会情勢に応じた業務運営の改善を実施していくことが必要不可欠である。

新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数は2万件以上に上り、今後も相当数の労災請求が想定されることから、引き続き迅速かつ公正に対応するとともに、労働者から積極的に労災請求がなされるよう、事業場等に対する請求勧奨に係る要請について徹底していくことが肝要である。

また、過労死等や石綿関連疾患など職業性疾病を巡る国民の関心は高く、過労死等に係る労災請求件数は2,800件以上に上るほか、石綿関連疾患に係る労災請求件数も1,000件以上に上るなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にあり、これらの労災請求事案に引き続き迅速かつ公正に対応していく必要がある。

さらに、毎月勤労統計に係る追加給付事案について引き続き適切に対応していく必要がある。

一方、現下の定員事情や行政経費に係る予算事情など、労災補償行政を取り巻く環境は依然として厳しい状況である。

このような状況の中で、労災補償行政に対する国民の期待に応え、労災請求事案に適切に対応するためには、厚生労働本省、都道府県労働局(以下「局」という。)及び労働基準監督署(以下「署」という。)が、より一層連携して効率的な業務運営に取り組み、また、的確な事務処理の実施に必要な体制確保と人材育成を行うことが重要となっている。

このため、令和4年度においては、次の事項に留意し、労災補償行政を推進することとする。
① 新型コロナウイルス感染症等への迅速・的確な対応
② 過労死等事案などの的確な労災認定
③ 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底
④ 業務実施体制の確保及び人材育成、デジタル化の推進

第2 新型コロナウイルス感染症等への対応

1 迅速・的確な労災認定

(1)新型コロナウイルス感染症に係る労災保険給付

新型コロナウイルス感染症(以下、本項目において「本感染症」という。)については、令和2年4月28日付け基補発0428第1号(令和3年6月24日改正)「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」により取扱いを示しているところである。
これを踏まえ、労災請求事案については速やかに調査に着手するとともに、集団感染事案等の調査の効率化による処理の迅速化を図るなど、業務により感染した労働者が迅速かつ公正に労災保険給付を受けられるよう的確に対応すること。また、引き続き、必要な本省への報告及び本省協議を確実に行うこと。
さらに、本感染症については、感染性が消失した後も症状が持続し(罹患後症状があり)、呼吸器や循環器、精神・神経症状等に係る症状がみられる場合があることから、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント(暫定版)」等を参考に医師の意見を確認し、療養や休業が必要と認められる場合には、労災保険給付の対象となることに留意すること。
なお、主治医等から意見を徴した結果、治ゆの判断がなされた事案については、本省に協議すること。

(2)ワクチン接種を受けたことにより健康被害が生じた場合の労災保険給付

本感染症に係るワクチン接種(追加接種を含む)を受けたことにより健康被害が生じた場合の労災保険給付については、厚生労働省ホームページの「新型コロナウイルスに関するQ&A」により、医療従事者等に係るワクチン接種については、業務の特性として、本感染症へのばく露の機会が極めて多く、医療従事者等の感染、発症及び重症化リスクの軽減は、医療提供体制等の確保のために必要であり、ひいては、これが医療機関等の事業主の事業目的に資するものであることから、業務遂行のために必要な行為と認められ、労災保険給付の対象としているところであり、労災請求があった場合には、引き続き、適切に対応すること。
なお、医療従事者等以外の労働者がワクチン接種により健康被害が生じた場合については、従来どおり、当該ワクチン接種が自由意思に基づくものではなく、事業主からの業務命令によるものか否かなどを調査した上、業務遂行性の有無を判断すること。

2 請求勧奨の実施

労働者の中には、本感染症にり患し、感染経路が不明な場合であっても、労災保険給付の対象となりえることや、制度の不知等により、請求を行っていない方が未だおられることが考えられるほか、事業主においても、感染経路が不明な場合は労災請求ができないといった誤った認識を持つなど、様々な原因により、本感染症にり患したと思われる労働者への労災請求に関する説明や手続き等の支援がなされていない場合があることも考えられることから、今後も引き続き、きめ細かな対応を図る必要がある。
このため、本感染症における労災補償の取扱い等については、厚生労働省ホームページに「新型コロナウイルスに関するQ&A」を掲載するとともに、労働保険年度更新申告書に同封されているリーフレット「事業主の皆さまへ厚生労働省からのお知らせとお願い」においても、本感染症に係る労災保険給付の考え方を記載するなどして、請求勧奨を行っているところである。
局署においては、令和2年8月7日付け基安労発0807第1号・基補発0807第1号「新型コロナウイルス感染症に係る集団感染が発生した事業場に対する感染拡大防止の要請等について」、令和2年11月20日付け基補発1120第1号(令和3年12月16日改正)「新型コロナウイルス感染症に係る当面の対応について」、令和3年9月27日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「集団感染が発生した医療機関等における労働者の感染が疑われる事案を把握した場合の労災請求勧奨等の対応について」等に基づき、引き続き、事業場等に対する請求勧奨の取組みに係る要請を行うこと。特に、集団感染が発生した事業場等を把握した場合については、適切な時期に請求勧奨に係る要請を確実に行うこと。
なお、本感染症における労災保険給付に係るリーフレット「職場で新型コロナウイルスに感染した方へ」について、厚生労働省ホームページ「新型コロナウイルスに関するQ&A」に掲載しているので、適宜、活用すること。

第3 過労死等事案に係る的確な労災認定

1 労働時間の的確な把握

労働時間は、脳・心臓疾患における業務の過重性や精神障害における業務による心理的負荷の強度の評価に係る重要な要因であるので、その的確な把握・特定は、適正な労災認定に当たり必要不可欠なものである。
このため、労災認定のための労働時間は、労働基準法第32条で定める労働時間と同義であり、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであることに留意の上、当該労働者の労働時間については、使用者の指揮命令下にあることが認められる時間を的確に把握すること。
その際、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、上司・同僚等事業場関係者からの聴取等を踏まえて事実関係を整理・確認し、始業・終業時刻及び休憩時間を詳細に特定した上で、令和3年3月30日付け基補発0330第1号「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」(以下「労働時間質疑応答事例集」という。)を参考に的確に把握すること。
なお、労働時間関係資料等客観的な記録が存在しない場合であっても、聴取内容等から労働者が使用者の指揮命令下において実際に労働していたと合理的に推認される場合には、監督部署と協議の上、当該時間を労働時間として特定し、適切な認定に努めること。
また、個々の事案における労働時間の特定に当たっては、平成30年3月30日付け基監発0330第6号、基補発0330第5号(令和3年9月15日改正)「過労死等事案に係る監督担当部署と労災担当部署間の連携について」(以下「連携通達」という。)に基づき、関係者の聴取等の必要な調査を行い、監督部署と協議を行った上で、労災部署において的確に労働時間を特定すること。

2 過労死等事案に係る関係部署との連携

過労死等事案については、その発生を防止するための対策が労働基準行政における重要な課題となっていることを踏まえ、局署においては、引き続き労災部署と監督・安全衛生部署との緊密な連携を図るとともに、本省とも情報の共有を図る必要がある。
このため、連携通達及び平成29年3月31日付け基監発0331第1号・基補発0331第6号・基勤発0331第1号・基安労発0331第1号「『過労死等ゼロ』緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進に当たっての具体的手法について」等を踏まえ、署管理者は、労災部署において把握した情報や労災請求・決定に関する情報が監督・安全衛生部署に共有されるよう、監督・安全衛生部署と密接な連携を図ること。
また、局管理者は、過労死等事案に係る調査の進捗及び労災部署と監督・安全衛生部署における情報共有等の状況について的確に把握し、労災部署と監督・安全衛生部署における情報共有や協議が的確になされるよう署管理者に対し必要な指示を行うとともに、社会的に注目を集める可能性の高い事案については、本省への所要の報告を確実に行うこと。

3 労災認定基準の適切な運用

(1)脳・心臓疾患

脳・心臓疾患の労災認定基準については、最新の医学的知見を踏まえて、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検証等を行い、報告書が取りまとめられたことを受けて、令和3年9月14日付けで「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」により改正を行ったところであるから、これに基づき、適切に対応すること。
特に、労働時間の長さは、業務量の大きさを示す指標であり、また、過重性の評価の最も重要な要因であるので引き続き適切に評価するとともに、労働時間のみで業務と発症との関連性が強いと認められる時間外労働の水準には至らないがこれに近い時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できることを明確にしたことを踏まえ、労働時間以外の負荷要因については、新たに追加・拡充をした項目を含め、十分に調査し検討を行うこと。

(2)精神障害

ア 専門家意見の収集
精神障害の認定基準においては、認定要件を満たすか否かについて、主治医意見により判断すべき事案、地方労災医員等の意見により判断すべき事案及び専門部会意見により判断すべき事案を示しているところであり、局においては、署に対して当該認定基準に基づく医学意見の収集方法について、適切な指導を行うこと。
なお、「精神障害の労災認定実務要領」に記載する主治医意見により業務上と判断できる心理的負荷が「強」に該当することが明らかな場合とは、実務要領記載の例のほか、複数の出来事についての全体評価において署長が明らかに「強」と判断できる場合も含むものであるのであるので留意すること。

イ パワーハラスメントに係る心理的負荷の評価及び支給決定事案の情報提供
精神障害事案については、上司、同僚等からの聴取等の調査を尽くした上で、業務による出来事の事実認定を行うことが重要である。
このため、特に、請求人がパワーハラスメントを主張する事案については、関係者が相反する主張をする場合があることから、当事者の事業場内における役割、指揮命令系統等を把握した上で、可能な限り第三者から聴取を行う等により、業務上必要性がない又は業務の目的を逸脱した言動等の有無につき、確認を行った上で、心理的負荷の評価を適切に行うこと。
また、精神障害に係る労災請求について支給決定したもののうち、認定基準の項目「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を主な具体的出来事として心理的負荷の強度の評価を行った事案については、局雇用環境・均等部(室)に適切に情報提供されるよう留意すること。

ウ 認定基準の見直し
心理的負荷による精神障害の認定基準については、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行っているところであり、検討状況について注視願いたい。

第4 石綿関連疾患に係る的確な労災認定

1 調査上の留意点

(1)石綿関連疾患に係る医学意見の的確な徴取

石綿関連疾患においては、認定基準に定められた疾病に該当するか否か、胸膜プラーク等の所見が認められるか否か等の医学的所見は、労災認定の重要な要件であることから、その判断に当たっては、主治医の意見だけでなく、地方労災医員等の意見を徴すること。
また、平成23年3月31日付け基安労発0331第1号・基労補発0331第2号「石綿ばく露作業による労災認定等事業場の公表に係る石綿肺の取扱い等について」の記の第2に基づき、石綿肺か否かの地方労災医員等からの意見聴取等の調査を的確に実施するとともに、その結果を調査結果復命書等に記載すること。
さらに、主治医と地方労災医員等の見解が異なる場合等については、令和2年3月27日付け基補発0327第2号「石綿確定診断等事業について」に基づき、速やかに、石綿確定診断委員会に対して確定診断の依頼を行うこと。
なお、良性石綿胸水の事案については、全数確定診断の依頼が必要であることから、良性石綿胸水以外の傷病名により請求がなされた事案で良性石綿胸水の発症が
疑われる場合を含め、地方労災医員等の意見を徴することなく、速やかに、石綿確定診断委員会に対して確定診断の依頼を行うこと。

(2)本省協議等

上記(1)によってもなお確定診断に至らなかった事案、死亡原因などの医学的判断に疑義が生じた事案や石綿ばく露作業への従事期間が認定基準に定められた一定の年数に満たない事案等については、必ず本省に協議又は相談すること。
また、傷病年月日については、現実に療養が必要となった日であり、主治医から石綿関連疾患の診断がなされる前から自覚症状を訴え、別の医療機関で治療している場合には、主治医や地方労災医員等に対して、当該疾患の症状の経過等を確認し判断すること。

(3)石綿ばく露作業の的確な把握

石綿ばく露作業従事歴は、労災認定を行う上で重要な調査事項であるとともに、その的確な把握は、迅速な認定にも資するものである。このため、石綿ばく露作業の調査に当たっては、平成17年7月27日付け基労補発第0727001号「石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について」及び平成24年9月20日付け基労補発0920第1号「石綿による疾病の業務上外の認定のための調査実施要領について」に基づき、被災労働者の雇用の事実を確認し、石綿ばく露作業の有無及び従事期間について、事業場関係者等から聴取する等により、可能な限り詳細に把握すること。
特に、石綿ばく露作業に係る就労歴や作業内容(平成24年3月29日付け基発0329第2号「石綿による疾病の認定基準について」の記の第1の2に定める「石綿ばく露作業」のいずれに該当するかを含む)について、可能な限り詳細に把握すること。
また、調査実施要領の別添の調査票に係る作業歴情報については、石綿ばく露作業の有無にかかわらず、全ての職歴を記載した上で、調査で把握した石綿ばく露状況等を調査票に漏れなく記載すること。その際、労働者ではない一人親方等の期間の就労歴や作業内容、職種、喫煙歴等についても、調査において把握した場合には調査票に記載すること。
なお、石綿ばく露作業に最後に従事した事業場が公表の対象となることを踏まえ、最終石綿ばく露事業場の確認は慎重に行うこととし、最終ばく露事業場であるか否かの判断、石綿ばく露作業の有無及び従事期間等に疑義が生じたものについては、必ず本省に協議又は相談すること。
また、上記の調査等に当たっては、令和3年6月16日付けで「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」(令和3年法律第74号)に基づく給付金等の迅速な支給を図るため、令和3年12月1日付け基管発1201第1号・基補発1201第1号「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律に係る情報の提供について」により、労災支給決定等情報提供サービスを実施していることにも留意すること。

2 石綿関連疾患に関する労災補償制度等の周知

(1)石綿労災認定等事業場の公表

石綿労災認定等事業場の公表は、国民に対し石綿による健康被害の救済に必要な情報を十分かつ速やかに提供するという、「石綿による健康被害の救済に関する法律」(以下「救済法」という。)に基づき、毎年実施しているものであり、正確な情報の公表が重要である。
このため、日頃から、公表データ管理用のシステムへの入力を確実に行うことはもとより、公表に当たっては、別途指示するところにより、引き続き、複数名での確認体制を整備した上で、局管理者においても適正な作業を指示する等とともに、誤入力や入力漏れがないよう、確認・点検を徹底すること。
なお、その際、石綿関連疾患にり患して労災保険により療養している者の死亡に係る遺族補償給付の支給決定を行った場合には、該当する保険給付の種別ごとに請求・決定年月日を入力するとともに、死亡年月日も漏れなく入力するなど、局において、日頃からデータの適切な入力・管理を徹底すること。
また、公表対象事業場に対しては、業務上外の調査又は支給決定後に、救済法に基づく公表の趣旨について丁寧に説明し、公表の理解が得られるよう努めること。

(2)労災保険指定医療機関等への周知

石綿関連疾患については、がん診療連携拠点病院をはじめとした労災保険指定医療機関等に対して、労災補償制度等に関するパンフレットや石綿ばく露歴などのチェック表(以下「周知用資料」という。)を配布し、医療機関を通じた制度の周知を行うことが重要であるので、引き続き、周知の徹底を図ること。
また、特に、新規の労災保険指定医療機関に対しては周知用資料等を活用することにより、制度周知を確実に行うとともに、石綿労災認定等事業場に対しては、引き続き、退職労働者等への労災補償制度の周知を実施するよう依頼すること。

(3)建設アスベスト給付金制度の周知

建設アスベスト給付金制度の周知については、令和4年1月19日付け基発0119第1号「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等支給要領について」及び同日付け基発0119第3号「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律等の施行について」(以下「支給要領通達等」という。)により指示しているところであるが、同法の趣旨を踏まえ、その迅速な賠償を行うため、労災請求時などに建設業務により石綿ばく露した事案で本給付金の対象となると思われるものを把握した場合には、建設アスベスト給付金制度に関するパンフレットを交付することなどにより制度の周知を行うこと。周知に際しては、併せて、給付金の請求に先んじて労災の請求を行うよう、勧奨すること。
また、建設アスベスト給付金制度に関する問い合わせや相談についても、支給要領通達等により指示しているところであるが、引き続き、丁寧な対応を行うこと。

第5 その他の職業性疾病事案に係る的確な労災認定

1 電離放射線障害事案に係る調査上の留意点

認定基準において本省にりん伺することとされている事案については、認定基準別添の調査実施要領に基づき調査することとされているところであるが、特に、医療従事者に係る電離放射線障害の調査に当たっては、当該労働者のすべての業務経歴における作業内容や放射線業務従事の有無、被ばく線量及び、安全防護の状況等が具体的に分かるよう、可能な限り把握すること。

2 関係部署との連携

職業がんや有害性が明らかでない化学物質による新しい疾病等の労災認定に当たっては、原因物質の特定、当該物質のばく露状況等を詳細に把握する必要があることから、より一層効率的かつ的確な調査を行うため、監督・安全衛生部署と情報共有するなど緊密な連携を図ること。
また、新しい疾病に関する請求事案については、本省報告を確実に行うこと。

第6 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理の徹底

労働者災害補償保険法の目的を実現するため、遵守すべき事務処理手順を定め全国斉一的な運用を行っているところであるが、特に、次の事項に留意すること。

1 基本的な事務処理の徹底

労災保険給付の事務処理については、労災保険給付事務取扱手引(以下「給付事務手引」という。)等により指示しているところであるが、今後とも適正な給付のための適切な調査を徹底すること。
特に、法令、通達に基づいた調査、判断等の基本的な事務処理について、管理者から職員に十分な指導を行うなど、改めてその徹底を図ること。
また、調査に当たっては、保険給付の決定のために真に必要な調査を行うことを基本とし、決定に不要な資料の収集を行わないこと、必要な資料の不足が生じないようにすることなど過不足のないようにするとともに、原則として、調査は文書照会、電話録取等の簡素な手法により行い、必要に応じ、実地調査を行うこと。
さらに、関係資料を収集する際、被災労働者やそのご遺族等から同意書等を徴する場合は、機微な個人情報を収集することに特に留意の上、保険給付に当たり、明らかに不必要な資料に係る同意書等を徴することがないよう徹底すること。

2 迅速処理に向けた的確な進行管理

長期未決事案については、署長管理事案、局管理事案による管理など、長期未決事案の発生防止のために取り組んでいるところであるが、平成30年10月9日付け基補発1009第2号「今後の保険給付の迅速処理に当たって留意すべき事項について」に基づき的確な進行管理を行うこと。
特に、複雑困難事案にあっては、定期的に開催している事案検討会等を通じて、初動調査の早期着手、各調査項目についての期限を付した具体的な指示など、今後の処理方針等についての具体的な指導を行うこと。
また、事案検討会の開催に当たっては、特に受付後4か月を超えた事案に対しては決定までのスケジュールを意識した具体的指導を行うなど、長期未決事案の発生防止が目的の一つであることに沿った対応を行うこと。

3 請求人等への懇切・丁寧な対応

被災労働者及びそのご遺族といった請求人等に対する丁寧で分かりやすい説明の実施については、平成23年3月25日付け基労発0325第2号「今後における労災保険の窓口業務等の改善の取組について」により指示しているところであるが、引き続き、これを徹底するとともに、相談等の段階で、調査が困難であることや業務上外の見込み等について言及することは厳に慎むこと。
特に、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求については、感染経路が不明な場合であっても労災保険給付の対象となること、労災請求はあくまで労働者本人からの請求行為であり、事業主からの承認を得てなされるものではないこと、事業主から請求書に証明が得られない場合は、署に相談していただきたいこと等、本感染症に係る労災補償の取扱いに基づき、適切な窓口対応を徹底すること。
また、請求人等からは、請求後に長期間を経過しているが、対応状況が分からず、不安になっている旨の問合せが多数、寄せられていることから、引き続き、請求書受付後3か月を経過した事案については、請求人等に対し、処理状況等を連絡するとともに、その後もおおむね月1回、定期的に連絡することを徹底すること。
なお、過労死等事案等の不支給決定を行った場合には、当該不支給決定に対する請求人の納得性を高めるため、支給要件の概要、当該不支給決定理由のポイント、審査請求手続等について、請求人に分かりやすい説明を行うこと。

4 報道機関に対する的確な対応

過労死等事案など労災認定された個別の事案について社会的関心が高まっていることを背景に、局署において報道機関等から取材を受ける機会が増えていることから、その対応に当たっては、被災労働者及びそのご遺族等の個人情報保護の観点に十分留意すること。
なお、社会的関心が高いと考えられる事案に係る取材等を受けた場合は、速やかに本省へ報告すること。

5 不正受給防止に対する的確な対応

労災保険に係る不正受給事件は、社会に与える影響が大きく、労災保険制度に対する不信を招来し、制度の適正な運営を大きく阻害することにもなりかねないものである。
このため、不正受給を防止するための事務処理等については、給付事務手引により指示しているところであり、特に投書等により不正受給の疑いが生じた事案については、署は時機を逸することなく必要な調査を実施する等適切な対応を行うとともに、本省への速やかな報告を徹底すること。
また、特別加入者に係る不正受給防止対策については、平成29年12月7日付け基補発1207第1号「労災保険の特別加入者に係る不正受給防止対策の徹底について」に基づく調査や事務処理を徹底すること。
なお、不正受給者に対して支給した保険給付については、労働者災害補償保険法第12条の3第1項に基づき費用徴収を行うこととなるため、保険給付支払日から時効が進行することに留意し、債権発生通知書による局への報告や不正受給者に対する納入告知の実施等、必要な事務処理を速やかに実施すること。

6 労災かくしの排除に係る対策の一層の推進

全国健康保険協会(協会けんぽ)の各都道府県支部から健康保険法の保険給付について不支給(返還)決定を受けた者の情報を得た場合において、被災労働者に対して、労災請求の勧奨を行うとともに、①労災かくしが疑われる場合、②新規の休業補償給付支給請求書の受付に際し、労働者死傷病報告の提出年月日の記載がない場合には、速やかに監督・安全衛生部署に対して情報の提供を行うこと。
また、平成3年12月5日付け基発第687号「いわゆる労災かくしの排除について」に基づき、労災保険のメリット制の適用を受けている有期事業の事業場にあっては、メリット収支率の再計算及び返還金の回収等が生じる場合があることから、労災かくしが判明した場合には、局徴収主務課室に対し、速やかに、給付見込額や支払予定時期などの必要な情報を提供すること。

7 労働者性の判断

労働者性の判断のうち、一般的に問題になることが多い法人の役員、請負制の大工、委託契約の外務員等判断が困難な事案については、適宜、監督部署に協議しつつ必要な調査を行い、的確に労働者性を判断すること。

8 給付基礎日額の算定

給付基礎日額の算定に当たっては、これまでも指示しているとおり、割増賃金の算定基礎に算入すべき手当が含まれているかどうかについて、就業規則等により確認することに加え、事業場に対して手当の算定根拠について必要な確認を行うこと。
また、被災労働者の勤務実態等を踏まえ、適用される労働時間制度について疑義が生じる場合には、適宜、監督部署に協議しつつ必要な調査を行い、的確に給付基礎日額を算定すること。

9 テレワーク中に負傷等した場合の労災補償の取扱い

労働者がテレワーク中に負傷等した場合については、令和3年3月25日付け基発0325第2号・雇均発0325第3号「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインについて」等に基づき、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じた災害は、労災補償の対象となること、また、その際、私的行為等業務以外が原因であるものについては労災補償の対象とはならないといった基本的な考え方を踏まえ、適切に対応すること。
なお、労働者がテレワーク中に負傷等した場合の保険給付については、厚生労働省ホームページに掲載のパンフレット「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」や「テレワーク総合ポータルサイト」において明記しているので、事業場等への説明に当たっては、適宜、活用すること。

10 障害(補償)等年金を受ける者の再発に係る取扱い

障害(補償)等年金を受ける者が再発した場合の事務処理の留意点については、平成27年12月22日付け基補発1222第1号「障害(補償)年金を受ける者が再発により傷病(補償)年金又は休業(補償)給付を受給する場合の事務処理上の留意点について」により指示しているところであるが、いまだ適切さを欠く状況がみられる。障害(補償)等年金を受ける者が再発した場合、障害の状態によっては、再発により療養する期間について、傷病(補償)等年金の支給要件を満たす可能性があることから、改めて、当該通達に基づき適切に事務処理を行うこと。
また、再発が多いと考えられるせき髄損傷に係る相談対応に当たっては、リーフレット「せき髄損傷に併発した疾病の取扱いについて」を使用することなどにより、懇切・丁寧な説明に努めるとともに、リーフレットに掲げられていない併発疾病であっても、個々の事案ごとに因果関係を判断し、予断を持った対応は行わないこと。

11 第三者行為災害に係る事務処理

(1)第三者行為災害に係る事務処理の留意点

求償事案については、当該債権について消滅時効の期限が到来する前に納入告知を行うことを従前より指示してきたところであり、引き続きその事務処理の徹底を図ること。なお、令和2年4月1日施行の民法改正を反映した時効の管理については、「第三者行為災害事務取扱手引(令和2年4月)」により適切に実施すること。
特に、民法に基づく損害賠償請求権を行使することができる期間は「3年以内」から「5年以内」に改正されたが、自賠責保険に対する損害賠償請求権は自賠法に基づき「3年以内」のままであることに留意すること。
また、平成26年3月31日付け基労管発0331第1号・基労補発0331第1号「第三者行為災害における自賠責保険等又は自動車保険等に対する求償の取扱いについて」に基づき、適切に納入告知書を発行し、時効更新措置を講じること。

(2)外部委託について

納入督励及び債権回収に係る外部委託事業については、令和4年度においても弁護士又は弁護士法人を受託者として実施する予定であり、事務処理に係る留意点等については別途通知するので、より一層積極的に活用すること。
また、第三者行為災害事案に係る支給調整等事務については、令和元年8月28日付け基補発0828第2号「第三者行為災害支給調整等事業に係る外部委託について」により通知したところであるが、現在の委託契約は令和3年度末に終了するところであり、令和3年11月11日付け事務連絡「令和3年度末時期における第三者行為災害支給調整等事業に係る事務処理について」により、令和3年度末における取扱いに関して通知しているものである。令和4年度以降においても弁護士又は弁護士法人を受託者として継続して事業を実施する予定であり、次期受託者が決定次第通知するので、効果的かつ効率的な事務処理のため、積極的に活用すること。

12 特別加入制度の周知・広報等

近年、働き方の多様化に伴い、特別加入制度についての社会的な関心が高まってきているところ、本省において、関係省庁、関係団体へのリーフレットの送付や、厚生労働省ホームページで特別加入制度関係の紹介ページを掲載する等により、特別加入制度の周知・広報を実施しているところである。各局においても、様々な機会を捉え、積極的に周知広報に努めるとともに、特別加入制度の照会等が行われた場合は、適切に対応すること。
また、労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第123号)が、令和3年7月20日付けで公布され、令和3年9月1日付けで施行されたところである。これにより、自転車を使用して行う貨物の運送の事業及びITフリーランスが追加されていることから、令和3年8月3日付け基発0803第1号「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行等について」及び令和3年8月23日付け基補発0823第1号「特別加入の対象となる事業の追加及び作業の新設に伴う事務処理事項について」に基づき適切に事務処理を行うこと。なお、対象範囲の拡大等については引き続き検討されているところである。

13 定期報告の取扱い

令和元年度より、日本年金機構への情報照会の本格運用が開始され、個人番号による情報連携により併給調整に必要な情報を取得できることとなったことから、令和2年度から障害(補償)等年金及び傷病(補償)等年金の、令和3年度から遺族(補償)等年金の受給権者からの定期報告を一部省略しているので、令和2年3月31日付け基保発0331第1号「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行等に伴う傷病(補償)年金及び障害(補償)年金の定期報告の一部省略等にかかる年金事務の取扱いについて」及び令和3年3月30日付け基保発0330第1号「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行等に伴う遺族(補償)等年金の定期報告の一部省略等に係る年金事務の取扱いについて」に基づき、省略対象者について、各種リストによる受給条件の変動状況等の確認を引き続き実施すること。

14 労災診療費に係る事務処理の留意点

(1)労災診療費算定基準の改定に伴う的確な審査の実施等

労災診療費算定基準の改定については、令和4年4月施行となる予定であり、本年4月中に改定内容等の伝達に係る会議の開催を予定している。
ついては、労災保険指定医療機関等に対して、関係団体と連携し、あらゆる機会を捉えて速やかに改定内容の周知の徹底を図ることともに、改定後の算定基準等に基づき、的確な審査を実施すること。
また、会計検査院による決算検査報告において、「労災保険指定医療機関等が労災診療費を誤って算定して請求していたのに、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことなどが認められる。」との指摘を受けていることから、的確な審査体制の構築を行うとともに、誤請求の多い医療機関に対して個別指導を行うなど再発防止に取り組むこと。
併せて、平成25年4月8日付け基労発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報提供の労災診療費審査業務への活用等について」及び平成25年4月8日付け基労補発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報の労災診療費審査業務への活用等における留意事項について」に基づき、提供を受けた情報について積極的に活用すること。
さらに、労災保険柔道整復師算定基準及び労災保険あん摩マッサージ指圧師・はり師きゅう師施術料金算定基準についても、令和4年度に改定が予定されていることから、改定後には、診療費と同様、関係団体等を通じた算定基準の周知を行うとともにそれぞれの改定後の施術料金算定基準等に基づく的確な審査を実施すること。

(2)労災レセプトオンライン化の普及促進

令和2年6月12日付け労災発0612第1号「労災レセプト電算処理システムの普及促進に向けた取組について」に基づき、令和2年6月から令和5年3月末までの間を新たな普及促進強化期間(第3期)として、令和2年度より労災指定医療機関等への個別訪問、説明会を原則としてオンライン(テレビ会議)により実施してきたところである。
令和4年度においても、引き続き同様の取組を行う予定であるが、局においては、地区医師会等の関係団体等との会合、新規労災指定時の説明会等でのパンフレットの配付等、あらゆる機会を通じて利用勧奨を実施すること。

15 適正給付管理対策

長期療養者に係る適正給付管理業務については、給付事務手引により指示しているところであり、次年度においても効率的かつ適切に適正給付管理業務を実施すること。
なお、令和3年に実施された会計検査院による本省実地検査において、都道府県労働局の実地検査結果に基づく照会を複数受けたことから、今後の取扱いを統一的なものとするために別途通知を発出する予定であること。

16 行政争訟に当たっての的確な対応

(1)行政事件訴訟の敗訴を踏まえた対応

令和3年度における訴訟追行状況をみると、労働者性や労働時間が争点となった事件について、敗訴した事件が散見されることから、次の点に留意すること。
① 労働者性については、使用従属性の判断が重要であり、その判断に当たっては判断要素を総合的に勘案して行うべきところ、役員として登記されていること等の形式的な事実のみをもって判断が行われており、結果として敗訴となっている。労働者性を否定する場合は、先入観にとらわれず、実態に即した判断を行えるよう、給付事務手引を参照の上で監督部署と連携し、十分な裏付け調査を行うこと。
② 労働時間については、タイムカードや業務日報など、客観的に労働時間を判断できる資料が無い場合も少なくなく、また、いわゆる持ち帰り残業や休憩時間中の業務の判断は困難であるが、訴訟においては、実態を踏まえた判断が行われ、敗訴になることが多い。労働時間の判断に当たっては、労働時間質疑応答事例集を参照し、適切な認定に努めること。
また、過労死等事案に係る提訴件数も高い水準にあり、裁判所においては認定基準の枠組みに沿った判断がされつつも、行政の評価とは異なる評価が行われ、敗訴する事例が増加している。
訴訟追行に当たっては、平成22年8月4日付け事務連絡(最終改正令和2年3月16日)「労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について」に基づく的確な訟務の追行の徹底を図ることとし、国側の主張を補強するため、事業場や関係者への補充調査、医学意見書などの客観的な証拠に基づき、裁判所の理解を得る主張・立証を行うこと。

(2)審査請求事案の公正・迅速な処理審査

新規審査請求事案及び請求受理後6か月以上経過した長期未決事案が増加傾向にあることなどから、局管理者は、「労災保険審査請求事務取扱手引」第3部のⅢ「局管理者における取組み」に基づき、毎月、事案ごとに処理状況を把握した上で、処理が遅延している場合には、その原因を明確にした上で遅延を解消するために必要な助言・指導や組織的支援を行い、適切な進行管理のもと迅速処理に努めること。
また、労働者災害補償保険審査官は、的確に争点整理を行った上で審理に必要な資料の収集等を確実に実施することにより、公正・迅速な審査決定を行うこと。補充調査等により、新たな事実関係が判明したなどの場合は、法令、通達等に照らした上で、原処分の適否を判断すること。
なお、参与から審査請求事件につき意見が述べられた場合は、その内容を十分に尊重すること。

(3)不服申立て及び訴訟における取消事案の情報共有

局管理者は、訴訟等において取消となった事案や判決分析説明会にて紹介した事案に関して、各種会議や職員研修において、署管理者をはじめとする職員に対して説明し、共有を図ること。

17 地方監察の的確な実施等

地方監察は、関係法令、通達等に基づく事務処理の実態を的確に把握し、迅速・適正かつ効率的な事務の運営とその水準の維持・向上を図るととともに、公正妥当な基準に基づき客観的に検査、評価することにより行政の斉一性を確保することを目的としている。その上で、地方労災補償監察官及び労災年金監察官は、地方労災補償監察官監察指針を踏まえた計画的かつ効果的な監察を実施すること。
特に、是正改善を要する事項については、単に指摘するのみならず当該問題の生じた背景、原因を的確に捉えた対応策を検討のうえ具体的な指示・助言を行い、確実に是正改善させるとともに、適正な事務処理の継続が確保されているかを確認すること。
また、地方監察結果と併せ、令和3年度中央監察結果については、局署が実際に行っている事務処理状況を的確に把握した上で、自局の取組状況と照らし合わせて問題点等の有無を検証し、改善すべき事務処理等が認められた場合には、翌年度の業務実施計画、監察計画等に確実に反映させるとともに、会議等のあらゆる機会を通じてすべての労災担当職員に周知・徹底し、適正な事務処理を定着させること。

18 個人情報等の厳正な管理

(1)特定個人情報の適切な取扱いの徹底

労災年金たる保険給付に関する事務における特定個人情報等の取扱いについては、令和3年10月29日付け基発1029第6号「労災保険給付個人番号利用事務処理手引の一部改定について」において指示しているところである。
特定個人情報等の取扱いを適切に行うため、以下について徹底すること。
① 管理者による事務取扱担当者に対する定期的な研修の実施
・新たに事務取扱担当者になる者及び直近の研修受講日から2年を経過した者に対する労災保険給付個人番号利用事務処理手引を用いた研修
・全ての事務取扱担当者に対する毎年度の特定個人情報に係る研修・情報セキュリティオンライン研修等(e-ラーニング)
② 個人番号事務及び個人番号アクセス記録閲覧に係る業務を行う上で必要最小限の権限付与
③ 年度ごと(変更が生じた場合はその都度)の事務取扱担当者名簿の作成及びこれに伴うユーザー情報の登録・変更
④ 毎月1回の管理者による特定個人情報ファイルのアクセス記録の確認
また、個人番号を記載してきた請求人や既に個人番号を把握している受給者に対しては、不要な資料提出を求めることがないよう徹底すること。

(2)個人情報の漏えい防止

令和3年度においても、多くの情報漏えい事案が生じているが、特に被災労働者の画像診断結果が格納された電子媒体について、パスワードを付与していない状態で紛失する事案が複数発生している。
個人情報の漏えい防止については、平成28年3月28日付け地発0328第5号「都道府県労働局における保有個人情報漏えい防止及び発生時の対応について」(令和4年1月17日改正)により指示されているところであるが、改めて基本的事務処理を確認し、個人情報の管理を徹底すること。

(3)石綿関連文書の保存

石綿関連文書の保存については、平成27年12月18日付け地発1218第4号・基総発1218第1号「石綿関連文書の保存について」に基づく保存がなされるよう、引き続き管理を徹底すること。

19 複数事業労働者への労災保険給付

複数事業労働者の複数業務要因災害に係る労災認定については、脳・心臓疾患の認定基準の改正を踏まえて、令和3年12月22日付けで実務要領を改正したところであり、これらに基づき適切に対応すること。
また、令和3年12月末に複数事業労働者に係るシステム改修を行ったところであり、これにより、令和3年12月24日付け基保発1224第1号「複数事業労働者に係る労働基準行政システム労災サブシステムの改修について」により通知したとおり、①決議書に識別コードを新設したことにより、複数事業労働者を表す自由区分コードの入力が不要となる、②統計用請求書の入力を行った給付の統計・メリット補正については、システムで自動的に行われる等、一部暫定対応として行っていた機械処理が変更となるが、今回の改修後も、統計用請求書の入力は必要となること。
なお、複数事業労働者の平均賃金の内訳管理等に係る本格対応に向けて、システム改修については、今後も順次進めていく予定である。

第7 社会復帰促進等事業に係る適切な事務処理

社会復帰促進等事業として行われる義肢等補装具費及びアフターケア等に係る相談、受付及び進行管理等についての対応は、給付事務手引により指示しているとおり、労災保険給付の事務処理に準じて行うほか、各々支給要綱及び実施要領等に基づいて適切に行うこと。

1 義肢等補装具費のうち筋電電動義手について

筋電電動義手については、従前、耐用年数に定めがなかったところ、令和3年8月3日付け基発0803第2号により耐用年数を3年と定めたところであるが、筋電電動義手の再支給については、耐用年数の経過をもって無条件に再支給の費用を認めるものではなく、修理可能な場合は、修理に要する費用と再支給に要する費用を比較した上で適切に対応すること。

2 アフターケアについて

アフターケアについては、対象となる傷病ごとに、①趣旨、②対象者、③措置範囲、④健康管理手帳の有効期間が異なることに留意し、アフターケア実施要領等に基づいた適切な事務処理を行うよう改めて徹底すること。
特に、健康管理手帳の交付・不交付の決定に当たっては、障害等級認定調査復命書により交付申請者の傷病に関する障害の状態、障害等級を確認した上で、要件に該当するか否かを確認すること。
また、障害認定前の健康管理手帳の交付決定に当たっては、主治医の診断書等により障害(補償)等給付を受けると見込まれる者若しくは定められた障害等級に該当すると見込まれる者に限られていることに留意すること。

第8 外国人労働者への懇切丁寧な対応

1 外国人労働者に対する労災保険制度の周知及び請求勧奨の取組

(1)外国人労働者に対する周知等

外国人労働者については、我が国の労災保険制度について知識が十分でない場合も多い上、労働災害に遭われ亡くなった労働者のご遺族にあっては、母国にあって我が国の労災保険制度を不知であることから、機会をとらえて母国語等による説明を行い、制度不知による請求漏れのないよう、きめ細かな対応を図る必要がある。
外国人労働者に対しては、「(日本で働く外国人向け)労災保険請求のためのガイドブック」(14言語※)等を活用した労災保険制度の説明を行うこと。また、平成31年3月26日付け基監発0326第1号・基安安発0326第3号・基安労発0326第1号・基安化発0326第1号・基補発0326第1号「外国人労働者が被災者である労働災害に関する労災保険制度の周知等の対応について」に基づき、監督・安全衛生部署において外国人労働者が被災者である労働者死傷病報告を受理した場合は、当該報告の写しが労災部署に提供されるので、事業主に労災保険制度の説明を行い、請求勧奨するとともに、外国人労働者に対する説明を依頼すること。
さらに、新型コロナウイルス感染症における労災保険給付に係るリーフレット「職場で新型コロナウイルスに感染した方へ」(14言語※)について、厚生労働省ホームページ「新型コロナウイルスに関するQ&A」に掲載しているので、適宜、活用すること。

(2)外国人技能実習生に対する周知等

外国人技能実習生に対する労災保険制度の周知については、監督・安全衛生部署からの情報に加えて、平成29年10月27日付け基補発1027第2号「今後の技能実習生の死亡災害に関する労災保険給付の請求勧奨等について」に基づき、外国人技能実習機構等から死亡災害の情報提供を受けた際には、実習実施者に対して外国人労働者のご遺族に労災保険制度の周知を依頼するなど、引き続き請求勧奨に努めること。
なお、外国人技能実習生に対する労災保険給付の状況を把握する必要があることから、平成28年3月31日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「外国人労働者に対する労災補償状況の把握に係る自由区分コードの登録について」に基づき、自由区分コードの入力を徹底すること。

(3)特定技能外国人に対する周知等

特定技能外国人に対する労災保険制度の周知については、平成31年3月15日付け基監発0315第3号・基安安発0315第1号・基安労発0315第4号・基安化発0315第3号・基徴収発0315第1号・基補発0315第2号「特定技能外国人の労働条件等の確保に当たって留意すべき事項について」に基づき、法務省出入国在留管理局から死亡災害の情報提供を受けた際には、事業主に対して外国人労働者のご遺族に労災保険制度の周知を依頼するなど、請求勧奨に努めること。
なお、特定技能外国人に対する労災保険給付の状況を把握する必要があることから、令和元年5月30日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「特定技能外国人に対する労災補償状況の把握に係る自由区分コードの登録について」に基づき、自由区分コードの入力を徹底すること。

2 外国人労働者からの相談対応

外国人労働者、外国人労働者を使用する使用者等からの窓口相談に対しては、「外国人労働者相談コーナー」が設置されている局監督課又は署においては、労災請求等に関する相談も受け付けることとしているので、これを活用すること。「外国人労働者相談コーナー」が未設置の局署にあっては、外国人労働者等の電話相談に対応する「外国人労働者向け相談ダイヤル」を活用し、的確に対応すること。「外国人労働者相談コーナー」及び「外国人労働者向け相談ダイヤル」の対応言語は13言語(※)、局署の閉庁後や休日の電話相談に対応する「労働条件相談ほっとライン」(委託事業:平日17時~22時、土日・祝日9時~21時)の対応言語は14言語(※)としているため、適切に案内を行うこと。
※対応言語:英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、韓国語、タイ語、インドネシア語、カンボジア語、モンゴル語、日本語(14言語対応の事業の場合)

第9 毎月勤労統計等に係る追加給付対応

毎月勤労統計及び賃金構造基本統計調査に係る追加給付事案への対応については、適宜情報提供等行っているが、引き続き公表資料等の各種情報に留意の上、被災労働者、未支給請求の対象遺族等からの電話相談、窓口相談に懇切・丁寧に対応すること。
局署で処理が必要となる追加給付に係る事務処理について、毎月勤労統計に係る対応は平成31年3月15日付け基管発0315第1号・基補発0315第3号・基保発0315第1号「労災保険の追加給付等について」等において、賃金構造基本統計に係る対応は令和2年11月26日付け基保発1126第1号「労災保険給付に係る「令和元年賃金構造基本統計調査」の数値の一部訂正に伴う当面の機械処理について」において、それぞれ指示しているところであるが、今後も必要に応じて通知するので、適切に対応すること。
また、対象者死亡後の未支給請求対応について、令和2年7月31日付け基補発0731第1号「労災保険の追加給付における未支給の保険給付に係る請求権者の特定及び「未支給請求書」の送付業務について」及び令和3年3月18日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡に基づく同事務処理を指示しているが、令和4年度に向け、引き続き未支給対応の請求権者特定業務等を別途通知する予定であるので、適切な対応を行うこと。
なお、令和4年3月より、局署で遡及処理等に伴う追加給付に係る対応が可能となるので、その事務処理については追って通知する予定である。

第10 有期メリット制における第三者行為災害に係る保険給付の取扱いについて

有期メリット制における第三者行為災害に係る保険給付については、令和3年4月30日付け基発0430第2号「有期メリット制における第三者行為災害に係る保険給付の取扱いについて」に基づき、その取扱いが変更されたところ、当該変更に伴う事務処理については、令和3年4月30日付け基管発0430第1号・基徴収発0430第1号・基補発0430第1号「有期メリット制における第三者行為災害に係る保険給付の取扱いに関する運用について」により通知しているので、局徴収主務課室との連携を含め、適切な処理を行うこと。

第11 労災補償業務の実施体制の確保と人材育成、デジタル化の推進

1 業務実施体制の確保

厳しい定員事情や行政経費に係る予算事情など、行政を取り巻く環境が依然として厳しい中、労災補償業務の迅速かつ公正な事務処理を行うためには、局署一体となって実施体制を確保する必要がある。
そのため、本省においては、コールセンターをはじめとする外部委託等を引き続き確実に実施していくこととしているが、局署においては、再任用職員や非常勤職員を有効に配置し、職員と連携して事務処理を進めるよう体制を整えること。
特に、当面の労災補償の業務運営に当たっては、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求や精神障害に係る労災請求の状況に対応する必要があることなどから、各局の行政需要に応じた応援体制を構築するなど、迅速・的確な対応をするための業務実施体制の確保を図ること。

2 人材育成

将来にわたって、労災補償業務の迅速かつ公正な事務処理を実施していくには、職員の人材育成及び資質の向上を図ることが不可欠である。そのため、地方労働行政職員研修計画に基づく基礎研修や専門研修をはじめとした本省研修を受講するとともに、局内研修や再任用職員を活用した研修等により業務に必要な知識を確実に付与すること。特に、経験年数の少ない職員に対しては、OJTなどの研修に加え、その後、研修効果を確認しスキル向上させるためにフォローアップ研修などを積極的に行うこと。
なお、本省においては、局から支援の要望があった場合、要望内容に応じ、非常勤職員を含めた職員の能力向上のための研修の実施や、事務処理の習熟に効果的な資料やノウハウの提供等必要な支援を引き続き行うこととしている。

3 デジタル化の推進

過労死等の複雑困難事案の迅速・的確な処理に資するため、これまでに、「労災認定業務支援ツール」の開発等の検討を行い、平成30年からモデル事業の実施及び試行的運用等を行ってきたところである。現在実施している試行的運用は本年度で終えることとするが、その結果の検証等も踏まえつつ、改めて、業務分析等を適切に行った上で、必要に応じて局署への意見照会等を通じて、更なる機能改善を図ることとしている。
また、AIを活用した労災レセプト審査業務における点検・審査機能の拡充や労災聴取書作成支援システムの構築等、今後とも、最新のデジタル技術の活用等による業務の効率化を図ることとしている。