FDAがタルク中アスベスト検査の厳格化を検討/USA:Asbestos.com, 2022.1.18

アメリカ食品医薬品局(FDA)は最近、タルクを含有する化粧品に含まれる有害なアスベスト繊維の有無に関する検査の、切望されていたより厳格な標準化に向けて一歩近づいた。

1月13日、FDAは、消費者製品に含まれるアスベストに関する機関間ワーキンググループ(IWGACP)によって書かれた124頁の合意文書を発表した。それは、一般消費者をよりよく保護するための検査に関する科学的評価を概述している。

FDAによってえらばれた8つの連邦機関の代表からなるこの機関間ワーキンググループは2018年に活動を開始した。

タルク製品に含まれる微量の危険なアスベスト問題の急成長は、近年のタルクを含有する様々な消費者製品と関連した-悪性中皮腫を含む-がんの増加が原因である。

タルクとアスベストは、2つの自然に生成する鉱物であり、地表付近で近接してみられることも多い。アスベストはもはやアメリカでは採掘されていないが、タルクはいまでもよく使われている貴重な資源である。

過去数年間、子供のおもちゃやクレヨン、メーキャップ製品などから微量のアスベストが発見されている。

より厳しい化粧品規制が間もなく

現行の法律のもとで、化粧品やその材料はFDAによる承認も検査も必要とされていない。

製品を生産している企業は-標準化されたものがないまま-独自の安全検査を行っており、FDAとデータを共有することも求められていない。

このすべてが変わる可能性がある。今回の最新の勧告は、業界内で長年維持されてきた立場を否定し、分析における矛盾を解消しようとするものである。

FDAの勧告に後押しされて、議会立法が間もなく議論されることが予想され、タルクを原料にした製品の今後の生産に影響を与える可能性がある。

「われわれは、タルク含有製品に含まれるアスベストの検査方法として、一部の業界メンバーが採用している方法が、必ずしもアスベストの存在を検出していないことを認識している」、とFDA食品安全・応用栄養センターのスーザン・メイン所長は言う。「それが、機関間ワーキンググループが、利用可能な方法について最新の科学的知見に基づいて検討することになった理由である」。

より包括的なタルク検査を助言

今回の合意は、現在民間企業で行われているものよりも包括的な検査法を提供した。これは、来たるべき事態のサインかもしれない。

勧告には以下が含まれる。

・ すべての試料対して、光顕微鏡(PLM)と透過型電子顕微鏡(TEM)の両方が用いられるべきである。現在、ほとんどの検査現場では、PLMかTEMのどちらかを使っているが、両方は使用していない。

・ 一定の状況では、X線回折(XRD)と操作型電子顕微鏡(SEM)も利用されるべきである。

・ アスベストに類似した粒子、及び相対的に小さい寸法のアスベスト繊維が報告されなければならない。

・ 分析報告とすべての所見の証拠書類が提供されなければならない。

・ 検査機関が資格を取得し、定期的にレビューされていることを確保するための方針と手続が確立されるべきである。

調査結果は検査方法の不一致を強調

この合意文書で得られた知見は、規制変更の可能性を裏付けるために使用されるが、FDAは、ピアレビューや利害関係者からの追加的な意見を含む、ゆっくりとした公開プロセスを進めることを求められるだろう。

FDAはこの3年間、タルク製品について独自の検査を行っており、それは様々な検査方法の矛盾を際立たせている。

2020年の化粧品に関するある調査では、TEM法による検査で、52製品中9製品にアスベスト汚染が確認された。PLM法では、同じ52製品中、わずか2製品でしか微量のアスベストを検出しなかった。
FDAは2019年に、ジョンソンのベビーパウダーの容器から微量のアスベストを検査で発見したと発表し、3万3000本の製品のリコールにつながった。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、同じ試料の検査でアスベストの兆候はみられなかったと主張している。同社は、自らの製品は安全と主張し続けているが、アメリカとカナダではタルクを原料にしたベビーパウダーの販売を中止した。

2021年10月にFDAが実施した化粧品に含まれるタルクについての最新の最大規模検査で、50の様々な製品にアスベスト汚染の兆候がないことが明らかになった。PLMとTEM両方の検査方法が用いられた。

タルクに含まれたアスベストががんを引き起こすという問題は、州裁判所と連邦裁判所でのジョンソン・エンド・ジョンソンに対する2万件を超す訴訟につながり、そのなかには腹膜中皮腫に関するものも含まれている。

https://www.asbestos.com/news/2022/01/18/fda-testing-asbestos-talc/

アメリカでは、タルク中のアスベストの有無の分析に電子顕微鏡を用いることがかなり一般的になっているものの、標準化された手法が確立されていないために、このような議論が行われている。日本では、電子顕微鏡の使用を当局が要求するどころか勧めてもおらず、一般的になっているとも言い難い状況が続いている.

本サイト上の「アスベスト混入ベビーパウダー・タルク問題」情報