型枠が壊れた時に作業中止していれば・・ 2022年1月18日 韓国の労災・安全衛生

サムソン物産の建設部門

1:29:300の法則。重大災害が1回起きる前に同じ原因で29回の小さな事故があり、300回の兆候があるというハインリッヒの法則だ。11日に発生した光州の現代産業開発アイパークマンションの崩壊事故もそうだった。今回崩れた201棟の崩壊の1ヵ月前、203棟でコンクリートの打設中にスラブが崩れる事故があった。また「事故の前に型枠がコンクリートの重さに耐えられず壊れた」という証言も出ている。

  もし、型枠が壊れてスラブが見えない時に、労働者が「作業中止」を叫び、現場の管理監督者が安全に必要な措置を確認していたらどうだっただろうか。

  2020年に施行された産業安全保健法の全面改正は、労働者の作業中止権を明文化した。改正前も、労災発生の急迫した危険がある場合は、労働者は作業を中止し、避難した後に、上級者に報告するようになっていたが、事業主が避難した労働者に不利益な処遇をしても制裁規定がなく、有名無実の条項だった。改正法は、別途の条文で、労働者の作業中止と緊急待避を明示し、これによる不利益処遇の禁止を明文化した。しかし、今でも有名無実なことは同じだ。

  「重大災害処罰等に関する法律」(重大災害処罰法)が施行されれば、変わる可能性もある。施行令の4条8項は、事業(場)に重大災害が発生する緊急な危険がある場合に備えて、作業中止や労働者の待避、危険要因の除去などの対応措置に関するマニュアルを作成し、一回以上点検するように義務付けた。

  労働者の作業中止権は法的に保障されているが、賃金損失や不利益待遇などの懸念のため、現場で差し迫った状況に置かれている労働者が「作業中止」を叫ぶのは、現実的に難しい。各企業が労働者の作業中止権をマニュアルにして、実際のように訓練して点検すれば、活性化する契機になる。

  「労働者の作業中止権の全面保障」を宣言する企業が増えていることも注目される。サムソン物産は、昨年3月に労働者の作業中止権を保障して以来、月平均360件の作業中止権が発動され、このうち98%ほどで安全保健措置が取られていると発表した。サムソン物産は急迫した危険でなくても、労働者が安全でない状況だと判断すれば、作業中止権を積極的に使えるように保障している。ポスコと釜山エコデルタ・シティ事業団でも、昨年、「作業中止権の積極的保障」の方針を打ち出し、こうした流れに加わった。

  しかし、多くの労働者にとっては、作業中止権の行使は依然として容易ではないのが現状だ。「差し迫った危険」が曖昧で、不利益な懲戒をされたり、訴訟に巻き込まれる可能性があるからだ。実際にソウル市議会が「労働者の作業中止権ガイドライン」を推進して失敗に終わったが、その理由は労使間の訴訟に拡がる可能性があるからだ。また、使用者が作業中止期間に賃金を支給しないという問題も提起された。専門家は「労働者の作業中止に伴う工事中断の損失を元請けや発注者が保障し、作業中止時に発生する休業手当の支給など、制度的な後押しが必要だ」と強調する。また「労働者が作業中に危険な状況が予想される場合、気軽に作業中止を要求できるように保障する文化の拡大が必要だ」と助言する。

  ソン・イクチャン弁護士は「重大災害処罰法施行令で、作業中止マニュアル作りと点検を義務付けている以上、企業は労働者の実質的な作業中止権を保障するための措置を実施すべきだ」とし、「雇用労働部も作業中止権が活性化するように、関連マニュアルを普及し、行政的な支援を惜しんではならない」と注文した。

2022年1月18日 毎日労働ニュース キム・ミヨン記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=207000