大型施工会社を見逃がす『尻尾切り』処罰が『第二の惨事』を招いた 2022年1月12日 韓国の労災・安全衛生

光州の現代アイパークのマンションが倒壊してから2日目の12日、内部と外部の構造物が崩壊している。11日にこのマンションの28~34階が崩壊し、作業員6人が行方不明になった。/ハン・スビン記者

光州市のマンションの外壁崩壊事故の施工会社のHDC現代産業開発が、昨年市民9人が死亡した光州の撤去建物崩壊事故の施工も請け負っていたことが分かり、大手施工会社が災害の責任を免れる制度が今度の事故に繋がったのではないか、という批判が出ている。今回の事故で被害に遭った労働者は、すべて下請け会社の所属だ。今月27日の「重大災害処罰法」の施行を前に、企業は困難を訴えているが、依然として工期の短縮や費用削減が安全よりも強調される現場の雰囲気が、次々と事故を起こしていると指摘されている。

京郷新聞の取材の結果、現代産業開発が元請けの事業場で、2016~2020年の5年間に16人の労働者が死亡または負傷したことが明らかになった。2019年、坡州市のマンション建設工事現場だけで1人が死亡し、10人が負傷した。落下防止ネットの解体作業中に18mの高さから墜落して死亡した事例、防水作業中に断熱材の山が崩れ落ちて死亡した事例などだ。17年は、巨済市のアイパーク新築工事で1人が死亡し、1人が負傷した。現代産業開発は、雇用労働部が毎年発表する「重大災害発生事業場」にも数回名を連ねている。

昨年6月、光州の再開発区域の撤去作業中に建物が崩壊した事故の施工会社でもある。この事故調査の過程で、現代産業開発が他の業者に請け負わせ、この業者は他の業者に再下請させる多段階下請構造が確認された。この事故では現代産業開発の現場所長と安全部長らが起訴されるに止まり、経営責任者などは起訴されなかった。拘束されたのは大半が下請け会社の関係者だった。大手施工会社が指示と管理・監督を行っているにも拘わらず、現場の作業者と下請会社を中心に責任が問われたのだ。

江原大学のチョン・ヒョンベ教授は「産業安全保健法の改正と重大災害法の制定によって、処罰の水準は厳しくなったが、利潤を出す公式は変わっていない」、「法を守るためには、利益をある程度放棄して新しい作業方式を導入しなければならないが、現場は依然として以前の作業方式を使っているために事故が発生するしかなく、法が強化されても、現場では同じ事故が発生する」と話した。チョン教授は「事故が発生した場合、下請業者に処罰が集中したのは、産安法自体が、個別的かつ具体的な安全保健規定を守っていたかを判断するため」とし、「建設現場のように、請負・下請が多い業種では、基本的にそうした規定を守る主体が元請ではなく下請で、元請は追加的に責任を負う構造だった」と指摘した。

このため、元請けの責任を強化する重大災害法が作られた。この法は,元請が第三者に請負・委託等をした場合、重大災害が発生しないように措置しなければならないと規定する。但し、この場合でも、元請が下請の施設・装備・場所について、実質的に支配・運営・管理する責任がある場合に限定している。

しかし、法が適用され、実際の元請事業主や経営責任者に責任を問うことができるかどうかは、27日の法施行後の状況を見守らなければならない。企業側は、経営責任者などの安全保健確保の義務や、事故との因果関係が明確に立証されるべきだと主張しているからだ。例えば、重大災害法施行令は、災害予防に必要な安全保健管理体系の構築・履行措置として9つの事項を規定するが、このうち一部だけを守らなかった場合、元請企業側は事故との因果関係を否定し、責任がないと主張するものと想われる。発注先を巡る責任規定は、重大災害法からは除外されている。忠北大安全工学科のウォン・ジョンフン教授は「事故原因とされるコンクリートの養生(打設後にコンクリートが十分固まるように保護する作業)は品質の問題だが、今は品質と労働者安全の問題を切り離すことはできない」とし、「品質管理計画は元請の施工会社が樹立することになっており、仕様書に養生の過程を具体的に記載することになっているため、施工会社が責任を免れるのは難しそうだ」と話した。

労働界では、「無理な工事期間の短縮、手抜き工事、管理監督の手抜きがもたらした、予期された惨事だ」と批判した。民主労総・建設労組は「責任を取るべき人が責任を負わずに軽い処罰に止まり、建設現場の労災の悪循環は繰り返されている」とし、建設安全特別法の制定を要求した。建設工事は事業主と労働者という単純な構造ではなく、発注、設計、施工、監理などで、各過程ごとに主体が分離しており、このような特性を反映した安全関連法令を作るべきだということだ。民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は、「これまで様々な主体が建設現場の事故責任をお互いに押し付け合ってきたが、総合的な安全管理と責任の主体を明確にする必要性がある」とし、「建設安全特別法によって、発注者を含めた建設工事での全過程で、安全を考慮した責任を明確にしなければ、工事期間や費用問題を抜本的に解消でない」と話した。労働健康連帯のイ・サンユン代表も「施工会社はもちろん、発注先にも責任を明確に問うべきだ」とし、「多段階下請けという建設業の構造の下で、重大災害法が効果を発揮できるかという点で対策を論議すべきだ」と話した。

2022年1月12日 京郷新聞 イ・ヘリ、ユン・ソンヒ記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202201121724001