本社の指示で海外派遣中の死亡は「労災保険法を適用すべし」 2022年1月11日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

海外に派遣されたとしても、本社の指揮で勤務していて急性心筋梗塞で死亡したとすれば、業務上の災害に当たるという判決が出た。海外派遣の労働者が実質的に国内労働者と勤務形態が同じ場合、「産業災害補償保険法」(労災保険法)の適用を受けるという趣旨だ。

ソウル行政裁判所は10日、海外派遣労働者Aさんの妻が勤労福祉公団を相手に提起した遺族給付および葬祭料の不支給処分取消訴訟で、原告勝訴の判決を行ったことを明らかにした。遺族が訴訟を起こして4ヵ月目のことだ。公団は今月7日に控訴した。

Aさんは塗装工事会社B社の国内工事現場で正社員として働き、アラブ首長国連邦(UAE)原子力発電所のアブダビ支社から推薦を受け、2015年5月頃からUAEで働いた。アブダビ支社で班長として勤務し、人員配置・作業指示・工事現場点検と整理などの業務を担当した。

2020年5月頃、勤務中に痛みを訴え、ステント心臓動脈整形術を受けたが、9日後に亡くなった。Aさんの妻は公団に遺族給与と葬儀費を支給してほしいと要請したが、公団は「急性心筋梗塞は業務上の疾病と認められるが、故人が別途の保険に加入せずに海外派遣中に死亡したため、労災保険法の適用対象ではない」と拒否した。Aさんの妻は昨年7月に訴訟を起こした。

争点はAさんが海外で本社の指揮・監督を受けたかどうかだった。会社の指示で国外事業に労働者を派遣した場合、当該職員は労災保険法の適用を受けられるからだ。会社がAさんと締結した海外事業部勤労契約には「業務上の災害発生時には労災保険と勤労保険で補償する」となっている。

また労災保険法122条1項は「保険加入者が、大韓民国国外の地域で行う事業に勤労させるために派遣する者に対して、公団に保険加入申請をして承認を受ければ、海外派遣者を加入者の大韓民国領域内の事業に使う労働者と看做すことができる」という海外派遣者に対する特例を明示している。

裁判所は「Aさんの勤労場所が国外であるだけで、実質的に本社に所属し、その指揮によって勤務し、労災保険法が適用される」とし、Aさんの妻の手を挙げた。裁判部は、AさんはUAEの工事のためだけに採用されたのではなく、勤務部署も本社の状況次第で変更される可能性があると判断した。特に、会社の専務から指示を受けて業務を遂行し、本社から給与を受けるなど、海外派遣者と把握していなかったと判断した。

本社がAさんの所得税を源泉徴収した部分も根拠に挙げた。会社が発給した源泉徴収領収証には「A氏は派遣労働者に当たらない」と書かれていた。Aさんを含むアブダビ支社の職員の昇進や休暇などの人事についても、本社が決めて施行していた。宿舎と航空費用も本社が支給した。これらを基に裁判部は「Aさんは本社に所属する職員」で、派遣勤労ではないと判示した。

Aさんの遺族を代理したキム・ヨンジュン弁護士は「海外派遣勤労者の労災に対する保護が必要だという社会的合意によって、故人は勤務場所が海外であっただけで、実質的に本社に帰属し、国内勤労者と同じ地位にあったという点が認められた事件」で、「会社が職員を派遣して死亡者を指揮・監督していた点、故人が約9年間、この会社の国内の工事現場に勤務し、海外工事の終了によって勤労関係が終了するとは判断しにくい、という点などが反映された」と説明した。

2022年1月11日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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